翔子似
「私は…どうすれば良いですか?」
どうすれば想いを失わずに済むのかを尋ねてみると。
御堂さんは優しく微笑んでくれました。
「栗原さんと一緒に僕と来てくれると嬉しいかな。成美ちゃんを一人には出来ないからね。だから僕と一緒に行かないかい?」
何もできない私を誘ってくれたんです。
そのことが凄く嬉しく思えました。
「私には何も出来ませんけれど…それでも良いんですか?」
「ああ、良いんだよ。成美ちゃんは無理をしなくて良いんだ。僕がきみを守る。僕が成美ちゃんの全てを守るからね。きみが望む限り、僕がきみを守り続ける。」
席を立った御堂さんは、
私に歩み寄ってくれました。
「僕は沙織を守れなかった。だけどね。今度は間違えない。僕が成美ちゃんを守り抜く。」
私を守ると言ってからそっと手を差し延べてくれたんです。
「本当なら成美ちゃんを戦争になんて巻き込みたくないし、出来ることならこの町で平和に過ごしてほしいと思ってる。だけど成美ちゃんに力が在る限り、戦争からは逃れられそうにないんだ。だからね。僕が成美ちゃんを守るよ。」
私のことを考えて、
私のために協力してくれるそうです。
「僕は戦争に行かなければいけない。みんなの想いを受け継いで共和国を守らなければいけないんだ。だから…だから一緒に行こう。成美ちゃんには僕の傍にいてほしい。僕の手の届くところにいてほしいんだ。」
「あ…ありがとう、ございます。」
微笑んでくれた御堂さんの笑顔を見た私は、
差し出された御堂さんの手をぎゅっと握り返しました。
「でも…本当に良いんですか?」
私はきっと足手まといだと思います。
戦力どころか邪魔になるだけだと思います。
それなのに。
「良いんだよ。」
御堂さんは私を受け入れてくれました。
「成美ちゃんの未来を守れるのなら、僕はどれだけ傷付いても構わない。成美ちゃんの幸せを守り抜くことが、沙織に出来るたった一つの恩返しだと思っているからね。」
亡くなってしまったお姉ちゃんのために。
私を守ってくれるそうです。
「一緒に来てくれるかい?」
…ぁ、ぁぅ~。
私の手を引く御堂さんに抱きしめられてしまいました。
「沙織が守りたかったモノが僕の守るべきモノなんだ。だから僕は成美ちゃんを守り抜くことを約束する。」
恥ずかしさで顔を赤く染めてしまう私に、
御堂さんが優しく語りかけてくれました。
「僕を信じてほしい。」
…あぅぅぅ。
御堂さん抱きしめられながら、
ゆっくりと小さく頷きました。
「…信じます。御堂さんはお姉ちゃんが愛した人ですから。」
お姉ちゃんの代わりに、
御堂さんを信じたいと思います。
「信じています。お姉ちゃんの分まで…。」
「…ははっ。ありがとう。」
私の頭を撫でてから、
御堂さんは私を放してくれました。
「ごめんね、驚かせたね。」
恥ずかしそうに微笑む御堂さんがとても可愛く思えます。
…でも。
私の隣に座っている栗原さんは面白そうに私達を見ていました。
「熱々ね~。羨ましいわ~。」
…あぅ~。
…ぅぅ~。
栗原さんの言葉で真っ赤になる私を見て、
栗原さんはさらに楽しそうに微笑んでいます。
「熱い♪熱い♪」
「「………。」」
楽しそうな薫さんを見て言葉を失う私と御堂さん。
こうなるともう何を言っても無駄な気がして。
ひたすら恥ずかしくて。
俯いてしまった私を、
今度は薫さんが抱きしめてくれました。
「はぅぅ…。」
「成美ちゃん、可愛い~!」
恥ずかしさに戸惑う私を抱きしめる栗原さんは凄く楽しそうです。
「良い子ね~。」
「ぁぅぅ~。」
戸惑うだけの私を力一杯抱きしめて放してくれません。
これはこれでちょっぴり恥ずかしいんですけど。
だけど栗原さんに抱きしめられていると。
なんとなく翔子さんのことを思い出せて、
懐かしい気持ちを感じてしまいました。
「栗原さんの身体…温かいです。」
「そう?」
呟く私の頭を優しく撫でてくれました。
「いい子♪いい子♪」
「あう~。でもちょっぴり恥ずかしいです…。」
「気にしない、気にしない。」
私の言葉を軽く流して抱きしめ続ける栗原さんの行動は、
なんとなく翔子さんに似ているような気がします。
「満足♪満足♪」
しばらくして満足したのか、
ようやく放してくれました。
「まあまあ、じゃれるのはここまでにして、とりあえず今後の相談を…。」
話し合いを再開しようとしたその途中で。
『ブォォォォォーーーーーン!!!』
『ブォォォォォーーーーーン!!!』
『ブォォォォォーーーーーン!!!』
突然、大きな音が鳴り響きました。
「何の音っ!?」
「…何でしょうか?」
戸惑ってしまう栗原さんと私でしたけれど。
「ああ、慌てなくていいよ。」
御堂さんは冷静に教えてくれました。
「集合の合図だよ。そろそろ港に向かおうか。」
「それは良いけど、私はどうすれば良いの?」
「まずは出港の準備かな。それから港に集合だね。」
「おっけ~!それじゃあ、私は荷物を取りに行ってから向かうわ。」
真っ先に部屋を飛び出そうとする栗原さんでしたけれど。
その前に御堂さんが声をかけていました。
「校門で合流しよう!」
「ええ、分かったわ!」
返事をした栗原さんは大急ぎで部屋を出て行ってしまいました。
そして部屋の中は私と御堂さんだけになってしまったんです。
「僕達も行こう。多分、成美ちゃんのご両親はまだ学園内にいるはずだからね。」
…はぅぅ。
そう言えば、お父さんとお母さんも学園にいるはずです。
…はぐれちゃったけど、大丈夫かな?
すごく心配になってしまったのですが、
御堂さんは落ち着いた雰囲気で微笑んでくれました。
「大丈夫。すぐに会えるよ。」
「あ…はいっ♪」
御堂さんの優しさを感じつつ。
ひとまず校舎の外に向かうことになりました。




