想像力の欠如
《サイド:常磐成美》
「適当に座って良いよ。」
「ぁ…はい。」
「は~い。」
声をかけながら席につく御堂さんに歩み寄って、
私と栗原さんも椅子に座りました。
…だけど。
私と栗原さんと御堂さんの3人だけで集まるお部屋はとても静かで、
何故か寂しい感じがしてしまいます。
どうしてそんなふうに思ってしまったのかは分かりませんけれど。
…だけど、多分きっと。
ここにはお姉ちゃんと翔子さんの想い出が残っているからなのかもしれません。
…この場所で。
お姉ちゃん達も学園生活を過ごしていたのかな?
どれが誰の物なのかは私には分かりませんけれど。
それでもここにある物が、
お姉ちゃんと翔子さんが遺したモノだということだけは分かるんです。
…二人とも、ここにいたんだよね?
お姉ちゃんも翔子さんもここにいたはずなんです。
…もしも、私も目が見えていたら。
お姉ちゃん達と同じように学園に通っていたのかな?
今となっては夢物語でしかありませんけれど。
一応、私にも魔力はあるそうです。
だから学園に入る資格はあるみたいです。
…ですが。
ずっと家に引きこもっていたので、
魔術のことは何も知りません。
お姉ちゃんも翔子さんも何度か教えてくれようとはしていましたけれど。
目が見えない私には想像力が足りなかったみたいです。
教えてもらった言葉の意味が理解できなくて、
魔術という特別な力を形にすることができませんでした。
だから今まで魔術というものを使ったことがなかったんですけど。
ここに来てから2回ほど魔術を使うことが出来ていたので、
その気になれば今後は学園に通うことが出来るのかもしれません。
ただ…その為には来年の春まで待たなければいけないと思いますけど。
…だとすると?
ここに来ることはもうないのかもしれません。
私が入学する時までお姉ちゃん達の荷物が残されているとは思えませんし。
私の目もずっと見えたままなのかどうかも分からないからです。
…だから、でしょうか?
ここにあるモノを眺めながら。
ここにある想い出を想像すると。
何故かとても切ない気持ちになってしまいました。
…お姉ちゃん。
…翔子さん。
二人がここでどんな日々を過ごしていたのかなんて私には分かりません。
学園生活での楽しい思い出話は沢山聞いていますけど。
それでも『どこ』で『どんなこと』をしていたのかまでは分からないんです。
…それでも。
学園の中を幾つか移動して分かったこともあります。
きっとそれぞれの場所にお姉ちゃん達は立ち寄っていて、
沢山の思い出を積み重ねていたということです。
それはもちろんこの部屋もそうですし。
校舎の廊下。
医務室や食堂。
学園の庭園もそうです。
色々な場所を歩いて。
色々なモノを目にして。
色々なことを考えながら。
学園生活を過ごしていたんだと思います。
それは目が見えなかった私には決して叶わない夢のような日々です。
だけど今はお姉ちゃんと翔子さんのおかげで目が見えるようになったので、
同じ景色を見ることが出来ています。
二人の想いが込められたこの瞳がある限り。
私も同じ世界を見ることが出来るはずなんです。
…だから。
だからせめてこの幸せだけは大切にしたいと思っています。
二人が届けてくれた想いだけはずっと。
ずっと大切に。
いつまでも。
いつまでも。
大切にしたいと思うんです。




