誰にも譲れない
《サイド:御堂龍馬》
校舎の階段を登り続けて学園の屋上に着いた。
何気なく上空を見上げてみると、
夕日も見えない曇り空が広がっている。
学園を包み込む結界の外は、
まだまだ激しい大雨が降り続けているようだ。
いつ見ても不思議な光景だけどね。
学園の敷地内には一滴の雨も降っていない。
透明の屋根に守られているような感じで、
全ての雨が学園の外に向かって流れているんだ。
その結果として学園の周囲は滝のような勢いになってしまっているんだけど。
水路が完備されているから洪水になる心配はないらしい。
…そもそも海の側の町だからね。
水害対策は万全なんだと思う。
…それはまあ、良いんだけど。
時間的にはまだ5時30分頃かな。
暗くて重苦しい雲のせいか、
いつもより夜が早く感じてしまうね。
…だとすると、ちょっと時間が足りないかな?
海軍の船に乗ってセルビナに出向する予定を考えると、
あまりのんびりとはしていられないような気がする。
…だけど今は。
出航の前にどうしても成美ちゃんに尋ねなければいけない話があるんだ。
瞳の力と秘宝の存在。
それらをどうするのかを確認しなければいけない。
…難しい選択だとは思うけどね。
今のまま大切な人の想いを受け継いで命を奪い合う戦場に立つのか?
それとも大切な人の想いを捨てて平穏な生活を求めるのか?
成美ちゃんの意思を確認しなければいけないんだ。
そしてもしも成美ちゃんが戦うことを望むのなら。
僕は成美ちゃんを全力で守り抜こうと思ってる。
…だけどね。
もしも平穏を願うのなら。
力を捨てることを願うのなら。
僕が成美ちゃんの力を破壊しようとも思っている。
解呪系魔術のディスペルは使えないけどね。
それでもこの役目だけは誰にも譲りたくない。
総魔が残してくれた大切な想いだからね。
沙織と翔子の想いを断ち切る必要があるのなら、
その役目は僕がこの手で行いたいと思っているんだ。
他の誰にも任せられない。
みんなの想いを消し去る役目だけは誰にも譲れない。
だからもしもその時が訪れるのなら。
もしもそうしなければいけない時が来るのなら。
僕が全てを終わらせようと思ってる。
…僕自身の手で全てを消し去るんだ。
そういう可能性も考慮しながら屋上の一画に二人を案内する。
成美ちゃんと栗原さんの二人を特風会の裏手にある休憩室へと案内することにしたんだ。
…何だか懐かしいね。
ここは僕と真哉と沙織と翔子だけが入ることが許可されている部屋になる。
例外的に理事長は堂々と入ってくるけれど。
基本的には僕達の許可がない限りは誰も来ない場所だ。
…今となっては僕しかいないけどね。
「さあ、中に入って。」
扉を開けて二人を中へと誘導する。
「広いお部屋ですね〜。」
「専用の個室なんて…羨ましいわね〜。」
…ははっ。
そうかも知れないね。
初めて訪れる部屋を興味深そうに眺める二人に微笑みを向けながら、
僕も休憩室に入ることにしたんだ。




