3人で屋上へ
《サイド:御堂龍馬》
…ちょっと遅くなったかな?
米倉さんとの話を終えてから、
再び医務室の前まで戻ってきたんだけどね。
食堂の火事や負傷者の搬入が原因かな。
医務室の周囲はさっきよりも人が増えていて、
順番待ちの列が出来ていたんだ。
…廊下でこの状況なら、医務室の中はもっと大変だろうね。
「まだ中にいるのかな?」
…と言うか、いないと困るんだけど。
少し不安を感じながらも医務室の扉を開けてみる。
…やっぱりそうだよね。
室内はさっき出て行った時よりも遥かに忙しそうに見えたんだ。
次々と運び込まれて来る生徒達の治療を行う為に、
かなり慌ただしい騒ぎになっている。
…こうなるともう。
ここも戦場と言えるだろうね。
医師や救急班達の仕事は、
まだまだ終わりそうになかった。
…ちょっと入りづらいかな?
入るだけで怒られるということはないにしても、
邪魔だと思われるのは避けられないかも…なんて思いながら中に入るのを躊躇していたら、
見覚えのある人の後ろ姿が見えたんだ。
…ん?
…あれ?
神崎さんがいるようだ。
負傷者の治療をしながら、
周囲への指示もこなしている。
…神崎さんがいるだけで安心感が違うね。
沙織が師事していただけあって、
医師としての実力は群を抜いているように見えるんだ。
素人の僕が見てもそう思うんだから、
専門の人達から見れば神様のような存在なのかもしれない。
…だとしたら、ここはもう安心かな?
研究所の人達の活躍を見て安堵の息を吐く。
神崎さん達がいるのなら、
人数的にも実力的にも手が足りないということはないはずだからね。
…邪魔にならないように通り過ぎよう。
怪我人の治療が順調に進んでいく様子を眺めながら医務室の奥へと歩みを進めてみる。
その途中で僕の姿に気付いてくれた里沙と百花が微笑んでくれていた。
だけど二人とも忙しそうに見えるからね。
無理に話しかけようとは思わない。
微笑みだけ返して、
二人から離れることにしたんだ。
そうして一番奥のベッドに視線を向けてみると。
仲良く二人で並んで座る成美ちゃんと栗原さんの姿が確認できた。
…ふう。
…いてくれて良かった。
改めて二人の無事な姿を見て思う。
総魔が遺した希望を受け継ぐ二人。
彼女達を守ることが僕の役目だ。
そしてそれが今の僕の願いでもある。
まだ少し距離はあるけれど。
歩みを進める僕に気付いてくれたようで、
二人も小さく手を振ってくれていた。
…どうやら元気そうだね。
笑顔で出迎えてくれる成美ちゃんと栗原さんに歩み寄る。
「ただいま。遅くなってごめんね。」
「大丈夫よ。それほど待たされたわけじゃないしね〜。」
「私も気にしてません♪」
二人共、笑顔で『お帰りなさい』と言ってくれたんだ。
その笑顔を見れただけで戻ってきてよかったと思えてしまう。
「ありがとう。」
ひとまずお礼を言ってから、
二人に話しかけることにした。
「色々と話したいことがあるんだけど、良いかな?」
「ええ、良いわよ。」
「私も大丈夫です♪」
二人とも特に問題はないようだね。
「それじゃあ、場所を変えよう。ここだと人が多すぎるからね。」
出来ることなら3人だけで話が出来る場所がいい。
「僕について来てくれるかな?ゆっくりと話を出来る場所に案内するよ。」
「おっけ~!」
「はい♪」
歩き出す僕を追って、二人が立ち上がる。
そうして僕達は3人揃って出口を目指して、
そのまま医務室を出ることにした。
もちろん各地で頑張ってくれているみんなにお礼を言ってからだけどね。
通りすがりに挨拶をしながら医務室を出た。
あとは場所を移動するだけだ。
これから向かう場所はすでに決めてある。
僕にとって思い出の地であり、
大切な仲間達と共に日々を過ごしてきた場所。
校舎の屋上に向かって歩みを進めていく。
成美ちゃんと栗原さんを引き連れて、
いつもの場所に向かうことにしたんだ。
目指す場所は思い出の部屋。
『特風の休憩室』だ。




