救えない患者
「その制服はマールグリナだな?何故、マールグリナの生徒がここにいるんだ?」
…えっと〜。
急に尋ねられたことでね。
緊張を感じてしまって、
反射的に頭を下げてしまったのよ。
「すみません。友達に会いに来たんです。」
本当は謝る必要なんてないんだけどね。
これでも一応、学園長の許可を貰ってるし、
無断でジェノスにいるわけじゃないから堂々としていればいいんだけど。
それでも謝罪してから理由を答えたの。
そのあとで自分の名前を伝えることにしたのよ。
「私は栗原薫と言います。神崎さんの噂は…色々と聞いてます。」
マールグリナでの噂もそうだけど。
沙織から聞いている話もあるのよ。
「おお!きみが栗原薫か!」
何故か神崎さんは楽しそうに笑顔を見せてくれたわ。
「俺もきみの噂は聞いている。優秀な後輩がいると俺も鼻が高いからな。これからも頑張ってくれ。」
「い、いえ…。神崎さんにくらべれば私なんてまだまだ…」
「ははははっ!それこそ俺なんてまだまだだ。出来ないことは出来ないし、救えない患者など星の数ほどいるからな。」
…う~ん。
…それはそれでどうなの?
神崎さんが言いたいことは、
もちろん私だって理解できるけれど。
あんまり大声で言っちゃって良い言葉じゃないわよね?
…でもまあ。
魔術も万能じゃないから、
出来ないことは出来ないっていう考えは否定できないわ。
「お互いに頑張ろう!」
「あ、はい。努力します。」
嫌味でも何でもない前向きな発言には好感が持てるのよ。
「ありがとうございます。」
神崎さんに一礼してから改めて歩き出す。
そしてまっすぐに成美ちゃんのベッドに戻ったのよ。
その間にね。
成美ちゃんも私を見つめてくれていたわ。
喪服の成美ちゃんと他の学園の制服を着る私は結構浮いてる感じがあるわね。
だけどまあ、医務室の隅っこで大人しくしてるぶんには誰にも迷惑がかからないし。
今は下手に動き回れるような余裕がある状況でもないしね。
…とりあえずは御堂君が戻って来るまで待てば良いのかな?
私だけならここにとどまる必要はないけれど。
成美ちゃんがいるから勝手な行動は出来ないし。
…もう少し様子を見ようかな?
そう判断して成美ちゃんにお水を差し出すことにしたのよ。




