取引
「あ、あの…っ!その暗黒迷宮に挑戦したんですけど、最初の扉さえも突破出来なくて…。だから何か方法がないかな?って思って、ここに勉強に来たんですけど…。」
「…ふぅ〜〜~ん。」
あわてふためく私の姿さえも、
美咲さんは楽しそうに眺めているわ。
「暗黒迷宮に挑戦ね~?」
「…えっと、私には無理ですか?」
「いいえ。不可能ではないと思うわ。」
尋ねてみるとね。
意外にちゃんと答えてくれたのよ。
「乃絵瑠ちゃんなら攻略できる可能性はあるでしょうね。」
「ほ、本当ですかっ!?」
「ええ、方法はあるわ。」
「どうすればいいんですか!?」
製作者の意見が聞けたことで、
希望を感じてしまったんだけど。
「そうね~。もしも乃絵瑠ちゃんが私のお願いを聞いてくれるのなら、特別に教えてあげても良いわよ?」
…は?
…お願い?
美咲さんの言葉からは何故か不吉な予感を感じてしまうのよ。
「それって…取引ですか?」
「ええ、そうね。そうなるわね〜。」
「…な、何を?」
「そうね~?」
声を震わせながらも問い掛けてみたことで、
美咲さんは条件を言葉にしようとしてた。
「とりあえず、乃絵瑠ちゃんを一晩…」
「い、嫌ですっ!!!」
美咲さんが言い終える前に全力で拒絶しておく。
そんな私の行動が不満だったのか、
美咲さんは首をかしげているわ。
「まだ言ってないわよ?」
困ったように微笑む仕種はとても可憐で、
世の男子達が見たら一目で惚れ込むんじゃないかな?って思うくらいには素敵だと思うんだけど。
今の私にとっては純粋な恐怖でしかないのよ!
「何も聞きたくありませんっ!!」
「あらあら。つれない子ね~?それじゃあ、仕方がないから…」
必死で抵抗してみたことで妥協案を提示してくれるみたい。
「妥協して、乃絵瑠ちゃんを1時間だけ私の自由に…」
「却下です!!却下!却下!!却下っ!!!どうしてそうなるんですかっ!!」
「どうしてって、私がそうしたいからよ?」
…ぬあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
必死の思いで抵抗する私に、
美咲さんは当然のように答えてしまったわ。
心臓が凍りつくかと思うほどの絶望的な悪寒が全身を駆け巡ってく。
今の私の体温は平常時に比べて3度は低いんじゃないかな?
それくらい背筋が冷たく感じるのよ。
「絶対に嫌ですっ!!もっと普通の条件にしてくださいっ!!」
全力で叫んで否定してみたけれど。
美咲さんの言葉通り、
この部屋の防音効果は非常に高いようね。
これだけ叫んでも一切騒ぎになる様子はなかったわ。
…まあ、これはこれで怖いんだけどね。




