鍵と防音
「それじゃあ、中に入って。」
「あ、はい。」
美咲さんに勧められるまま室内に歩みを進めてみる。
特に何かあるわけじゃない質素な部屋には、
ちょっとした机と椅子くらいしか目立つものがなかったわ。
…ここって何の部屋なのかな?
用途がよくわからないけれど。
本当に殺風景な部屋なのよ。
それでも部屋に私が入ってみると。
続けて美咲さんも部屋に入ってきて、
何故か扉に鍵をかけていたわ。
『カチン』と、小さな音を立てて扉が閉められてしまったのよ。
…ん?
…どうして鍵を?
わざわざ鍵をかける意味が分からないんだけど。
密室の中で二人きりになってからすぐに、
美咲さんは椅子に腰掛けていたわ。
「さて、と。ここなら誰にも聞かれる心配はないわよ。防音効果だけは無駄に高いから、泣いても叫んでも誰にも気付かれないわよ。」
…は?
…防音?
…どういうこと?
言われてる言葉の意味も分からないんだけど。
何故か身の危険を感じてしまう発言に聞こえたわ。
…どういう意味なの?
…ってぇぇぇぇぇぇぇ!?
…まさか!
…嘘でしょっ!?
…もしかして、美咲さんって!?
そんなことは絶対にないと思うけれど。
さっきの発言には異様な恐怖を感じてしまったわ。
…ち、違うわよね?
…き、気のせいよね?
そうだと信じたいの。
だけど、あずさの例もあるし。
有り得ないとは言い切れないのよね。
…女同士なんて、私にそんな趣味はないわよ?
「ふふっ」
全力で否定したい可能性を考える私の顔を眺めてる美咲さんは、
楽しそうに微笑みを浮かべてる。
「いつ見ても乃絵瑠ちゃんは可愛いわね♪」
…ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?
全身を駆け抜ける悪寒が止まらない。
尋常じゃないほどの恐怖が私の心を支配していくのよ。
…ち、違うわよねっ!?
絶望的な不安を感じる私に美咲さんが告げてくる。
「ゆっくりと話を聞いてあげるわね。乃・絵・瑠・ちゃん♪」
…うあああああああああああっ!?
とても優しく。
とても妖しく。
とても嬉しそうに微笑んでいるの。
その笑顔は今まで見てきた中で最大の恐怖を感じさせたわ。




