ずぶ濡れ
《サイド:文塚乃絵瑠》
………。
………。
学園を離れてから雨の降り注ぐ町を歩き続ける。
そうして30分ほど歩いたことで、
ようやく魔術師ギルドにたどり着いたわ。
…はあ。
ずぶ濡れの制服が重いわね。
髪や体から滴り落ちる雨の雫も格好悪いわ。
…って言うか。
…このままだと風邪をひくかも?
そんな不安を感じてしまったけれど。
ひとまず扉を開いてギルドの中に入ってみると。
「ちょ…ちょっと!?大丈夫なのっ?」
受付にいた女性がずぶ濡れの私を見て慌てて駆け寄ってきてくれたのよ。
「ずぶ濡れじゃない!?傘は持ってなかったの?このままだと風邪をひくから、こっちに来なさい!」
有無を言わさずに私の手を引いて、
部外者立ち入り禁止っぽい更衣室に案内してくれたのよ。
「私の服を貸してあげるから、すぐに着替えなさい。」
「す…すみません。ありがとうございます。」
「ふふっ。良いのよ。」
綺麗に折り畳まれた服と柔らかなタオルを差し出して私に微笑んでくれたの。
…すっごく良い人~。
なんて思った直後にね。
「何があったのかは知らないけれど、あとで話を聞いてあげるわね。文塚乃絵瑠ちゃん。」
何故か名前を呼ばれてしまったのよ。
…どうして私の名前を知ってるの?
見覚えのない女性に名前を呼ばれて戸惑ってしまったんだけど。
「受付で待ってるから、着替えがすんだら来てくれる?」
理由は教えてくれなかったわ。
「えっと~…はい。」
「ふふっ」
首を傾げて戸惑う私を見て、
何故か微笑み続けてる。
…もしかしてどこかで会ったことがあるのかな?
考えてみたけど。
何も思い浮かばないのよね~。
…誰なの?
何度考えても思い出せかったわ。
「ふふっ」
どう答えていいか悩む私にもう一度だけ微笑んでくれた彼女は、
何も言わずに更衣室を出て行ってしまったのよ。
…これってどういうことなの?
…って言うか誰?
知ってるような気がするのに何も思い出せないのよね~。
…でも今は着替えるべきかな?
見た感じ他には誰もいないわ。
私一人きりのようね。
静寂の包まれる更衣室。
今はまあ、何の問題もないけれど。
他に誰か来たらどう対応すればいいのか困るわよね?
だからそうならないように、
大人しく服を着替えることにしたのよ。




