再出発
………。
立ち去る彩花の後ろ姿を私は黙って眺めていたわ。
声をかける勇気がなくて、
何を言えば良いのかが分からなくて、
ただじっと彩花の背中を眺めていたのよ。
たぶん彩花は私が追い掛けるのを待っているんでしょうね。
それが分かっていても、
彩花を追い掛ける勇気が持てなかったの。
今の私にはまだ早いと思ったのよ。
みんなと一緒にいるのはまだ早い…ってね。
そんなふうに思ってしまったことで、
無意識のうちに彩花に背中を向けていたわ。
…ごめんね、彩花。
きっと彩花は私を心配してくれてるんだと思う。
だけど私は一緒には行けない。
彩花の側にいたら、
きっと彩花に頼ってしまうから。
そしてきっと…彩花に甘えてしまうから。
だから今は一緒には行けないの。
…あとで追い掛けるから。
…だから今は、私は私の道を行くわ。
彩花に救いを求めてしまう今の私を変えるために。
学園を出る決意をしたのよ。
「もしもまだ出来ることがあるのなら…今はまだ諦めないわ。少しでも可能性があるのなら…私も頑張ってみる。」
そのための目的地を決めたの。
『魔術師ギルド』
あそこなら私にも出来ることがきっとあるはず。
今はまだ暗黒迷宮には挑めない。
もう一度挑戦しても失敗するのは目に見えているから。
だったら今は別の方法を考えるしかないわよね?
…学園を離れて。
…みんなと離れて。
私は私の道を行くって決めたの。
限られた可能性を信じて、
魔術師ギルドを目指すことにしたのよ。
例え今以上には強くなれないとしても、
みんなの足手まといにだけはなりたくないから。
…出来ないことを繰り返すんじゃなくて。
出来ることから始めるべきなのよ。
そんなことも考えながら歩き続けていると、
すぐに校門に辿り着いてしまったわ。
「雨…ね。」
学園の外では激しい雨が降っているわ。
…この雨と一緒に悲しみも流れれば良いのに。
そんなふうに思ってしまうけれど。
それさえも弱音でしかないのかもしれないわ。
だからもう考えるのは終わり。
次に帰ってくる時が私の再出発する時なのよ。
「ばいばい…みんな…。」
誰もいない校門でみんなに別れを告げてから学園を出る。
そしてそのまま傘もささずに、
雨の降る町を歩き続けてく。
「今の私にはちょうど良いわね。」
悔し涙を隠してくれる雨に感謝しながら学園を離れたのよ。
そうして。
背後にいる人物にも気付かないまま。
学園から逃げ出したの。




