何が違うの?
「はい、これ。暇潰しに服を繕っておいたから、もう着れると思うわよ。」
成美ちゃんに差し出したのは、
ついさっき馬鹿な男子生徒に切り裂かれた喪服よ。
「あっ、ありがとうございます♪」
今まで私の制服を着ていた成美ちゃんに手直しした喪服を差し出すと、
成美ちゃんは笑顔を浮かべながら嬉しそうに喪服を受けとってくれたわ。
心からの笑顔と感謝の気持ちってやつよね。
「…凄いですね。」
喪服を手にした成美ちゃんは、
ほぼ完璧に繕い終えた喪服を不思議そうに眺めてる。
「破れたのが分からないくらい綺麗になってます♪」
「そう?」
「はいっ!」
喜んでくれるのは有り難いけど。
私がしたことって、
それほど難しいことじゃないのよ。
「破れたって言っても、ボタンの部分が引きちぎられた感じだから、直すのは簡単だったわよ?」
生地そのものに被害は少なかったから結構簡単に直せたのよ。
「それでもすごいです♪私は何も出来ませんから…」
…ああ、なるほどね。
そもそも裁縫が出来ない人から見ると驚く結果に思えるようね。
照れ臭そうな表情で俯いてしまう仕草さえも、
不思議と可愛らしく見えてしまうわ。
「裁縫くらいならいつでも教えてあげるわよ。」
「本当ですか!?」
「ええ。こういうのは得意分野だからいつでも付き合うわよ。」
天城君の服だって、
一晩で生地から仕立て上げたわけだしね。
裁縫は得意分野なのよ。
…これだけは愛里にだって負けないわ。
わりと料理とか掃除も得意だしね。
家事は全般的に私が勝っていたのよ。
…と言うか。
愛里はお嬢様育ちだから、
そういう方面は苦手っぽかっただけだけど。
むしろ料理に関しては沙織が一番かも?
実際に食べたことはないけど、
話を聞いた限りだと職人も逃げ出す勢い?に思えるのよね〜。
「私で良ければ時間がある時に色々と教えてあげるわよ。」
「やった~♪お願いしますっ♪」
さっきまでの疲れは吹き飛んだようで、
完全に元気を取り戻した様子に思えるわね。
30分にも満たない休息だったけれど。
精神的には安らげたのかもしれないわ。
「それで、もう大丈夫なの?」
「大丈夫です♪」
念の為に確認してみると。
成美ちゃんは笑顔で答えてくれたのよ。
「だったら良いけどね。だけど辛いと思ったらすぐに教えてね?」
「はいっ♪」
とっても可愛い笑顔で元気に返事をしてくれた成美ちゃんは、
私が貸していたブレザーを脱いでから喪服に着替え始めたわ。
「手伝ったほうが良い?」
「あ、いえ、大丈夫です♪」
一人で着替えられることを証明したいのかもしれないわね。
だけど不慣れと言うか何て言うか、
今日初めて着る感じがひしひしと伝わってくる成美ちゃんの姿はとても初々しく思えるわ。
「本当に大丈夫?」
「だ…大丈夫ですっ。」
袖に腕を通してボタンを留めるだけの仕種がとんでもなく不器用で可愛く見えるのよ。
「ふふっ。」
自然とこぼれる笑顔。
自分でも不思議なくらい優しい気持ちを感じながら、
私は私で自分のブレザーを手にとって袖を通してみる。
…温かいわね。
それに成美ちゃんの良い匂いがするかも?
…ああ、そう言えば愛里も甘い香りがしてたっけ?
香水が苦手な親友だったけれど。
それでも愛里はいつも甘い香りがしていたのよ。
…う~ん。
何が違うのかしら?
そんな小さな疑問を感じながらも、
成美ちゃんの着替えを見守り続ける。
そうして数分ほど待っていると。
「ちゃんと着れました〜♪」
成美ちゃんが誇らしげに微笑んだのよ。




