素敵なお姉さん
《サイド:栗原薫》
「…ぅん…。」
…ん?
可愛らしい声に気付いて、
成美ちゃんに視線を向けてみたわ。
医学書を閉じて、
成美ちゃんの様子を見ていたらね。
「………。」
静かに目覚めた成美ちゃんが、
私を見て微笑んでくれたのよ。
見た感じの感想だけど。
少しは気分が楽になった様子ね。
「もう起きたの?」
「あ…はい。起きちゃいました。」
ゆっくりとした動きで体を起こす成美ちゃんは、
眠りにつく前と比べるとかなり顔色が良くなっているように思えるわ。
「気分はどう?」
「えっと…。多分、もう大丈夫です♪」
…うっわぁ。
控えめに微笑む成美ちゃんの笑顔は、
同性の私が見ても見惚れてしまうくらいに超絶可愛いかったのよ。
最高の笑顔って、
きっとこういうことを言うんでしょうね~。
…羨ましすぎるわ。
美少女って本当に実在するのね~。
空想でも妄想でもなくて、
キラキラとした何かが見えるくらいすっごく可愛い笑顔だったのよ。
もしかしたら愛里より可愛いかもしれないわ。
そう思うくらいにね。
成美ちゃんの笑顔がね。
一目見たら忘れられないくらい最高に可愛いかったの。
「………?」
羨ましすぎるなんて思う私を、
成美ちゃんは不思議そうに眺めてる。
小さく首をかしげる仕草さえも、
何だか可愛く見えるのよ。
…はあ。
この気持ちは成美ちゃんには分からないでしょうね~。
…なんて。
一人で勝手に落ち込んでしまったわ。
…でもこれが生まれ持った才能の違いっていうやつよね?
才能は関係ないけど。
…格の違い?
もしくは。
…育ちの違い?
よく分からないけど、でもね?
私だってそんなに悪くはないはずなのよ?
…良いとも言い切れないけれど。
現実は厳しいわね。
…まあ、私は私だから悩んでも仕方がないんだけど。
そんなふうに諦めの心境で落ち込み続けていると成美ちゃんが話しかけてきたわ。
「あの…栗原さん。眼鏡をかけてるんですね♪」
…ん?
「あ、あ~。うん。何となくだけどね。」
「何だかとっても格好良いです♪素敵なお姉さんっていう感じがします♪」
…うわ〜。
…良い子ね~。
天然のたらし…って、
きっとこういう感じなんでしょうね〜。
…存在自体が魅了魔法に思えるのよ。
多分これはアレよね?
目が見えなかった弊害というか、
箱入り娘として育った経験というか。
余計な知識がないからこそ悪意がなくて、
目に見える全てを自然と全肯定しちゃう感じなのかも?
…これは問題ね。
成美ちゃんを野放しにしちゃうと、
世の男どもが暴走しかねないわ。
…早急に教育が必要ね。
知識もそうだけど。
常識は大事なのよ。
…身を守る手段も必要だけど。
そもそも何が安全で何が危険かを教え込む必要はあるでしょうね。
…でもまあ。
今は細かいことを考える前に、
成美ちゃんの笑顔を見ているだけで穏やかな気持ちになれたわ。
…成美ちゃん自身の問題はともかく。
沙織の死を知っても、
こうやって強く生きていくのね~。
そう思えたからこそ。
成美ちゃんの健気な笑顔がとても可愛く思えたのよ。
…こういうのを何て言うのかな?
保護欲?
何となく守ってあげたくなる子なのよ。
まあ、愛里もそうだったけどね。
…とは言え。
とりあえずはこうして見つめ合っていても仕方がないし。
枕元に用意していた物を、
成美ちゃんに差し出すことにしたわ。




