緑色の宝石
「ウィッチクイーンに関しては後ほど考えるとしてだ。常盤成美には何を告げていた?」
「目が見えるようになった理由…というよりも、込められた想いでしょうか。総魔は常盤沙織と美袋翔子の心を成美ちゃんの瞳に宿らせたと言っていました。それと…これくらいの大きさの『宝石』を繋いだネックレスを成美ちゃんに預けていました。」
少し説明に悩みながら片手で大きさを示しつつ説明を続けてくれたのだが、
御堂君が示す大きさは直径5センチ程だろうか?
「宝石の色は…緑に近かったと思います。」
「…っ!?」
…なんだ?
御堂君が宝石の情報を言葉にした瞬間に、
隣に並んでいた長野君の表情が一瞬だけ引き攣ったように見えた。
ホンの僅かだが驚いていたように思えたのだ。
まるで有り得ない事実を知った時のような…そんな反応に思える。
それは一瞬だけの変化だったのだが、
それでも俺は長野君の表情を見逃さなかった。
…今、何を驚いた?
…いや、何を隠そうとした?
驚くのならはっきりと驚けばいい。
不信感は変わらないが、
下手に隠し立てするほうが違和感が残ってしまうことになる。
それなのに。
何かに気づいても、
気付いていないふりをするということは何らかの理由があるということだ。
…長野君は何に気づいた?
疑問を感じると同時に、
一つの可能性が思い浮かぶ。
ウィッチクイーンは成美という少女に何らかの宝石を托したらしい。
小さな…いや、宝石という見方をすれば、
かなり大きな宝石を渡したことになるだろう。
金額的なこと以上に、そうしなければならない事情があったと考えるべきだ。
…もしかすると?
長野君の反応はその理由を知っているのかもしれない。
そう思えたことで長野君に話を聞いてみようとしたのだが、
その前に御堂君が驚くべき言葉を告げてきた。
「成美ちゃんにネックレスを預ける時に、彼女は『あなたの見る世界がこの世界の運命を変える』と言っていました。」
…なっ!?
…まさかっ!?
…そんなことが有り得るのか!?
御堂君の言葉を聞いた瞬間に、
予想外の答えにたどり着いてしまった。
…そんな馬鹿なっ!?
自分でも驚くほどの動揺だった。
表情に出さないように冷静さを保とうと思ってはいたが、
上手く出来ているかどうかは分からない。
…ただ。
動揺しながらも長野君の観察は忘れなかった。
御堂君の言葉を聞きながらも、
長野君の表情をしっかりと確認していたのだ。
一見、冷静に振る舞おうとしているのだが、
動揺の色は彼の瞳にはっきりと浮かんでいる。
戸惑いとも言える反応だ。
その反応を俺は見逃さなかった。
…ということは、まさかっ!?
…長野君は知っているのか!?
疑問が新たな疑問を生んでしまう。
…ウィッチクイーンが預けた物の正体を知っているのか!?
…何故だっ?
幾つもの疑問を感じると同時に、
更に一つの答えへとたどり着いてしまう。
…まさか、そうなのか?
…長野君は?
他には考えられない反応だ。
…つまり、長野君も竜の牙の一員なのかっ!!
確証はないが、否定も出来ない。
…いや、待てよ?
今はそれよりも長野君への対応よりも確認すべきことがある。
「その宝石は今も常盤成美という少女が持っているのか?」
「あ、はい。そのはずです。先程、催事場で男子生徒に捕われていた少女が成美ちゃんですので。」
…ああ、あの子か。
先程の戦いの最中で芹澤君とは別に男子生徒に捕われていた少女がいたな。
そして俺は確かにその少女を目撃している。
…あの少女が『あれ』を手にしているのか?
そこまでは理解できたが、
疑問は生まれ続けていく。
…何故、手放したのだ?
『あれ』はウィッチクイーン達にとって生命線とも言える切り札のはずだ。
他人に預けるなど有り得ない。
そう思う俺と同様に、
長野君も戸惑っている様子に見える。
…やはり竜の牙の一員なのか?
だが『アレ』の詳細を知っているのならば、
長野淳弥も幹部の一員になるはずだ。
それほどの人物が何故この学園にいる?
俺に近付いて暗殺でも狙うつもりか?
………。
分からないが、確か長野君も過去の詳細は不明だったな。
その事実を思い出して天城総魔以上の危険人物であることに気付いた。
…一度、確認する必要があるだろうな。
常盤成美の預かった物が本当に『アレ』なのかどうか?
そして長野君の過去の経歴を…だ。




