もう一度資金の練り直しじゃ!
サリエルの放った十文字の衝撃波はグレモリーに近付くにつれ、その波動が成長していく。
グレモリーは咄嗟に左手で魔方陣の盾を召喚し紙一重で防御する事は出来たが、盾にぶつかった衝撃波の威力に耐え切れず、彼女自身も数十メートル後ろに吹き飛ばされてしまった。
「ほう、さすが悪魔公爵ですね、私のホーリークロスウェーブを受け止めるとは…」
(くっ、かなりの衝撃波を放ったはずなのに、サリエルは平然としておる…これが大天使の力なのか…)
「おやおや、たった2回魔方陣の盾を召喚しただけで、かなり消耗しているようですね?私は久しぶりの闘いに気分が高揚しているのです、さぁ!もっと私を楽しませてください!」
一度大きく翼が羽ばたいた瞬間、大鎌を構えながらサリエルは、まだ体勢が崩れた状態であるグレモリーに襲い掛かってきた!。
それでもグレモリーは<覇神の槍>を巧みに操りサリエルの攻撃を幾度となく交わし続けていたが、次第に魔力の衰えを感じ始めている。
(くっ、このまま消耗戦になればわらわが不利…じゃが…最初に比べサリエルの攻撃も数段落ち始めている気がする…もしや、やつも異界での行動には制限があるのでは?)
「はぁ~、はぁ~、やはりドブネズミはしぶといですね……そろそろこの闘いの幕を下ろさせてもらいましょうか…」
(ち、来るか!)
「…大いなる光りを与えし主よ!我の前に立ち塞がる悪を、あなたの光りの雨にて浄化させたまえ!」
(ひ、光りの雨じゃと!…ま、まさか…以前、ルシファー様の反乱の戦いで、天空から無数の光の雨を降らし数千の悪魔を消滅させたあの秘儀を!)
グレモリーは空を見上げ防御の構えに入る、サリエルは大鎌を握り締めたまま両腕を大きく開き天に願いを届けているが、一向に天からの反応は無い!。
次第に焦りの色を露にしていくサリエル、この時すでにグレモリーはその原因を付きとめていた!。
「サリエル、まだ分からぬのか?…貴様も天使の力を使い果たしておる事を!時間を止める結界、限界を越えても放ち続けた衝撃波!それだけ力を使えば光の雨など召喚出来る訳がなかろう!」
「くっ、久しぶりに上級悪魔との闘いで力の配分を忘れていました…」
「それにじゃ、そろそろこの結界の効力も消え始めておる!それは貴様の力が減退しておる証拠じゃ!」
グレモリーの言葉にサリエルは辺りを見渡し、確かに結界の効力が消え始めている事を理解する、これでもまだグレモリーと闘う事を続ければ、自分もただでは済むはずはない…良くても相打ちが精一杯だろう…これ以上の闘いは無意味と悟ったサリエルは、大きく深呼吸し広げていた両腕を静かに下ろした。
「ふっ、今日のところはご挨拶としておきましょうか!しかし、グレモリーよ!この地にあなたが存在している以上、私はあなたを見過ごす事は決してありません!必ず神の名のもとに地獄界へ送り返してあげます!」
サリエルは自分の翼で身体を包んだ瞬間、霧が晴れるように消え、少しづつ時間を止めていた結界の効力が消滅していき、グレモリーの身体もそれに合わせ地上に降り立った。
グレモリーにしてみればこれまでのストレスを解消するどころか、いきなり大天使との決戦でかなり体力と魔力を消耗させられたのだが、それよりも更に衝撃的な事実がグレモリーを襲う!。
「いっ!な、なんじゃこれは!」
この地を覆っていたサリエルの結界が消えると同時に、青い空から降り注ぐ太陽の陽射しがグレモリーを包むと、身に着けていた衣類がボロボロになっている事に気が付いた!。
スーツの袖ボタンは何処かに落とし、肘部分の生地は破れ、何よりもサリエルの衝撃波で裂けたスカートの破損部分が更に広がり、生地の中からは桜色の可愛らしい白のレース付きパンティがチラチラと顔を出していたのである!。
「も、もうこんな姿では…試験場など行けぬではないか…お、おのれサリエル!せっかく洋服の赤山で夏の大バーゲンを狙って買ったスーツを!許さぬ、必ず貴様を殺す前にわらわのスーツ代を徴収してやるからな!…うぅ、それにしても…なんでいつもこうなるんじゃ?」
この地に参上した時はかなり露出度の高い衣装に身を包んでいても平気だったグレモリーだが、人間界に潜んでいるうちに女子の恥じらいとは何かを学んだようで、やけに破損したスカートの中から見えるパンティが気になり、結局準備していた試験費用はタクシー代に変わってしまい、改めて翌日グレモリーは別のルートで試験場に赴き、念願の運転免許証をゲットする事が出来たのだ!。
<そんな数日後の日曜日>
運転免許も手に入れ、かなりこの地の風習にも慣れて来たグレモリーだが、彼女は今日も今日とで不機嫌であった。
その理由はあのサリエルとの一件で一度しか袖を通していないリクルートスーツを台無しにされ、警察から貰った懸賞金の残高もいよいよ底をつき始めていたからだ。
(たく、あの糞サリエルの一件からどうもツキが無いわ!軍資金も乏しいのでラクダにガソリンをたらふく食わせてやる事も出来ず、指名手配の懸賞金を狙うにもやつらを捜索する経費が出ぬ…何か金を作る方法はないかの…)
最近の主食である袋ラーメンをすすりながら、いまだサリエルとの闘いの疲れが回復しないグレモリーは昼過ぎまで惰眠を貪り、今はテレビを観賞しながら遅い昼食をしていた。
<みなさんこんにちは!ハッピー競馬の時間です、さぁいよいよ今日は日本ダービーですね、本日の東京競馬場は芝、ダート共に良の発表、同じ年代に生まれた8421頭のサラブレットで頂点に輝くのはどの18頭でしょうか!非常に楽しみです!>
(なんじゃ、ただの馬同士の競走ではないか、人間とはこんな下等動物の競争に目くじらを立てておるのか、くだらぬの…)
<では日本ダービーのパドック解説前に、先程行われた東京第9レース<相模湾特別>の払い戻しが確定しましたのでお伝えいたします!アシスタントの飯岡瞳さん、お願い致します>
<はい、東京第9レース<相模湾特別>、単賞4番320円・複勝4番150円、7番130円、9番220円・枠連2-5、720円・馬連4-7、830円・馬単4-7、1,230円・三連複4-7-9で3、560円・三連単4-7-9で25,780円の払い戻しで確定しております>
<いや~、それにしても飯岡さん、また的中ですね!おめでとうございます♪>
<ありがとうございます、三連複の馬券を1,000円で買っていましたので、35,600円になりました♪>
<さぁ、今日はダービーデーですので、なんとこの飯岡さんの的中馬券をこの番組を観ている視聴者さん1名にプレゼントいたします!応募方法は番組の最後に発表しますので、お楽しみ!>
今、グレモリーのラーメンをすする箸が止まり、彼女の視線はテレビ画面に釘付けになっていた!。
それほどグレモリーにしてみれば衝撃的な光りが差し込んだからである!。
「せ、千円が…35,600円に化けたじゃと!…け、競馬とは…金を賭ける遊びじゃったのか!お~っ、ほっ、ほっ、ほ♪よいぞ、よいぞ♪これこそ、わらわに相応しい金儲けではないか!」
グレモリーは急ぎラーメンをスープまで平らげ、意気揚々とパソコンを起動させ[猿でも分かる競馬の楽しみ方]というサイトにアクセスしたのだった!。




