大天使VS悪魔公爵
こうして天使と対峙したのはいつ以来だったか…遥か太古の時代だったか、それとも最近だったか…グレモリーの記憶にはそんな時期など感心は無く、ただ、ただ天界への恨みだけが残っていた。
だが、今日だけはその恨みを晴らす機会では無い、念願の原付免許取得が目の前に来ているのだ!。
(都合よくサリエルは時間を止めてくれたお陰で試験時間は気にせずともよいが…間違いなくヤツと闘えば、この分割払いで買ったレディーススーツがボロボロになる!そんな姿のまま試験場へ行ける訳がないのじゃ!)
間もなくサリエルは容赦なくグレモリーに天魔波旬に対する攻撃を仕掛けてくるはず、何としてもこの下ろしたてスーツだけは守らなければならない!。
グレモリーは右手を前に伸ばし防御の構えをし、視線はサリエルだけに集中した!。
「ふっ、ふっ、ふ…その様な構えをしても、所詮は低級悪魔…天使の制裁を受け流すなど有り得ないのです!どうです?大人しくしていれば、瞬時にこの世界から消滅させてあげますよ♪」
「たわけ、そんな大鎌を振り回す構えだけで、貴様の鎌の動きが手に取るように分かるわ!」
「ほう、この鎌が身体と魂だけを切り裂く武器だと思っているのですか?…やはり低級悪魔は救いがたい…この鎌はですね、こういう事も出来るのですよ!ホーリーウェーブ!」
サリエルは大鎌を真一文字に右から左へ薙ぎ払った瞬間、白い衝撃波がグレモリー目掛け放たれた!。
しかし、グレモリーは素早く後方に飛び直撃は間逃れたのだが、この時スカートの裾が5cmほど衝撃波で切り裂かれてしまった!。
「あーーーー!!分割の支払いがまだ10回も残っておるのに!…ゆ、許さぬ!わらわがどんな気持ちでこのスーツを買ったと思うておる!」
「そんな服の事より、自分の残り僅かな命を心配した方がいいですよ♪ホーリーツインウェーブ!」
今度は攻撃のタイミングをずらして衝撃波を2回グレモリーに向けて放つ!。
間違いなくサリエルは先程攻撃をかわしたグレモリーの動きを封じ始めたのだ!。
「くっ、致し方ない…い、い出よ!神滅の盾!」
グレモリーの伸ばした右手の掌から大きな魔法陣が現れると、サリエルの放った衝撃波は岩にぶつかる高波のように大きく弾け粉砕されてしまった。
その光景を見たサリエルの表情が一段と険しくなり始める!。
「あれほどの魔法陣を召喚するとは……貴様!ただの低級悪魔でありませんね!」
「だからどうしたというのじゃ!許さぬ!貴様は断じて許さぬぞ!」
グレモリーの身体の回りに邪悪なオーラが揺ら揺らと広がる!そんなグレモリーの姿に、サリエルはこの地で感じた事のないほど危険な臭いを全身で受け取っていた。
「私の管轄している地で、これほどの悪魔が潜伏していたとは…私も平和ボケをしていたようです…ん?待ってください!…確か…あの女暮森理莉子と名乗っていましたね……暮森……ク・レ・モ・リ……グレ…グレモリ?…!!…き、貴様、悪魔公爵グレモリーか!!」
「おーーっ、ほっ、ほっ、ほ!すまぬのサリエル、わらわの口より早く貴様の口からわらわを紹介するとは♪知っておるのだよ、この世界で悪魔は自分の口から名乗ると消されるか地獄界に戻されてしまう事をの!」
「う、うかつ!私とした事が…つい口を滑らしてしまった!」
「さぁ~、もはやわらわに恐れるものなどないわ!サリエル、残りの支払い39,480円+消費税!貴様が弁償いたせ!」
「は?…い、意味が分からん…」
相手が大天使サリエルと知りながらも、これまでの惨めな日々にストレスを溜め込んでいたグレモリーは、スカートを破損させられた怒りが追加され、ついに真の悪魔の姿に変化していく、美しかった黒い瞳は真紅に染まり、白く輝く犬歯は牙となり、しなやかな指先からは刃物の様な尖った爪が伸びる!。
「や、やはりその姿…悪魔公爵グレモリー!…だが、貴様にとって無二の相棒であるラクダはどうしたのですか?」
「今は駐輪場でお昼寝中じゃ!」
「は?…駐輪場?…」
悪魔の姿に変化していくグレモリー、ただリクルートスーツはそのままである!。
何故なら、更に怒りを増長させると肉体がビルドアップし、もっとスカートの破損部分が広がってしまい、修繕出来なくなるからである!。
「グレモリー、何事も中途半端は命取りという事を知らないようですね!どうしました?以前のように全身鎧を纏わなければ、私には勝てませんよ!」
「たわけ!貴様に39,480円の重みが分かるか!それを…それを貴様というやつは!」
グレモリーの右手に赤い炎が揺らめき始める!。
「わらわの怒りは…こやつに託す!い出よ<覇神の朱槍>!」
右手の炎が一本朱槍に変わり、穂先から塩首までが紅蓮の炎に包まれている!。
その炎の勢いは今のグレモリーの怒りをそのまま表現しているようだった!。
「サリエル、何故この美しきわらわが悪魔公爵の爵位を大魔王サタン様より承ったのか、今から教えてやろう!」
まるで木の葉が地面に落ちるが如く、グレモリーは優雅に<覇神の朱槍>を舞わせサリエルを威嚇する、その槍捌きはこれまで幾多の神の使いを葬った事を十分知らしめる動きだった!。
「ならば、私も容赦はしません!この地に悪魔公爵が現れただけで不快です!」
「その言葉、そっくり貴様に返してやるわ!覇神乱槍突!」
グレモリーは朱槍の穂先を無数にサリエルへ向けて突き出す!余裕のサリエルはふわりと翼を羽ばたかせ飛び立ち、上空からグレモリーを見下ろす。
相手が空中なら自分も!と、グレモリーは魔力を使い自らも空へと浮かした!。
「ほう、さすがは上級悪魔、飛行能力もお手の物ですか…」
「ふっ、貴様が作ったこの時間を止める結界のお陰じゃ!礼を言うぞ!」
「果たして、それはどうでしょうね!ホーリークロスウェーブ!」
サリエルの持つ大鎌が大きく十字に振られた瞬間、十文字の形をした衝撃波がグレモリーに襲い掛かってきた!。
「さぁどうします?あなたの槍ではこの十文字の衝撃波は防ぐ事など出来ませんよ!」




