大天使サリエル
これ以上このムカツク男と付き合い無駄な時間を使えば、完璧に試験場には間に合わないので、急ぎこの場から立ち去ろうとしたグレモリーに、男は最もグレモリーが警戒していた言葉を投げ付け、またしてもグレモリーの足を止めた!。
(こやつ、今なんと申した!)
「おや?私の言葉に反応しましたね?…私はコミックやゲームに登場する誰もが知っている<悪魔>という単語を発しただけなのに…どうしてそれほど異常な反応を示したのか、とても興味があります!」
「おほほほ♪人に向けて悪魔だと言われるから驚いただけです♪では、ごきげんよう~!」
(試験時間に間に合わぬではないか!もう後日ではなく、試験が終ってから殺しに行ってやる!)
右手を口に当て心にも無く笑顔で男の前を通り過ぎようとしたグレモリーであったが、更に男はグレモリーの行く手を阻み、鋭い眼光で睨みつける!。
そんな男の眼光に、グレモリーはルシファー様の反逆に加担し、天界の天使達との戦いを思い出さずにはいられなかった。
(こやつの目の光…あの時に感じた事がある!)
「私の言葉が理解できませんか、やはり魔界のドブネズミはほとほと見苦しいですね!この大天使サリエルから逃げられるとでも思っているのですか?下等な悪魔よ!」
(サリエルじゃと!ド派手な大鎌を持ち、神の意志を忠実に執行し、奴の手で次々と悪事を働いた天使達を我が魔界に堕天使として送りつけたあの12人天使の一人サリエルか!)
この地に参上して初めて自分が窮地に追いやられた気がしたグレモリー、相手は大天使サリエル…悪魔公爵とはいえ大天使と一戦交えれば試験どころでは済まない!。
それに、今のグレモリーには援護射撃をしてくれる仲間の存在すらないのだ!。
(くっ、この地に天使が居るとすれば、あやつ一人ではなさそうじゃ…下手をすればわらわは消されてしまうか地獄界に逆戻り…何の為にここに来たのか分からんではないか!この苦境を乗り越えるには…やはりシラを切るしか無さそうじゃ!)
「おほほほ、サリエルさんですか?わらわは悪魔ではないし、そんな洗濯洗剤のような名前の知り合いは居りませぬ♪急ぎの用があるので、これで失礼~!」
天使に会釈するなど悪魔のプライドが許さなかったが、今は何より試験が大事!何度もグレモリーは(今度絶対に殺してやる!)と心に誓い、会釈をしてこの場から去ろうとしたが、それでもサリエルは執拗にグレモリーの行く手を阻み続ける!。
「おやおや、まだシラを切るとでも?…小悪魔らしい浅はかな知恵ですね!さぁ、私は名乗りました、あなたも名乗りなさい、この世界で相手が名乗り自分は名乗らないのは極めて無礼な行為!答えなさい、あなたの名は?」
当然グレモリーには今サリエルが何をしようとしているのかお見通しであった、自ら名乗れば魔力を失い問答無用にサリエルからの一撃で地獄界へと戻されるか、自身を消滅させられてしまう!。
(ふっ、あの低脳な黄色頭の男でも役に立ってくれたわ、誰が貴様に本名を名乗るか!)
「これは失礼、私はここに越してきたばかりの暮森理莉子と申します、それでは急用がありますので…」
これ以上サリエルに関わればろくな事は無いし、試験の時間にも遅れてしまうので、グレモリーは足早にこの場から立ち去ろうとしたが、サリエルは左腕を水平にし彼女の進路を遮断した。
「お待ちなさい、まだシラを切るおつもりですか?もうあなたが悪魔だと私は当に気が付いているのです、それでも自分は人間だと言い張るのなら、その証拠を見せてあげましょう!」
(くっ、証拠だと!)
「神の名において、魔を封じる力を我に与えたまえ!我は大天使サリエル、我の願いを聞き届けたまえ!」
サリエルは静かに両手で天を仰ぐと同時に、これまで太陽から黄金の陽射しが降り注いでいた風景が一変し、ホワイトパールの光りがグレモリー達を包みこんだのだ!。
しかし、それだけではなく、周りの人や車道を往来する車までも完全に停止した状態となったのである!。
(わ、わらわとサリエル以外…全てが止まった…)
「どうです?この天から授かった<ホーリー・カーテン>は?今、この地全ての時間が止まったのです!当然、この地で生きる者は自分が止まっているなんて知るはずもありません、何故ならこの<ホーリー・カーテン>の中で動けるのは…私のように天界の者か、あなたと同じ魔族以外は有り得ないのですから!」
「くっ、してやられたわ!」
「さ、何処の小悪魔かは知りませんが、そろそろ消滅するか地獄界に戻る時間が来たようです…大いなる天上界の主よ!このサリエルに魔を滅ぼす力を与えたまえ!」
サリエルの言葉にホワイトパープルの空から眩い黄金の光りが降り注ぎ、その光りがサリエルを照らすと同時に彼の背中から白銀色の翼が左右に羽ばたく!。
更にこれまで黒の生地に包まれていた神職の証でもある衣装が、いきなりバロック調の純白ロングコートとスラックスに変化し、コートの胸元には黄金色の十字架エンブレムが光沢を放っている。
そんなサリエルの右手には彼の代名詞である大きな鎌が握り締められており、やや癖のある琥珀色の髪は天から降り注ぐ聖なる光りに美しく照らされ、完全にバトル天使モードと化したサリエルがグレモリーの前に立っていた!。
「さぁ、あなたも真の姿に戻りなさい!でなければ、あなたは確実に私の手で滅ぼされますよ♪」
(そうしたいのは山々じゃが、免許証には証明写真が必須なのじゃ、だからわらわは今日真面目なリクルートスーツを着ておるのに!ここで奴と暴れて汚したらどうするんじゃ!)
「悪魔だとバレても、まだ人間の姿を保つつもりですか?…いいでしょう、まだ名乗るつもりがないのなら、私自身でその安っぽいメッキを剥がしてあげるだけです!」
(くっ、もはやシラを切る事は出来ぬ、かと言って悪魔グレモリーに変化するわけにも…どうすればよいのじゃ!)




