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人助けをしたら美少女に惚れられて偉い人に褒められるんですけど!  作者: マノイ
第三章

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20. 美少女達と一緒に犯罪組織のボスと対峙することになったんですけど

今回と次回はシリアスですがご容赦ください。

シリアスと言っても重いものでは無くサラっと解決しますのでご安心を。


また、今回と次回は二つで一つの話となっております。

要は長くなったので分割した、というやつです。

「何でこんな場所に連れて来たの?」


 奏が立っているのは、先程まで皆と一緒に楽しんでいたカラオケ屋が入居している雑居ビルの屋上だ。

 一般人が入らないように施錠されているはずだが、何故か難なく侵入することが出来た。

 屋上には転落防止の網などは設置されておらず、端に立とうものなら容易に死の恐怖を体験出来るだろう。

 このビルは八階建てであり、落ちたら間違いなく助からないのだから。 


「言っただろ。君と話がしたかったんだって」

「話ならさっきの部屋ですれば良いでしょ。矢野君」


 矢野涼真。

 全員が熟睡する中で唯一眠らなかったクラスメイト。

 彼が奏を屋上まで連れて来たのだった。


 矢野は屋上の端に近い場所に立ち、奏と対面している。


「そんなこと言うなよ。こういうのは気分が大事だろ」

「君……本当に矢野君?」


 今の矢野からは、大人しくて穏やかな草食系の雰囲気は感じられない。

 眼鏡の奥の瞳は鋭く、嘲笑うかの如き笑みを浮かべて奏を見つめている。


「あっはっはっ!そうさ、僕は君のクラスメイトの矢野涼真だ。別に操られてたりおかしくなった訳では無いぞ。これが僕の本性なのさ」

「……」


 学校では猫を被っていたのだろう。

 奏としては驚きではあるが、今はそんなことはどうでも良い。唐突に眠ってしまった皆が心配でそちらの方に気を取られているのだ。


「ええと、何が何だか良く分からないけれど、それより皆の事だよ。何で寝てるんだろう。救急車とか呼んだ方が良いのかな?」

「気にすることは無い。あれは寝ているだけだ。直に起きるさ」

「何でそんなことが分かるの?」

「分かるさ。僕が睡眠薬を飲ませたんだから」

「え?」


 矢野は当たり前のことだとでも言うかのように、平然とした顔で自白する。


「僕が皆を眠らせた理由は色々とあるが、一つは君とこうして邪魔の入らないところで話がしたかったことだ」

「何を言って……?」


 突然の展開に奏はついていけない。

 だが、矢野は奏の混乱が収まるのを待たずに言葉を続ける。


「君に聞きたかったことがある」

「……」


 その質問は、奏を更に混乱させるものだった。


「花ヶ前の誘拐サイトを見ただろ。『どの動画』が好きだった?」

「……は?」


 花ヶ前の誘拐サイト。

 そう言われて奏が想像するのは一つしかない。


 真夜を誘拐事件から救出するきっかけとなった誘拐計画が書かれた隠しサイト。


 だがこの事件は表には報道されておらず、誘拐サイトの存在も秘匿されている。何故矢野がそれを知っているのだろうか。


「過激なのが多かっただろ。あのサイトは消えてしまったが動画は残ってるんだぜ。良ければ気に入ったやつをプレゼントしようか?」

「僕は見てないよ!それより矢野君もあのサイト見つけたの!?」


 『動画』とはあのサイトに書かれた『報酬(女たちの末路)』のリンク先に掲載されていたものだろう。奏はそれを見る気にはなれず、スルーしていた。


「うっそだろ。あれ見てないのか?君本当に男なのか!?」


 真っ当な感性の持ち主には見るに堪えない物もあるとはいえ、女性のあられもない姿を見るチャンスで気にならない男など居ないというのが矢野の考え方なのだろう。


「そんな最低な事出来るわけないでしょ!」


 だが奏は心からそのような行為を否定していた。


「マジかよ!僕と君とは本当に相容れないんだな」


 残念そうに言いながらも、その顔は決して悲しんではおらず愉快そうにしている。


「まさか矢野君見たの!?それにダウンロードしたの!?」


 先程矢野は動画をプレゼントすると言った。

 ゆえに奏は、矢野があのサイトを見た時に動画をダウンロードしたと考えたのだ。


「そうか、この流れだとそう勘違いするのか。勉強になるな」

「何を言ってるの!?」

「なぁに簡単なことさ。僕はダウンロードなんかしていない。元々持っていたからな」

「は?」


 矢野はわざわざサイトにアクセスして落とす必要など無かったのだ。


「分からないか?僕達があのサイトを作ったんだ。まぁ実際に作るのは仲間にやらせたけどな」

「……え?」


 そもそもサイトを提供する側の人間だったのだから。


 だがそれはとてつもなく重大な事実を意味している。

 矢野涼真は犯罪者の仲間である、ということを。


「嘘……でしょ?」

「嘘じゃない。ちなみに、勘違いされないように先に言っておくが、僕は下っ端じゃなくてリーダーだ」

「……」


 これまで一緒の高校に通っていたクラスメイトが実は犯罪組織のボスであった。

 簡単に信じられる話では無い。


「(どういうこと?何が起きてるの?矢野君が悪い人?何で?どうして?)」


 実際、奏の脳内は大混乱であった。


「あれを見れば少しは信じられるだろ。ほら、後ろを見な」

「……!?」


 矢野の動きを警戒しながら奏が後ろを見ると、そこには信じられない光景が広がっていた。


「岡さん!」


 スーツ姿の男が眠る岡を片腕で抱え、岡の頭に銃口を向けていたのだ。

 冗談では済まされないことだ。

 これまでどうにも信じ難かった矢野悪人説が、一気に現実味を帯びてしまった。


「(岡さんが危ない。というか、何であの人が・・・・こんなこと・・・・・してるの・・・・!?)」


 奏はスーツ姿の男に見覚えがあるようだ。


 矢野の自白。

 岡のピンチ。

 見覚えのある人物が矢野の仲間として登場。


 更には『銃』という分かりやすい暴力まで登場し、奏の混乱具合はより強まって行く。


「何でこんなことを……」

「僕が悪人であることを理解してもらうためだ。君が変なことをしなければ彼女には危害を加えない」

「……」


 悪人の言葉など信じられるわけが無い。

 奏は釈然としない気持ちはあるが、矢野が敵であることを認めた。


「そうだ、みんな!」


 そうなると心配なのは愛しのお嬢様達や幼馴染ーず、他のクラスメイトのこと。

 矢野は睡眠薬を飲ませたと言ったが、彼が悪人であればそれも信じられない。


「だから大丈夫だって言っただろ。本当に睡眠薬を飲ませただけだ。残念ながらそれ以上のことは出来ないからな」

「?」

「まさか君が飲み物を零すとは思わなかった。いやぁ怖い怖い」

「??」


 仮に毒薬など飲ませようものなら、同じ『報い』を受けてしまうため絶対に出来ない。

 睡眠薬であれば『報い』を受けても問題無い。

 そもそも睡眠薬は『薬』の一種だ。飲ませても攻撃扱いにはならず奏相手でも効果があるかと思い奏の飲み物にも隙を見て混入したのだが、スキルの力なのか偶然によるものなのか零されて無効化されてしまった。


 また、因果応報?スキルの内容を他者が奏に伝えることが出来ないため、矢野の言葉は奏にとって意味不明な供述になっている。


「っておいおい、マジかよ」


 その矢野が突然何かに驚いた。

 視線の先を奏が確認すると、屋上の入り口から新たに二人の人物がやってきたところだった。


『奏様!』

「美月さん!真夜さん!」


 睡眠薬を飲まされて眠っていたはずのお嬢様達が、援軍に駆け付けてくれたのだ。


「ご無事ですか?」

「酷い目に合ってない?」

「うん、僕は大丈夫。二人も無事でよかった」


 お嬢様達が奏に近寄るのを矢野は特には止めなかった。

 人質となった岡を救出したり矢野を拘束するような手段を彼女達が持っていないことに気付いていたからだろうか。


「でもどうして起きれたの?」

「真夜のおかげ」

「企業秘密ですわ」

「?」


 真夜は誘拐された場合に自ら死を選ぶための毒薬を常備している。

 だが持っているのは毒薬だけではない。解毒薬も持っており、毒を盛られた場合にすぐに口にするよう訓練されている。今回は睡眠薬を飲まされたとすぐに分かり、眠りに落ちる前に打ち消す薬を口にしたのだ。そして目が覚めた後に、眠る美月と芹那を目覚めさせるために薬を飲ませた。

 この事実を奏に隠す必要は無いが、この場には敵らしき存在もいるため、その説明はしなかった。


「芹那さんは?」

「色々と連絡してる」


 この場には居ない芹那は、瀧川女学院や父親である警視総監などに現状を伝えて助けを求めている。


「それなら安心だね」


 助けが来てくれれば、人質が解放され矢野が逮捕されるのも時間の問題だろう。


「あっはっはっ!それはどうかな?」


 だが矢野は奏の言葉を否定する。


「今ごろ彼らは手一杯の筈だ。何しろ来日中の大統領が狙われている上に、日本中で多くの権力者も狙われているのだからな」

「どういうこと?」

「そういう情報を流したのさ。もちろん事実だ」


 アメリカ大統領を狙うテロリストを日本に呼び寄せ、日本中の多くの犯罪組織に声をかけて同時多発テロを仕掛けている。

 前代未聞の犯罪予告に対応すべく、日本を守る者達は必死になっているだろう。奏の元にどれだけの救援を寄こせるのか不明である。


「どうして……」


 犯罪者の気持ちなど分かりたくもないが、それでも奏はそう呟いてしまった。

 何故そのような非道な行いが出来るのか、と。


「そうそう、それだよそれ」

「え?」

「君のその質問こそが、僕が君と話をしたかった理由だ。やっと準備が整ったよ」


 矢野は待っていた。

 奏が矢野を『敵』として認識する時を。

 多くの人を悲しませる犯罪者であると理解する時を。


「どうしてこんなことをするのか。答えてやるよ。それはな、君を消したいからだ」

「え?」


 消したい。それはつまり殺したいということだろうか。


「君にはそこの花ヶ前の誘拐を潰されたからな。あの時に使える人物が多く捕まった。本当に困ったことをしてくれたもんだ」

「わたくしのあの事件の逆恨みなのですか!?」

「あっはっはっ!まさか。逆恨みなんてちゃちい事はやらねーよ。アレは僕の負けだっただけの事。敗者が罰を受けるのは当然の事だろ?」


 矢野にとっては手駒が潰されたことが罰と考えているのだろう。

 世間的には全く罰にはなっていないが。


「それよりも問題なのは、君が権力者達と仲良くなっていることだ。理由は言えないが、それは僕にとってとても面倒なことだからな」


 因果応報?スキルによってターゲットとしたい相手が次々と守られて行く。

 最初の頃は矢野もスキルをどのように攻略するか考えていたが、相手をするのがあまりにも面倒臭く、次第に奏を排除する方針へと思考が変わっていった。


「(奏様のスキル)」

「(そういうことでしたか)」


 奏のスキルを知っている美月と真夜は、矢野の言葉の意味を理解していた。


「だから君に消えて貰いたいのだが、残念なことに僕はそれが出来ない」

「……」


 手を出したら無効化され、『報い』が返って来てしまうのだから。


「それでお願いがあるんだ。佐野奏、自分で死んでくれないか?」

ぶった切られて終わった感じがありますがご容赦ください。

元々分けるつもりが無かったので……

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