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人助けをしたら美少女に惚れられて偉い人に褒められるんですけど!  作者: マノイ
第二章

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13. 美少女が僕の部屋に来て押し倒しちゃったんですけど

本日は二話更新致します。


なお、読まれている途中に気になるかと思いますので先に記載しておきますが、

真夜(芹那では無いです)が佐野家に両親と一緒にお礼に来たことがあります。

具体的な描写はしてないので忘れられているかもしれないので念のため。

「やったー勝ったー!」

「奏様ー負けちゃったよー」

「お兄ちゃんと一緒にかかってきて良いよ」

「僕は弱いから」

「もーそこは『俺に任せろ』って言う所でしょ」

「そもそもこのゲームでどうやってペアになるのさ!?」


 佐野家。

 そのリビングにて奏の妹の七海が芹那とレースゲームをして遊んでいた。


「そもそも七海はゲームばっかりやってて強いんだから初心者の芹那さんが勝てるわけないじゃない」

「失礼な事言わないでよ。それじゃあまるで私が遊びまくってるみたいじゃん」

「ふ~ん、違うなら受験は余裕だね」

「ぐっ……芹那さーん、お兄ちゃんが苛めるー」

「あははは、二人とも仲が良いんだね」

『どこが!』


 声を揃えて兄妹は否定するが、仲が良いのは間違いないだろう。

 年頃の兄妹ならばケンカどころか会話すらしない家庭もザラではない。このように軽口を叩き合えている時点で仲が良いのは明らかだ。


「ねぇねぇ芹那さん。次はこれで遊ぼ!」

「七海ちゃんは元気だねー」

「ごめんね、妹がうるさくて」

「そんなことないよ。最初は何かと思ったけど」

「あはは」

「それは言わないでください……」


 芹那が言っているのは奏と一緒に佐野家にやって来た時の事。


「ようこそお越しくださいました」


 玄関を開けると、なんと七海が三つ指立てて出迎えたのだ。


「だってお嬢様が来るって話だったから……」

「ごめんね、お嬢様っぽくなくて」

「そんなことないです!芹那さんは、その、イメージとは違うけどお嬢様です!」


 微妙なフォローをする七海だが、かしこまってしまったのも仕方ない。

 七海はお嬢様オブお嬢様の真夜に、すでに会っていた。その時の印象が強烈に残っていて、失礼をしないようにと暴走してしまったのだった。


「せっかくだから七海ちゃんの期待に答えちゃおうかな」


 芹那は露出が多いトップスの上にショッピングモールで購入した上着を羽織っている。それでもミニスカートはそのままであるし、上半身もまだそれなりに露出が残っている。デザインも普通の女子高生が好むものであり、お嬢様らしいコーデではない。


 だがそれでも、芹那はお嬢様であった。


『え?』


 奏と七海の声がハモる。

 ほんの一瞬で、芹那にお嬢様のオーラが纏ったからだ。


 背筋がピンと伸び、笑顔は柔らかく、動作に優雅さを感じられる。

 まるで真夜のような雰囲気だ。


「七海さん、本日はわたくしと遊んでいただきありがとうございます」

「ひ、ひえ!しょんなことは、じゃなくてどうたしまして、だっけ、あれ?」


 そのオーラにあてられて七海は混乱してしまう。


「(凄い……)」


 お嬢様オーラに慣れさせられた奏は動揺することは無かったが、それでもお嬢様としての芹那に普段とのギャップを感じて見惚れてしまっていた。


「なーんてね。どうかな、お嬢様っぽかったかな」

「う、うん!凄い凄ーい!」


 警視総監の娘である芹那はお嬢様だからというよりも、安全を確保するために瀧川女学院に通っていた。それゆえ芹那は庶民側の感覚が強く、お嬢様としての振る舞いにもそれほど興味を持てていなかった。

 瀧川女学院を抜け出していたのも、これが理由である。


 だが奏と出会い、恋をしたことで興味が無いなどと言ってられなくなった。

 奏が通う学校への転校を許可する条件は瀧川女学院の特別カリキュラムを全てこなすこと。その中には当然お嬢様としての諸々も数多く含まれている。興味が持てず、決して成績が良いとは言えなかったそれらのカリキュラムを芹那は必至で乗り越えた。

 すべては奏に会うために。


 芹那が見せたお嬢様としての姿は、奏への恋心の結晶だったのである。


「京極さーん、そろそろ始めましょう」


 リビングで雅を見せた芹那に、奏の母親がキッチンから声をかけた。


「は~い、今行きまーす」

「私もー。あ、お兄ちゃんはダメだからね」

「なんでさ」

「そういうものなの!」


 奏を残して二人はキッチンへ向かう。

 キッチンでやることと言えば料理だろう。そのための食材を帰りに芹那と一緒にスーパーで買ってきたのだ。


『なんか、新婚みたいだね』


 なお、スーパーにて定番台詞で奏を大いに慌てさせていたりもする。


「今日の芹那さんぐいぐい来るなぁ」


 奏はキッチンから漏れてくる楽し気な声を聞きながら、今日の事を思い出した。


 異常に露出度が高い服を着て、体をギュッとくっつけて、恋愛映画を見たいとせがむ。

 しまいには家まで押しかけて来た。もちろんアポなしではなく奏の両親に事前に許可を得ていたのだが、それにしては攻め過ぎでは無かろうか。


「芹那さんらしいような、そうでないような……」


 明るく活発な芹那であるためある程度強気に攻めて来るのはおかしくはないが、想像以上に強気に来られてどことなく違和感を覚えていた。


 その違和感の正体が分からずもやもやとしていたら、父親が帰って来た。


「ただいま、奏」

「お帰り、お父さん」


 トラブルによりゴールデンウィークなのに休日出勤であったのだ。IT戦士の悲しい定めである。


「京極さんはキッチンかな。よし、挨拶して来る」

「あ、お父さんダメ!」


 奏には父親が女性達に追い出されて肩を落とす未来がはっきりと見えていた。




『いただきます』


 佐野一家と芹那が、夕食が並べられたテーブルを囲む。

 メニューはブリの照り焼き、煮しめ、キュウリの酢の物、レタスとミニトマトのサラダ、カブの味噌汁だ。


「お兄ちゃん、芹那さんが作ったのを当てなきゃダメだからね」


 七海が奏を煽るが、奏は気恥ずかしい気分でそれどころではない。

 何しろ自分の家族と一緒に気になる同級生と御飯を食べようとしているのだ。

 チラリと芹那を見ると、箸に手をつけずに真っ赤になって奏の方をチラチラと伺っている。母親が芹那を奏の正面に座らせたのは、この姿を奏に見せつけて印象に残らせようとするためだった。


 自分が食べ始めて美味しいと言えば芹那も安心するだろう。そしてご飯を食べ始めればこちらが見られる頻度は減るだろう。そう思った奏は箸を手に取る。


「ちょっとお兄ちゃん聞いてた?」

「え、何?」

「だーかーらー、芹那さんが作ったのを当てなきゃダメなの」

「ええ、そんなことする必要ないでしょ」


 奏の答えに七海はがっかりする。

 女の子の気持ちが全く分かっていないんだから、と。


 しかし母親は違った。

 息子がしっかりとした男の子であることを信じていたのだ。


「だって全部でしょ」

『え?』


 父と妹と芹那が驚きの声をあげる。


「だから全部だって。芹那さんだったら絶対全部やりますって言うもん」

「わわわわ」


 なんと奏は、一口も食べることなく芹那にダメージを与えることに成功した。七海も信じられない物を見るような目つきで奏を見つめてる。


「さぁ奏、冷めないうちに食べましょう」

「うん」


 動揺しなかった母親の言葉に従い、奏は料理に手を伸ばす。


「美味しい」

「ほ、ほんと?」

「うん、どれも美味しいよ」

「ほんとにほんと?」

「うん、しかも僕が好きな味だよ」

「わわわわ」


 ストレートに褒められて、芹那は照れ臭くなり顔を両手で覆ってしまった。

 そのスキに奏はチラリと母親を見るが、目が合ってもすまし顔を崩さない。しかもその表情は『こっちなんか見てないでフォローしてあげなさい』と言っているようにも思える。


 母親が手伝うのだから美味しいのは当然であると奏は確信していた。自分が普段から手伝っているから、母親の教え方が上手であると知っているからだ。芹那の料理の腕は知らないが、例え初心者であったとしても美味しく作らせるだろう。


「芹那さんも食べようよ。冷めちゃうよ」

「う、うう、うん」


 最早恋人同士にしか見えないやりとりに、七海は興味津々。だが同時に妙な気恥ずかしさも感じていた。家族の恋愛模様を間近で見せられているのだ、免疫の無い年頃の女の子としては仕方の無いことである。


 ぎこちない空気が続くが、徐々に雰囲気はやわらぎ、佐野家の夕食の時間はとても賑やかなものとなった。なお、最後まで父親は空気であった。




 夕飯が終わり芹那と一緒に後片付けをやっていると、とんでもないことを言い出した。


「この後、奏様のお部屋に行きたいんだけど、ダメかな」

「ぴええええええ!」


 佐野家に来てから真っ先に言われるのかと思っていたが、一向に言い出す気配が無いためこのまま帰宅する流れなのかと油断していた。

 奏の部屋は常に整理整頓されているため、突然押しかけられても見られて困るものはない。


 だが問題はそこではないのだ。

 自分の部屋に、自分を好きだと言ってくれる、絶世の美少女を、招き入れるのだ。


 健全な男子ならば中で何が起きるのかを色々と妄想してしまう。


「(そういえばさっきお母さんが七海を呼んでた!)」


 手伝って欲しいことがあると七海を母親の部屋に連れ出した。その時の七海が何か言いたげに奏を見ていたから気になってはいたのだ。

 何かがあって隣の七海の部屋に聞こえても大丈夫なようにとの配慮であり、そのことを七海も気が付いていた。


「(考えちゃダメ考えちゃダメ考えちゃダメ考えちゃダメ)」


 芹那は庶民寄りだが純粋培養のお嬢様だ。

 決してそういう・・・・意図は無く、純粋な興味で奏の部屋が気になるだけなのだ。

 隣で真っ赤になってお皿を拭いており、ときおりチラチラと上目遣いで見上げて来るが、決して特別な意味など無いのだ。


 そう奏は思い込もうとしていた。


 そして後片付けが終わり、奏は芹那と共に階段を上がって自分の部屋に向かう。

 ごくりと唾を飲み込み、前髪が崩れていないか気になって触ってしまう。

 自分の部屋に家族以外の異性を入れるのは栞以来だ。栞でさえも中学以降は入れておらず、小学校の時は辰巳も一緒であった。


 人生で初めて、自分の部屋で女の子と二人っきり。


 沈黙が続く中、奏はついに自室に着いてしまった。


「ど、どうぞ」

「お、おお、お邪魔します」


 奏の部屋はぬいぐるみが数多く並べられていた。

 だが決して女性的だけな部屋と言う訳では無く、男性的な雰囲気も漂っている。男物の学生服や隅に積まれている漫画雑誌、そして薄い青色のベッドの影響だろうか。


「ここが奏様のお部屋……」


 興味深そうに部屋を見られると、何かうしろめたいものを隠している気分になってくる。アイドルのポスターなどの気まずくなるものは無いはずだが、思わぬ落とし穴があるのではと不安になる。


「奏様」

「な、何かな?」

「エッチな本はやっぱりベッドの下なの?」

「ぴええええええ!」


 ぎくしゃくしたムードがぶち壊しである。


「あはは、冗談だよ。栞ちゃんがね、男の子の部屋にはえっちな本があるから、もし中に入ったらこう言えば良いんだよって言ってたんだ」

「栞ちゃああああん!」


 なんてことを言ってくれるんだと、奏は栞を恨めしく思った。


「でも今の反応、もしかして本当にどこかにあるの?」

「さ、ささ、さぁ?」


 何故ならば、奏もその手のものを持っていたからだ。


 何度目かの説明になるが、奏は男の子である。

 見た目は可愛いし、女子力が高いが、それでも内面はれっきとした男なのである。

 女の子を見てえっちな気分にもなるし、そういうモノも持っている。


 ベッドの下のようなあからさまな場所ではないが、この部屋のどこかに危険物があるのだ。

 もちろんこれまたお約束で、母と妹にはその場所はバレているのだが。


「あ~や~し~い~」


 芹那は笑いながら奏を揶揄う。

 そこには先ほどまでの照れた様子はなく、もしかしたらこのテンプレ展開をやりたかっただけなのかもしれないとも思える。


「な~んちゃって」


 芹那はいたずら顔のまま、奏のベッドに腰かけた。


「(ぴえ!)」


 自分が普段使っているベッドに可愛い女の子が座っている。それだけで奏は暴走しそうになるのだが、理性を奮い立たせて押し留める。


「せ、芹那さん?」


 恐る恐る芹那に近づく。

 このまま隣に座ればもしかして良いムードになってそのまま、などという考えが奏を誘惑する。


 芹那はそんな奏の葛藤を知ってか知らずか更に追い打ちをかけて来た。何故か上着を脱いでから、奏のベッドにうつ伏せになったのだ。


「奏様の匂いがする!」


 しかも枕に顔をうずめ、匂いを嗅いでいるではないか。

 物語ではあるあるだが、実際にやられたらドン引き行為だ。いくら可愛い女の子とはいえ、自分の頭皮の匂いが染みついている枕の匂いを嗅がれるなど恥ずかしくてたまらない。


 奏は普通に慌てて芹那を止めようとする。


「ちょっ、芹那さん。恥ずかしいから」

「え~もうちょっとだけ~」


 枕の奪い合いでじゃれついていると、いつの間にかとても危険な体勢になっていた。


「(ぴええええええ!)」


 芹那は仰向けになっており、その上に奏が覆いかぶさっていた。


 上着を脱いだ芹那は、デートの最初の薄着の姿である。


 ノースリーブのトップスは、ずれて下着が少しだけ見えてしまっている。

 腹部もめくれあがり、健康的な肌色がちらりと見えている。

 ただでさえ短いスカートも下着が見えていないのが不思議な状態だ。


 男子の部屋のベッドの上で美少女があられもない姿を見せるなど、襲ってくれと誘っているようなものだ。


「(芹那さん!)」


 だが奏はギリギリのところで欲望を理性で抑え込む。

 据え膳食わぬは男の恥とは言うが、それでも奏の紳士の部分が待ったをかける。

 今にも襲い掛かり目の前の女性に触れたいと思う気持ちを鋼の意思で食い留める。


「僕、男の子、だよ」

「うん」


 奏は言葉を絞り出す。

 芹那からはそれまでのはしゃいだ様子が消え、顔を真っ赤にして奏を見つめている。


「男の子に、こんなことしたら、危ないんだよ」

「どう、危ないの?」


 奏はもう気が付いていた。

 芹那はこれから何が起きるのかを正しく理解しているのだと。

 そして戸惑わない様子から、やはり最初からこの状況を想定していたのだと。


「教えて、奏様」


 芹那が望むのなら、何も遠慮する必要は無い。

 理性を働かせる必要も無い。

 据え膳を全力で食べてしまおう。


「いい、の?」

「うん、奏様に、教えて欲しい」


 芹那は目を閉じる。

 奏は我慢することを止め、芹那を抱き締めた。























 が、そこまでだった。


「奏……様?」

「ねぇ、芹那さん。どうしてそんなに悲しそうなの?」


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