表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人助けをしたら美少女に惚れられて偉い人に褒められるんですけど!  作者: マノイ
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/72

11. 因果応報? その6 怪盗ルパン救世

 その人物は神童と呼ばれていた。


 何をやらせても年齢以上の実力を発揮し、性格も良く、子供からも大人からも好かれていた。

 大抵その手の神童は成長するにつれて他の子供達に追いつかれて埋没するものだが、その人物は神童であり続けた。


 だがその人物は、なまじ才能があったがゆえに、世の中の悪意や不条理が放置されている状況をなんとかしようと考えてしまった。

 しかしどれだけ優れた人物で在ろうとも、たった一人で世の中を変革することなど出来やしない。

 しかも相手は単なる犯罪者だけでは無く、時には凝り固まった日本人の価値観のような漠然とした相手と戦わなければならなかった。


 人知れず社会の闇と戦うその人物を神が祝福したのか、それとも単なる偶然か、あるいは趣味・・の影響か、その人物には大量のスキルが付与された。

 降って湧いた幸運だが、その人物は悩んだ。やれることがあまりにも増えすぎたため、何から手を付けて良いか分からなかったからだ。


 その人物はふと自室の本棚を見る。

 そこには大好きな漫画が大量に並んでいた。特に好きな作品は『ハートスティール』という怪盗モノの少年漫画。


 大量のスキルがあれば自分も怪盗になれるのではないか。

 しかもやり方次第では世の中の変革にもつながるかもしれない。


 怪盗ルパン救世が誕生した瞬間であった。


――――――――


 怪盗が最初に狙ったのは、隠された犯罪を世の中に公表することだった。


「うお、こいつ真っ黒だな」


 スキルが付与された日から、眠っている時以外は『鑑定』スキルを常時発動させてレベルを限界まで上昇させた。そしてある時、対象の犯罪歴が鑑定結果に表示されるようになった。

 黒い噂が絶えない大物達に片っ端から鑑定をしかけた結果、ある大物政治家が臓器売買の斡旋に関わっているという事実を突き止めた。


「絶対に許せない」


 怪盗はまず予告状を作成し、政治家の元に送り付ける。

 狙いは犯罪で稼いだ金で購入した絵画だ。

 この時点では怪盗の存在はまだ知られていないため、単なるいたずらと思われるのが関の山だろう。だが、その予告状に臓器売買の事を知っているニュアンスを含めることで、劇的な反応を引き出せた。


「よし、集まってるな」


 政治家の屋敷は物々しい警備体制が敷かれていた。


「警察の姿が無いのは後ろ暗いことがあるからか?」


 だが、どうみても真っ当な人種には見えない警備員だらけであり、警察が巡回している様子は全く見られない。


「これじゃあ意味が無いんだよな。申し訳ないが、派手にやらせてもらうぜ」


 怪盗は盗みに入る数時間前にマスコミ各社に予告状を送付した。しかも臓器売買を匂わせる文章もセットでだ。

 胡散臭い情報だが、ターゲットである政治家の邸宅は物々しい雰囲気になっており、マスコミは予告状が本物であることを確信した。その結果、邸宅の周囲にマスコミが殺到し、ヘリも飛び交い、テレビ局による緊急特番も組まれるようになった。


「怪盗に狙われているというのは本当ですか!」

「予告状にはXX議員が臓器売買に関与しているらしき文面が書かれているのですがこれは事実なのでしょうか!」

「一言お願いします!」


 どこからマスコミに視られているか分からないため、屋外で銃を使って怪盗を始末するのは難しくなった。これも怪盗の狙い通りである。


 そして予告時刻が来ると、すでに屋敷に侵入済みの怪盗はスキル『ゴーレム』を使いダミーを屋根の上に出現させる。


「予告時刻になりました。果たして本当に怪盗は……屋根の上に誰かいます!」

「赤いマントに……あれは能面でしょうか」

「なんということでしょう。怪盗が本当に現れました!」


 マスコミはこぞってカメラで怪盗の姿を収めようとする。その彼らにも伝わるようにと、怪盗は『拡大』と『誘導』スキルを組み合わせ、声を大きくしてマスコミの居る場所へと正確に誘導した。


「初めまして。私の名は怪盗ルパン救世」


 上空からの光に照らされる中、ダミーは仰々しくお辞儀をする。


「今宵は黒い金の象徴とも言える絵画をこの手にし、世界を浄化すると約束しよう」


 政治家にとって致命的な一言を告げ、ダミーを屋敷の中に侵入させるフリをして消去する。その後、本体の怪盗は『すり抜け』のスキルを使って屋敷の中を自由に動き回る。銃で撃たれても『シールド』スキルで防ぎ、スキルで攻撃されても『スキル無効化』スキルで防ぐ。そしてあっさりと目的の絵画を確保した。


「見よ!これが悪の象徴たる絵画である!」


 屋敷を脱出した怪盗は再度屋上にダミーを出現させ、盗んだ絵画をマスコミに見せつけるように高々と掲げた。


 結果、世間からの圧力によりXX政治家の臓器売買は表沙汰になり、怪盗の狙いは成功した。


 次に怪盗が狙ったのは社会問題に切り込むことだ。

 単なる悪事を暴くだけならば個人が努力すれば出来なくはない。だが、社会問題となると話は別だ。初回と同様に怪盗が注目されることで社会問題が取り上げられ、世間の圧力が強まれば世の中を変えることに繋がるかもしれない。


 その狙いは大成功に終わる。

 外国人研修生を奴隷のように扱う企業をターゲットにしたことで、彼らの日本での扱いが本格的に議論されて改善されるようになってきたのだ。これは単に世間の声が効いただけではなく、改善しなければ怪盗に狙われるという後ろ暗い企業が多かったからでもある。


 そして次に怪盗が狙ったのは、より漠然とした問題だ。

 必ずしも悪いと言えないが、保守的すぎるせいで成長を妨げる日本人の心の問題。


 世界的には浸透しているキャッシュレスが日本では普及していない現状をどうにかする。

 保守的な現金主義を打ち破ることは出来ないかと考えたのだ。


 そしてこの事件で怪盗は、初の敗北を喫することになる。


「日本一の銀行ということで期待していたが、こんなものか」


 屋上のダミーにまんまとひっかかり、金庫室も無効化スキル程度の対策しかなされていない。


「無効化スキルなど、私も持っているに決まっているだろうが」


 怪盗が無効化スキルをどうやって潜り抜けたのか。

 単純である。怪盗自身も同じスキルを持っており、金庫室内の無効化スキルを無効化したのだ。それゆえスキルを自由に使うことが出来たのである。


「ぬるい。ぬるすぎる」


 天下の銀行のセキュリティがこんなものかとがっかりしていた怪盗だったが、思わぬ刺客が待ち伏せていた。


「(ただのお嬢様かと思えばやるじゃないか)」


 銀行頭取の娘、美月により追い込まれてしまったのだ。

 スキルを封じるリングは外すことが出来るが、SPが絶えず攻撃してくるため外すチャンスが来ない。このままでは応援が来て捕まえられてしまう。

 そうなってもなんとかなる方法があるにはあるが、それは最終手段だ。

 美月と会話しながら、怪盗は彼女に扮してこの場を脱出する方法を思いついた。


 だが、それも少年によって看破される。


「(何故見破れた!?)」


 変装は完璧だった。

 怪盗は美月が捕物に参加する情報を事前に入手し、今日のコーデを確認した。そしてスキル『コピー』を利用して同じコーデをアイテムボックス内に仕舞っておく。後は煙幕を張ったタイミングで腕のリングを解除し、スキル『変装』で瞬時に着替えるだけだ。

 スキル『変装』は姿形だけではなく相手の仕草や発言までも完全に真似ることが出来る。知らない事すら勝手に口にしてくれる便利なスキルだ。完全に同じ存在になったと言っても過言ではない。


 その変装をいとも簡単に見破られたことが驚愕であった。


「(聡明な親娘と、愛の少年か。存分に楽しませてもらったぞ)」


 彼らの存在は、つまらないと感じ始めていた盗みへの情熱を燃え上がらせることになった。






 銀行での戦いを終えて数日後、怪盗は敗北を糧として更なる成長へと繋げようとしていた。すなわち、敗北の理由を詳細に分析し、今後の活動へとフィードバックしようと考えていたのだ。


「流石に銀行を狙うのは自惚れだったな」


 盗むにあたり最難関であろう銀行ですら、今の自分ならば易々と突破出来るのではないか。その自惚れが今回の失敗を引き起こしたのではと怪盗は自戒する。

 実際、世の中を変革するという主目的よりも、難易度の高い盗みを成功させたいという気持ちの方が大きかったかと言われれば違うとは言えない。怪盗として活躍出来ることは快感であるが、本来の目的を蔑ろにしてしまったならば本末転倒だ。


「手口をまた考えなければならないな」


 ダミーとすり抜けを使っての手口はもう通用しないだろう。特にすり抜けは便利であるが、スキルレベルが中々上がらないため、使用時間などの制限が大きすぎる。東雲親子から情報を仕入れた警察は、その点も含めて対策して来るだろう。


 『並列思考』スキルを活用して盗みの手段を巡らせながらも、同時にテレビのニュースを見ながら次の浄化対象について考える。


『怪盗がまた予告状を送り付けてきました!』

「は?」


 すると、テレビから信じられない情報が流れ、まぬけな声を上げてしまった。

 怪盗は予告状など出していないからだ。


『ターゲットはXX政治家の邸宅に飾られているアンティークのカトラリーセット。予告状には某国からのスパイであるというニュアンスのメッセージが添えられています』


 そのまま食い入るように報道を見ていると、ルパン救世に似た出で立ちの人物が屋根の上に登場し、速攻で捕まっていた。


「なんだこれ」


 名乗りがマスコミまで届くことも無く、捕まりながら喚いているがその言葉も全く聞こえない。あまりにもお粗末だった。


 この日を境に、ニセルパンが大量に発生した。

 しかも彼らはあまりにも醜い主張を繰り返し、悉く逮捕された。

 街宣している政治色の強いものや、思い込みによりありもしない罪を喚くもの、しまいには単なる逆恨みで個人を口撃するものなど様々だ。


 東雲親娘にしてやられたとはいえ、社会悪を断罪する正義の義賊であり、しかも二回の盗みを成功したことでカルト的な人気があったルパン救世だが、偽物達の出現によりその評判は地に落ちた。


 怪盗が美月に対して行った行為は主に二つ。


 一つは銀行の信頼を失墜させて大切な家族を傷つけようとしたこと。

 もう一つは美月に変装して不安を煽ったことだ。


 怪盗が今一番大切なものは、日本を変革するために必要な怪盗の社会的評価だ。

 それが偽物の出現により傷つけられた。


 これが奏の因果応報?スキルがもたらした報いである。


 怪盗は東雲親娘だけではなく、奏にまで狙いを潰されたのであった。















「なるほど、これが因果応報の効果か」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ