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雲居藩妖怪抄  作者: 川端柳
第八幕——〇〇〇(??????)
282/303

68-(2) 

 伊織が着替えて客間に行くと、既に通されていた信乃だけが座っていた。彼女の前には茶卓のみ残され、すゞの姿もない。待っている間に飲み干した茶をすゞが入れ直しにいっているのだろう。あれだけ長々と捲し立てれば喉も乾くというものだ。


「お待たせしました」


「いえ」


 敷居の外から伊織が声を掛けると、信乃は一瞥しただけで視線を誰もいない正面上座へと戻した。先程若干力業な所がありながらやり込められたのがお気に召さなかったらしい。


 床の間に掛けられている幽霊画の掛軸に目をやると、少しだけ肩を竦めてみせ、すぐに元の姿勢に戻った。察するに伊織が来るまでずっとこの状態だったようだ。



 話すと言った以上、信乃をこのまま放置するわけにもいかない。



 伊織が部屋に入りあぐねていると、後ろからすゞが顔を覗かせた。手には湯呑が二つ乗せられた盆。伊織が部屋から出てきていることを見越して用意したようだ。


 すゞは伊織と信乃を交互に見て、窺うように伊織を覗き上げてきた。少し首を傾げ、何故中に入らないのか、と無言で問うてくる。



 なかなかに気は進まないが伊織は信乃の正面に座った。


 茶を出し終えたすゞはすぐに部屋を辞そうとしたが、信乃に引き止められる。隣に座るよう勧めてくる信乃と女中である身で同席できないと断るすゞ。信乃としては、そもそもすゞの不安を払う為に伊織へ詰め寄ったのだから、すゞがいなければ意味がないと思ってのことである。押し問答は続き、部屋の外で一緒に話を聞くことで落ち着いた。




 目の前の茶で口の中を潤し、正面にいる信乃を見遣る。何も言わないが、不満がある、と鋭い目つきで訴えている。ここまで至った以上、誤魔化した程度で彼女は納得しないだろう。


「これからする話は兵衛には内密にしてください。お約束いただけないなら話すことはできかねます」


「兄上様に? どうしてですか?」


「それについてもお話ししますが、まずは約束いただきたい」


「内容によります」


「でしたらお話しできません」


「何故そうなるのですか。兄上様に話すくらい」


「話を聞けば信乃さんも兵衛に言いたくなくなると思いますよ。ですので、お約束を」


 ふじやの女将との約束もあるので伊織もこの点は譲ることができない。どうしても伊織が折れないと分かると、信乃は渋々彼の約束に頷いた。


 これで兵衛に知られる心配は一先ず無くなる。漸く伊織は重たい口を開いた。


「とある舟宿に馴染みの飯盛女がいます。その女が店に入ってからだから、四、五年の付き合いになるかと」


「その方のお名前は」


「きく、と言います。そのきくが、近々どこぞの奴に嫁ぐそうなんです」


「それを阻止したい、と」


「違います。むしろ逆、歓迎してます。客と女の関係で、所詮は金の上の繋がり。馴染みとはいえそこまでじゃない」


 きくに思いを馳せ、伊織の口調が崩れる。


「では、もう逢えなくなるから、と別れを惜しんでのことですか?」


 信乃の問いで柔らかかった伊織の顔に影が差し、苦笑が零れた。


「そうだったら良かったんだが、残念ながら違います。きくの身請けが決まってから彼女の持ち物、櫛や簪といった小間物が失(な)くなるようになったそうなんです。その中には当然身請け先からの贈り物も含まれるでしょう。ですので盗まれたであろう小間物と下手人探しの為、舟宿に通うことになったわけです。あくまで奉行所のお役目ではなく個人的に受けた話ですが」


「どうして奉行所に届けないのですか?」


「あまり大事(おおごと)になって身請け話がご破算になるかもしてないことを案じた舟宿の女将から、内密にして欲しい、と言われまして」


「兄上様に言わないで欲しい、といいうのも、そういうことですか?」


「それもありますが、内密な以上、表向きは客として店に行っているわけで。調べるのに何日も掛かれば当然懐には相当な痛手となります。ですので、調べの間はかなり買う額を抑えてもらっているのです。もし兵衛がそのことを知れば」


「毎日入り浸るようになるでしょうね」


 伊織の言わんとしていることを察し、信乃が言葉を引き継ぐ。理由が分かり、ため息と共に肩を落とした。

 ただでさえ彼の舟宿通いを知らぬ者はいない兵衛だ。いつもより安価で行けるとなれば、調べ事そっちのけで女に現を抜かすだろう。妹である彼女にとってみれば他の誰よりも想像に難くない。


「どこから兵衛が聞きつけるか分からないから安易に口にもできず。まぁ、どうせ調べるのは一人ですることなので、誰にも言う必要がない、と思っていただけとも言えますが。結果要らぬ不安を煽ったようで。すゞ、心配させてすまなかった」


 信乃から体の向きを変え、すゞに頭を下げる。気持ちとしてはすゞだけでなく、付喪神たちに向けてもいた。


「事情は分かりました。ですが、どうして旦那様がなさらなければならないのですか?」

お読みいただきありがとうございます。


このところ変な寝方が癖になっていて少し困っています。


夕食前、風呂上がりに少し横になり、気付いたら日付を跨ぐ前後。夕飯は食べ損ね、短時間とはいえ深く眠った後なのですぐには寝付けず、4時、5時までだらだらとしてから漸く眠り、3、4時間後には起きなければならない。

夜、というより朝5時半まで寝れなかった日は寝るのを諦めてそのまま起きていた、なんて日もあったり。

何とも不規則な睡眠リズムながら、睡眠時間だけは確保されているのであまり体の不調をきたす訳でもなく、ただ日中の寝不足が否めないというだけ。

じわじわとHPは削られていたかもしれませんが。


夜にしっかり眠るのは大事なんだと気付くここ数日でした。


そして、仕事で早起きしなければならない日、凄くしんどいんです。これが。

明日、まさに早く起きなければならない日なので、今から寝られるかどうかから心配です。

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