第43話 青龍〔山滝次郎側〕
蒼泉目線です。
妾が生まれたのは創世記237年のことだっただろう。
その世界ができて三億二千年後だった。
まだ母様がいて、父様がいて、兄様も妹もいっぱいいた。
妾たちは水を司る龍であり、使命は世界の調停だという。
母様に言われたときはまだ子供故に理解ができなかった。
その二十日後に信の儀を行いどのような物質と近しいのかを見る儀式がある。
妾は青龍の中でも特別存在感のある水樹に近しいようだった。
これは青龍にとっては名誉なことであり、生涯夫婦のように付き添っていかなければならないらしい。
家族は大騒ぎだった。
妾も誇らしかったし、なにより母様と父様に親孝行ができると考えたのだった。
務めを果たすには星王に挨拶の上色々な儀式が必要だと聞いた。
務めは先任者に聞けばわかるらしく、青龍の中でも数少ない名のある者に教えてもらうこととなった。
これが地獄のようにキツかった。
でも、母様と父様に褒めてもらえる一心で泣きながらも頑張ったものだ。
厳しい教えもあって近年稀にみるらしい若務めになった。
私はもう終わる…。と言い残して水樹に消えて天に逝った先任者のためにも妾が務めを果たさなくてはならない。
あの時はまだ崩壊などすると思ってなかった故嬉々として務めを果たしたことを覚えておるよ……。
妾がもう水樹を引き継ごうとした時だった。
人間が『真化学』に手を出したらしく崩壊が始まった。
『真化学』とはこの世界の根源であり、手が出せるものではない。
木の実が地面に落ちるのと同じなのだ。
木の実を地面に置くと同時に空に飛ばされる現象が起こらないのと同じで、この世界の常識であり理なのだ。
人間ごときが手を出していい代物ではない。
星王も昇華するために籠られているし、妾は水樹を拠り所にしているために動けない。
崩壊を防ぐものは誰一人としていなかった。
妾は引き継ぎを止め、水樹を妾に定着させる。
こうすることにより崩壊が起こっても多少なりとも残るはずだ。
妾の命で蓄えた『真力』は莫大である。
『真化学』で生み出された崩壊は『真力』で防げるのだ。
成功するかは分からない。
長老の壁画に書いてあっただけなのだからな。
実践した者などとうの昔に亡くなっているだろう。
そうして手放したはずなのだ。
この世界はな。
何の因果か、またこの世界に根を張れることは感謝するぞ。
次郎。




