第32話 交渉
傭兵視点の次に主人公視点です。
あと一話傭兵視点のみの話を挟もうと思ってます。
今回はちょっと長いです。
でわ、第32話をどぞ!
顔に当たる日差しで目が覚める。
俺は……。
そうか黄金酒を手に入れて、魔物に出くわさないようにこの教会に来て気を失うように眠りについたのか…。
意識がはっきりしていく。
魔物除けのお香は未だ炊いてある状態だ。
結構続くというのも愛用にする理由の一つだ。
さて、課題は船の確保だ。
木を切り崩して船を作ろうにも知識が足りなければ、安全に木を切れる保証もない。
周りに魔物がいないかどうか確かめる。
昨日の猿がいたりすると、ここを拠点にしたはいいが身動きが取れなくなる。
外には魔物の気配は感じない。
ひとまずは安全とみていいだろう。
そう安心していた俺に背後から声をかけられた。
「おじさん、ここから出たいの?」
「っ!?」
この少女はどこから現れた?
この神殿の中には魔物の気配どころか俺しかいなかったはずだ。
今俺は外を確認するため俺の正面には外がある。
その俺の背後ということは中から出てきたということになる。
この少女はいったいどこから……?
「ねえ、おじさん。帰りたいの?」
「あっああ…」
「帰る方法ならあるよ」
「何!?」
今この少女は何て言った?
帰る方法がある?
この一度入ったら死ぬともいわれる【死の淵】から?
待て。この少女はいったい何者なんだ?
この島で生きてきたにしては服がきれいすぎるし、身を守るための武器の類も見つからない。
この島の主……とか…?
ははは…まさかな。
「この島から出れるよ」
「本当か!!」
「うん。おじさんが私の言うことを聞いてくれたらだけど…」
ほら来た。うまい話には必ず裏がある。
まあ命を捧げろとかではない限り大丈夫だが…。
「条件か…。なんだ?」
「おじさんの持ってるそのお酒をこことは違う迷宮に持っていってほしいの」
「お酒…黄金酒のことか!待て…こことは違うと言ったな?ここにもあるのか?」
「うん」
「そうか…。それさえ持っていけば俺はこの島から出れるのか?」
「うん」
「本当だな?」
「うん。受けてくれる?」
「いいだろう。だが、もう一度汲んできてもいいか?家族や友人にも配りたいんだ」
「じゃあお猿さんたちに言っとくね」
「ん?ああ…」
おいおい。あの猿に命令を出せるってやっぱりこの子この島の主なんじゃないか?
まあいいか。これで安全に黄金酒を手に入れることができる。
「ありがとうな。お嬢ちゃ…ん?」
振り返るとそこには最初からいなかったように少女の姿はなかった。
どうなってんだ……こりゃあ…。
俺がまだ寝ぼけてんのか?
まあ酒を汲みに行けば分かるか…。
俺は昨日黄金酒の滝のあった場所まで一応警戒しながら歩いた。
そこにはおよそ三十匹ほどのサルの群れがいる。
『騙された』そう思ったのも一瞬だった。
猿が滝に続く一本道を作るように道を開けたのだ。
本当に行って大丈夫なのか、両側から襲われないかとか考えたがそれは杞憂だった。
無事に俺は黄金酒を四つの革水筒に入れることができ、神殿に帰還した。
神殿に帰ると少女の姿がある。
待っていたのだろうか。
「あっおじさん。船の準備ができたよ」
「そ、そうか。ありがとう」
「じゃあお酒頼んだよ?」
「分かった」
「はいこれ」
少女から腕輪のようなものを受け取る。
薄緑色の平たい結晶が付いているようだ。
何だこれは?
「これはね、マスターがお酒を届けるための場所がわかるようにって。渡しといてって」
「マスター?迷宮主のことか?」
「うん」
「君ではなかったのか…」
「?」
「いや、なんでもない。それでこれはどう使えばいいのだ?」
「あのね、その迷宮に近づくと光るの。赤色に光ったらいいの。それ以外は違うやつだよ?」
「わかった」
「じゃあ船に案内するね」
「よろしく」
こうして俺は国宝級の魔道具を持ち、黄金酒を届ける目的とともにこの島を出ようとしていた。
船に案内してくれるそうだが、それらしき影は見つからない。
この海域を出るとなるとそれなりに大きいはずだが…。
「これだよ」
「なっ!?」
そこで見たものは漁師たちが使うような小さな船とそこにつながれている羽の生えた魚。
俺の傭兵人生の中でも見たことのない魔物だ。
「こいつは…?」
「この子は浮魚っていうモンスター。おじさんたちが乗ってた船なら五匹もいれば泳げるよ。この子たちに引いてもらって近くの大陸に降ろしてもらうの。降りたらこっちに勝手に戻るから心配はないよ」
「こんな魔物がいるのか…」
「魔物じゃないよ?モンスターだよ」
「もんすたー?」
「うん。自然に生まれるのが魔物で、マスターが作ったのはモンスターだよ」
「そうか…もんすたー…か」
「うん!じゃあね!おじさん」
「ああ。ここまでしてくれてありがとうな」
「またね」
俺が船に乗ったことを確認して浮魚が空を泳ぐように進んでいく。
この魔…もんすたーが浮くとこの船も一緒に浮くらしい。
乗り心地は船や馬車と比べてはるかに良い。
これだけで商売できそうだ。
そんなことを考えながら俺は帰途に就いた。
■主人公視点■
はぁ…。
ようやく斎藤さんにお酒を届けられる……。
催促のメールが来て大変だった。
この件を伝えなきゃ…。
「おじさん行ったよ。どう?未菜ちゃんと出来た?」
『おお出来てた出来てた!えらいえらい!』
「えへへ」
なぜこんな危ないことを未菜にやってもらったかというと理由は三つほどある。
一つは未菜にお手伝いしたいと言われたからだ。
罠の件で十分に助かっているのだが、お手伝いがしたかったらしい。
二つ目は俺の存在だ。
俺は傍から見ると立派な魔物だ。
異形種だと言っても迷宮主には変わりない。
何度も言うが、完全なる討伐対象だろう。
そうすると敵対し交渉どころではなくなるだろうと考えてのことだ。
三つめは相手の迷宮についての印象だ。
嫌々未菜が従っているわけではないと分かってもらうためだ。
今後どうなるか分からないからな、こういうとこから信用されないと…。
これでお酒の件は完了した。
ああ…しんど……。
主に斎藤さんのメールが……。
あの人大和から来ているからな…。
こういうのが珍しいのかもしれない。
が、人のことも考えてくれ…。
さて、あとやらなくちゃいけないことは…?
そうだ。
魔族についてだ。
誤字脱字や矛盾点などが見つかりましたらどんどんお願いします。
評価とブクマ出来ればお願いします!




