第22話 冒険者編 壱『紅の爪』[下]
冒険者編 壱はこれで完結です。
次からは元に戻ります。
でわ、第22話をどぞ!
今日から調査が始まる。
入る順番は冒険者ギルドの方で決められている。
一番目は『霧の信者』。
アルテナ神の信者と言っているだけあって聖属性・光属性の使い手がたくさんいる。
今回の迷宮の場所は町の中央部であり神殿と離れた場所にある。
神殿は建てられているだけで魔素を留まらせない効果が付与されていると聞いたことがある。
どこの者によって付与されたものかはいまだ分かっていない。
神殿の聖書にはアルテナ神により守られていると書かれているらしいが胡散臭い。
二番目は『女性愛集団』。
ヘンタイだがPTのバランスは良く結構強いモンスターが出現しても対処可能だと思う。
Bランク冒険者になっただけはあるということだ。
最後は俺たち『紅の爪』だ。
慎重さが功を奏したのか二PT行った後をついていく形となった。
自然発生型ではなることは少ないが意志所有型では後ろから奇襲されて全滅したPTも少なくない。
戦場でいうところの殿だ。
どれだけ大切か分かるだろう。
三PTにはそれぞれ『地図化』というスキル持ちがいる。
俺のPTではラウが担当する。
これは迷宮だけでなく森の中で探索をしていると必ず必要になってくるスキルだ。
持っていないだけで命の危機にかかわることもある。
本当に俺たちはラウ無しでは動くこともままならない。
別にラウが好きとかではないからな!?
男同士ではそんなこと出来ないからな!?
それに俺が好きな人はユ……。
「おいガウス!俺たちの番になったぞ!」
「あ、ああ……分かった」
「まだ疲れが取れてないんじゃないの?大丈夫?」
「大丈夫だ。問題ない」
「でたよ。夫婦…」
「断じて違う!!」
疲れが出ていると勘違いされたか…。
危ない危ない……。
「どうしたの?行かないの?」
「ラウ早く行きましょう。あんな奴ほっといて!」
「で、でも…」
「すまない。行こう」
こんなこともあるが俺たちにとっては日常茶飯事だ。
さっさと調査を終わらして帰りたいものだ。
そう考えてた時もあった。
どうしてこうなった。
何故?
何故?
何故だ?
何故ユンナが…?
俺たちは…。
時は数時間前に遡る。
俺たちは迷宮調査を何事もなく突き進んでいた。
こんな簡単な迷宮に五十人もやられたのか不審に思ったほどだった。
こういう迷宮は初めてだった。
どこを見ても敵はレイスと呼ばれる霊体のモンスターとウィスプと呼ばれる火の玉のみ。
どれも物理攻撃無効のモンスターだが魔法攻撃、その上初級で沈むモンスターだ。
こんなモンスターのみに五十人が犠牲になったとは思えない。
その時だった。
前方から声が聞こえる。
誰かの叫び声だった。
「っ!!?ラウ!?」
「リーダー!!ここから離れてください!」
「なんだよ…。どうしたんだ…?ラウがそんなに慌てるとこ初めて見たぜ」
「早く!!退避してください!!」
「どうしたってのよ。敵なら私が凍らしてやるわ!!任せなさい!!」
「ルーラン!!やめて下さい!早く退避を!!」
「くっ!!退避だ!総員退避!!」
ラウの声とともに戸惑いながらも一目散に俺たちは第1階層の安全区域に戻った。
何かあったんだな…。
あのラウがこんなに恐慌状態になるとこなんて初めて見た。
「リ、リーダー…。報告に行きましょう…」
「どうしたんだよ…俺はまだいけるぜ…!!」
「ダメです!!報告が先です!!」
「なんだよ!!ビビってんのか!!」
「ダメなんです!!説明は後でしますから!!今は早く安全な地上に!!」
「まあまあ話を聞くだけでもいいだろう?ラウ?」
「……………分かりました。でもこれを聞いたら戻ってくださいよ?」
「分かった。約束する」
「おい!!俺はまだ!」
反論するフォンを遮るように話し出すラウ。
「僕があの先で見たのは惨劇でした。この迷宮に入っていった冒険者五十人はモンスターに殺されたわけじゃなかったんだです」
「どういうことだ?まさか………」
「どういうこと…?」
「リーダーは分かったようですね。そうです。仲間割れですよ…。僕が見た光景は仲間の魔術師の人が自分の杖や短剣で仲間の背後から滅多刺しにしているところでした…」
「そんな…」
「どうして…」
「恐らく今まで倒してきたモンスターに関係があると思います。レイスはもともと恨みや憎しみを死後も持ち続け成仏できなかった者たちの成れの果てです。その者たちを倒し続けたためレイスが持っていた怨念が魔術師たちに取り憑き暴走したのだと思います」
「そんなこと聞いたこともないわよ?」
「そうですね…。でもここはあり得ないことも起き得る場所――迷宮なんですよ?」
「でも『浄化』を掛ければいいんじゃないの?」
「いえ、『浄化』に効果があるのであれば『霧の信者』も殺されていることに説明がつきません。あの人たちは入ってからずっと浄化し続けていますから」
「そう…」
「ならこれ以上進むべきではないな…」
「そうね…。私も賛成よ…アンタはどうすんの?フォン」
「止めとく。まだ死にたくないしな」
「決まりだ。帰るぞ」
「ああ」「ええ」「うん」「……」
『逃がさないよ?』
「逃がさないわ」
「え?」
その声にはラウのみしか反応できなかった。
突如背後から襲う焼けるような痛み。
敵襲かと思っても痛みで動けない。
うつ伏せになり叫ぶことしかできない。
目線だけでも後ろに…。
「あ…?」
目の前に落ちてくる三つの首。
苦悶の表情をしたラウ。
泣いて目が腫れているルーラン。
さっきまで話していた釈然としない顔のフォン。
三日月のような笑い方をし笑顔で立っているユンナ。
その手には俺がBランク祝いにあげた短剣が握られている。
「何で…?」
「さっきの話聞いてなかったの?」
「ぐっ!!」
「ラウが言ってたじゃない。レイスを倒してた者からこうなるって…」
「ユンナお前…意識はあるのか…?」
「私はあるわよ。暴走といっても仲間割れだしね。但し、この娘はもう無理よ?」
「なっなんだと!?」
「私たちの怨念が染み付いているのよ?助かるわけな…い………。くそっ…まさか…!!」
「ユ、ユンナ!!?」
「ぐうっ!!?に……て…わた…のこと………て!」
「え?」
「私のことはいいから逃げて!!!」
「わ、分かった!!」
俺はその場にユンナを置いて逃げ出し、地上に出て冒険者ギルドに駆け込み、詳細を事細かく説明した。
背中は焼きただれていたがそんなことはどうでもよかった。
説明し終えた俺は気を失った。
『ふふふ…。【怒り】とは何か…教えてもらうよ…。異世界人の皆さん?』
誤字脱字や矛盾点などが見つかりましたらどんどんお願いします。
有栖川君の迷宮でした。鬼畜は一人だけじゃないですよ。




