表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『1魔貨の聖騎士 ― 自分を1魔貨と定めたCEOを、悪魔は契約で管理する』  作者: 暮夜すと
【シーズン2:本決算発表会編】Q1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/315

『静かな朝、魔法と帳簿と』③

第3部:午後の白銀と小さな日常


 午後の柔らかな光が、雪に反射して室内を白く満たしていた。

 温かい室内の中、寝台の上でヴァルプスは膝を抱え、所在なげに目を閉じる。自分はいま確かにレオンの魔紋が刻まれているはずなのに、無意識に首もとを確かめる手が触れる。


「……なんだか、あんまり実感がない」


 小さな呟きに、レオンは書類から目を上げず、静かなペンの音だけで応えた。


「それでいいんだ。実感は、後から数字がついてくるものだから」


 万年筆を置き、椅子をゆっくりと彼の方へ向ける。


「昨日までの君の役目は終わった。……いや、私が終わらせた。

 だから、もう君が何かを背負う必要はない」


 ヴァルプスが指先でブランケットの端を小さく握りしめるのを、レオンは見逃さない。立ち上がり、隣へ歩み寄る。寝台の端が静かに沈み、レオンは隣に腰を下ろした。膝上までブランケットを引き上げる動作は、壊れやすい硝子細工を扱うように慎重で、それでいて迷いがない。


「明日あるのは、事務的な後処理だけだ。

君の名前を、この現世の台帳から『完全に自由な存在』として再登録するための、単なる整理だよ」


 そっと肩に手を置く。重みを感じさせず、しかし確かな境界線を伝える。


「書類はもうほぼ完成している。……怖い役は、全部私が引き受ける」


 ヴァルプスがふっと深く息を吐く。肩の力が、レオンの指先の下でゆるやかに抜けていく。


「午後は少し立て込むから、昼は外で食べよう。

 ……そのあとは、君の好きなことをしていい」


 ヴァルプスはゆっくりと目を開け、目に小さく笑みが戻った。

 レオンは短く頷くと、机へ戻る。その背中に、ヴァルプスは安心したように体を沈める。


「好きな、こと……」


 小さな呟きに、レオンは軽く微笑む。

 ヴァルプスの肩越しに見える雪景色は、凍てついた世界の中で唯一、二人だけの柔らかな時間を映していた。


 背後でヴァルプスが再び目を閉じ、深い安息へ沈んでいく気配を感じながら、レオンの視線はすでに明日――そしてその先にある「十月十日」の計算へと静かに沈んでいった。



※2026/05/20 大幅修正をしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ