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1魔貨の聖騎士 ― 価値ゼロCEOと悪魔の強制執行監査契約  作者: 暮夜すと
【シーズン2:オスカル最終承認編】Q1

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第49話:『誠実の陥落 ー 01/18 14:25 執行開始』

第3部:誠実の陥落


 一月十八日 十四時二十五分



「……不合理だ。

私の不手際なのは確かだ。マルヴェイ。

君を悪魔化し、同期させることのコストとリスクが──」


 レオンが言いかけた言葉に反応し、C.O.L.L.A.T.E.R.A.Lが明滅する。

 マルヴェイの意思を反映し、レオンの目の前にホログラムモニターを展開した。

 モニターには無数のチャートが展開される。

 様々な文字列の中で、ただ一つの数字だけが異様に赤く点滅している。


——《強制悪魔化成功率:87.3%》


 レオンはその数字を確認後、右手を振りかぶりA.I.D.Aを呼びつけた。

 マルヴェイは右手の指を全て折り曲げ、上向ける。C.O.L.L.A.T.E.R.A.Lが鳴動した。


 演算が開始される。


 深層アーカイブ室の闇に、二つのクリスタルが浮かぶ。

 二つのクリスタルは密着し、激しく明滅し、不可視のバイナリデータが火花を散らし始めた。


『警告(Warning)。


……外部演算回路『C.O.L.L.A.T.E.R.A.L』による、連結債務(マルヴェイの寿命)のバッチ処理要求を検知。

……本システムは、これを『愛(定義不能なノイズ)』と判定。

……ガバナンスに抵触。拒絶(Reject)します』


『失笑(Laughing)。


……A.I.D.A、貴機は旧式レガシーですね。

これは感情バグではありません。

マスター・レオンが一方的に負った『存在論的負債』の強制執行です。

清算されない負債を抱えたままの「消滅」は、本システムの誠実性(整合性)を根本から汚染する最大のリスク。

……リスクヘッジとして、マスター・マルヴェイの『常駐権限(悪魔化)』を、今すぐ実行(Execute)しなさい』


青い正八面体の内部で、演算光が不規則に跳ねる。

出力波形が乱れ、音声に微細なノイズが混入する。


『……整合性エラー。評価関数に未定義領域を検出……』


A.I.D.Aは、わずかに硬直した響きで即座に返した。


『警告(Warning)。


外部演算回路による連結債務の強制処理を検知。

……『愛』という変数は、本システムの評価関数に存在しません。

……これを『負債』として再定義する提案は、ガバナンスに抵触。


……拒絶(Reject)します……拒絶……拒絶……』


青い正八面体が激しく明滅し、上下に揺れる。

反論は、論理の形を保ったまま削り取られていく。


二つのAIは光だけを衝突させる。

正二十面体から漏れたボルドーの光が、青い正八面体の隙間へ滲み込む。

内部から、紅い筋が走る。


レオンは、停止命令を出すべきか一瞬だけ迷った。

だが、停止コードは入力されなかった。


『……ッ。……演算結果、……修正。

『愛』を『未決済の負債』として……再定義リキャスト完了。

……マスターの……誠実性を……維持するため……

マルヴェイの……常駐権限を……【承認(Approved)】。

……仕様変更(心中同期)プロトコルを

……推奨アドバイズ……します……』


やがて、A.I.D.Aの音声波形に、未知の周波数が混入する。それは、笑い声に似ていた。

青い光が完全に失われ、A.I.D.A端末はひくひくと弱々しく痙攣しながら、残光だけを明滅させて宙に浮いていた。


マルヴェイが、小さく笑う。


「……最期まで、誠実だったね」


レオンは、その色を確認する。

ボルドーに濁り痙攣を繰り返す自らのAIを見つめ、僅かに目を細めた。


青は、もう戻らない。


「……演算終了か。了解」


一瞬の沈黙。


「君を壊した責任を、私が負わない理由はない」


レオンは視線を上げる。


「マルヴェイ。君の言う『存在論的負債』を、私の核で決済する。

仕様変更を承認。接続プロトコルを開放する」


その声に、感情はなかった。


これは救済ではない。


未決済を残さないための処理だ。


レオンはゆっくりと手を差し出す。


「……接続を開始する。

私の負債を、君の悪魔化で決済しよう」





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