『案件重複拒否:専務バルナザールの鉄血承認』③
第3部:シュレッダーと親心
バルナザールは通信を切ると、宙に浮いた「移管依頼書」を忌々しげに弾いた。
依頼書は魔導式シュレッダー『煉獄の業火・オフィスエディション』に吸い込まれ、断末魔のような火花を散らして光の塵となった。
「……やれやれ。
期待の資産が、ようやく安定化しそうなときに……まったく、無粋な連中だ」
バルナザールは、ヴァルプスの報告メッセージに『既読(承認)』をつけ、静かに返信した。
◆
【Re:件名:最重要資産・レオンの検収および現況報告】
報告は受理した。外圧は握りつぶした。
お前は引き続き、その「契約者インフラ」の整備に集中せよ。
……追伸。調律は対象を傷つけぬ範囲で行うこと。加減を覚えるのも上級業務の一部だ。
◆
「……ふむ。確か、データログには『長年レオンを監視し続けていた執念深い身内がいる』とあったが。
ヴァルプスの執着と、どちらが勝るか……」
バルナザールは椅子を回し、窓に向かいながら顎に指を添える。
バルナザールが指を上向けて鳴らすと、オフィスの特殊硝子が薄く煌めく。そして現世の宿屋から見える夜景を映し出した。
地獄の摩天楼とは対照的に、ランプの火が淡く雪を照らす静謐な世界。
本格的に試験運転を始めた管理官が、その世界の片隅で「契約者としての自由と安寧を保持された生活」を守っている。
バルナザールは北国の雪景色を愉悦の混じった笑みで見守り、静かに目を細めた。
※本作は、noteにて先行公開していた記録のアーカイブ版です。
※2026/05/21 大幅修正をしました。




