表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1魔貨の聖騎士 ― 価値ゼロCEOと悪魔の強制執行監査契約  作者: 暮夜すと
【シーズン2:オスカル最終承認編】Q1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

121/166

第116話:『黄金の鼓動 ー 01/27 6:10 執行開始』

第1部:黄金の鼓動


「……A.I.D.A、タイマーをセットして」


『了解、マスター・レオン。

 空腹による集中力低下を考慮し、最短の負荷を設定します』


 一月二十七日、午前六時十分。


 世界経済の心臓部を動かす男は、夜着のまま薄いマットレスの上で静かに、そして厳かに伏せた。

 腕に力を込め、一度だけ、ゆっくりとマットレスを押し返す。


『完了。

 ……目標達成を確認。心拍数の安定、および自己肯定感の微増を検知しました。

 いいかんじです、マスター・レオン』


 青い正八面体クリスタルの横に、ホログラムの親指がぽんと表示される。

 それが消えると同時に、クリスタルがくるりと宙を舞った。

 レオンは顎に手をあて、満足げに頷いた。


「……フッ。今日という日は、この一歩から始まるのだ」


 その背中に、クローゼットから最高級のスーツを取り出したヴァルプスが、凍てつくような声を浴びせる。


(……一回やるだけなのに、なぜこれほど物々しい……)


 ヴァルプスは誇らしげな視線を向けるレオンにスーツをあてがい色合いを確かめながら目を細めた。

 深夜三時過ぎ、演技訓練を終えて寝室に滑り込んできたレオンに宥められ、流されるまま添い寝をして朝を迎えた。

 その納得しきれない思いが、レオンの笑みに難癖をつけたくなる。


「一歩ではなく一回ですね。

 レオン、その無意味な儀式が終わりましたら、その栄養ゼリーを胃に収めてください」


 レオンは超高効率ゼリーを、最高級のワインでも味わうかのような優雅さで喉に流し込んだ。


「……ふむ。効率的だね。

 ……余韻が全くないのが、このゼリーの美徳だ」


 実際には、味覚の受容体が「無」を検知して抗議の声を上げているが、彼はそれを無視した。


「本日の予定は十一時よりLVAにて健康診断。終了は十三時予定。

 担当はDr. ゼロスです」


 ヴァルプスが淡々とスケジュールを読み上げる。


「検診データは、テーラー・バベルへの生体データ転送……。

 ……そして、国家監査官に『鋼の意志を持つ健全なCEO』という虚像に加工して渡します」


 ヴァルプスは、レオンの喉元で完璧なノットを作り上げると、満足げにその襟元を叩いた。


「おめでとうございます。あなたの鼓動一つが、今朝も数千万の経費に化けましたよ」


 レオンは空になったゼリーのパウチを指先で弄び、静かに笑った。


「……私の心臓は、随分と金食い虫だな。

 上場審査(IPO)の際は多忙を理由に「後日受診」として押し通したから……正確に測られるのは久しぶりだな。

 ……で、ヴァルプス。今日、この高価な鼓動を『不測の事態』から守るのは誰だ?」


 ヴァルプスは視線を端末から外さず、淀みなく答える。


「本日の随伴エスコートは四名。部隊より、K、L、B、そしてGを選出しました。

 既にLVAの地下駐車場、および六十階の緊急脱出口を完全掌握させてあります。

 施設の基幹ネットワークは、すでにCISOマルヴェイが掌握していると連絡を受けています」


 レオンの眉が僅かに動く。ヴァルプス部隊の中で、「逃がす」ことに関しては右に出る者のいない者たちだ。


「……彼らか。久しぶりに顔が見れるね」


「そうですね。

 あなたが空腹のあまり情けない声を上げる前に、彼らがあなたを物理的に『隔離』し、事態を収束させるでしょう」

 

 ヴァルプスが冷たく微笑む。その言葉と同時に、部屋の影が僅かに揺れた気がした。



※健康診断回です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ