表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/70

そういう診療科ではない!(フィクション)

研修医が来てから続いた急変と死。

誰も声に出さなかったが、病棟全体が“異変”を感じていた。

A大学病院血液内科。


七月の病棟は、珍しく穏やかな日々が続いていた。急変も少なく、外来も落ち着いている。患者たちの経過も比較的安定し、スタッフの間には「こんなに静かな日々があるなんて」と笑顔すら見られた。


しかし、ある二人の研修医が病棟に配属されてから、空気は一変した。


研修医の到着


「今日からよろしくお願いします!」

明るい声で挨拶したのは、背の高い研修医と、眼鏡をかけた少しおとなしい研修医。


彼らは元気いっぱいで、看護師たちにも丁寧に頭を下げた。

「若い人が入ると雰囲気も明るくなるね」


B看護師がそう言ったのは、ほんの最初の一日だけだった。


次々と起こる急変


彼らが来て三日目の夜。


普段安定していた白血病の患者が突然の呼吸困難を訴え、酸素飽和度が急激に低下した。スタッフ総出で対応し、一命はとりとめたものの、その翌日には別の患者が急変した。


「立て続けなんて珍しいな……」

無雑医師が眉をひそめる。


A看護師も、記録用紙に震える手でペンを走らせながらつぶやいた。

「ここ数週間、何もなかったのに」


そして、その夜。二人の研修医が深夜のカンファレンスで口にした。

「血液内科って、やっぱり厳しいですね」

「亡くなる患者さんがこんなに多いなんて……」


その言葉が妙に胸に残った。


止まらない「連鎖」


数日後、病棟ではさらに二人の患者が続けざまに亡くなった。

片方は回復傾向にあった患者で、誰もが「もう少しで退院だね」と話していた矢先だった。


「……偶然にしては重なりすぎる」

B看護師が夜勤中に小声で言う。


「でも、病棟って時々こういう連鎖あるよね」

Aも同意はしたものの、心のどこかで「違う」と感じていた。


まるで、何かが“引き金”になっているような。


看護師たちのざわめき


「ねえ、気づいた?」

ある夜、C看護師がナースステーションで声を潜める。

「二人が病室を回った後って、不思議と患者さんの容体が悪くなるのよ」


「やめてよ、そんな言い方……」

Aは苦笑しつつも、心臓がざわめくのを止められなかった。


偶然なのか、それとも。

D看護師は黙ってカルテに記録をつけ続けていたが、ふと顔を上げてこう言った。

「……そういうもの、引き寄せる人っているから」


誰も返事をしなかった。


そして


研修医が配属されて一か月。


病棟は、かつてないほど重苦しい雰囲気に包まれていた。

亡くなった患者の数は、普段の倍以上。


「たまたま」「症例が重なった」と言い聞かせても、皆の胸に不気味な感覚が残った。


やがて二人の研修医は次のローテーションへ移動する日が来た。


「短い間でしたが、ありがとうございました!」

元気に頭を下げる二人を、スタッフたちは笑顔で見送った。


その日の夜。

病棟は嘘のように静まり返った。

急変もなく、亡くなる患者もいなかった。


「やっぱり……偶然だったのかな」

Aがぽつりとつぶやく。


Bは小さく笑った。

「そういう診療科じゃない、ってことよね」


けれど――その場にいた全員が、偶然という言葉に心から頷くことはできなかった。


まぁ、これは・・・フィクションなのか、ノンフィクションなのか・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ