個室トイレ(A大学病院・血液内科 無雑医師の記録)
病棟勤務の合間、私はいつもの医療従事者専用トイレへ向かった。
このトイレには奥に一つだけ個室がある。なぜかいつも閉まっていて、誰かが使っている様子はないのに、鍵がかかっていることが多い。不思議な個室だ。
その日も、小用を足している最中、閉まっていたはずの個室のドアが――カタン――と開く音がした。
振り向くと、中は空っぽ。ドアは半開きになっている。
(あれ? 誰か出た?)
そう思ったが、足音はしない。なのに、なぜか「二つの気配」が同時に遠ざかるような感覚があった。背筋に冷たいものが走った。
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数日後。
また同じトイレ、同じ閉まった個室。
用を足していると――カタン――と音がし、ドアが開いた。
今度は確かに誰かが出ていく足音があった……ような気がする。しかしまた、二つ分の足音が重なったようにも聞こえた。
「……気のせいだよな」
そう自分に言い聞かせながらも、心臓が落ち着かない。
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三度目の遭遇は、当直明けの早朝だった。
閉まっていた個室。用を足しながら、例の音を待ってしまっている自分がいた。
――カタン。
やはり開く。
斜め後ろをそっと見ると、そこから出ていく二つの影が、ゆっくりと廊下へ消えていくのが見えた。
私は固まった。
(やっぱり二人……でも、足音はひとつ分しか聞こえない……)
全身の毛穴が開くような感覚の中で、個室の中をのぞく。そこには……車輪の跡がくっきり残っていた。
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廊下に出ると、A看護師が笑って声をかけてきた。
「先生、それ多分、H先生ですよ」
「……H先生?」
「うん、車椅子を使ってるでしょ? それで、移動の時はいつも助手さんとか誰かが押してるから、二人分の気配がするんです」
後ろからB看護師がにやっと笑いながら付け加える。
「しかも助手さん、トイレの鍵を外から開けられる裏ワザ持ってますからね」
私は胸をなでおろしつつも、ちょっとだけホラーを信じた自分が恥ずかしくなった。
どうやってコミカルにするか考えた末の話ですが、トイレの個室から2人分の気配がして、出ていくトイレがある・・・という事実に対して、ホラーというよりはコミカルに落とせないかとchat-GPTと会話してこの形にしてみました。車椅子だったら2人分の気配がしてもおかしくはないかなと。
まぁ、「あれ?2人いる?」という気配だけ感じることが多いので、実はホラーな話かもしれません




