連鎖(市中病院・無雑医師の記録)
冬の夜は、病棟全体が深い眠りに包まれる。窓の外には粉雪が舞い、外灯の明かりに照らされて静かに降り積もっていく。遠くで救急車のサイレンが細く長く響き、その音が近づいては遠ざかるたび、看護師たちは一瞬耳を傾ける。当病院の内科病棟も例外ではなく、点滴の滴る音とナースコールの電子音だけが静けさを破っていた。
私はその夜、定期巡回を終えたばかりだった。顔なじみの患者たちは、それぞれ穏やかな表情で眠っている。冬は空気が乾燥し、喘息や肺炎で入院する患者が増える時期だ。廊下は暖房の効いた空気がほんのりと漂い、ところどころで消毒液の匂いが鼻をかすめる。
ベテラン看護師のSさんが、記録を付けながら「今日は落ち着いてますね」と微笑んだ。彼女はこの病院に20年以上勤める頼れる存在で、急変時の冷静な対応力には何度も助けられてきた。今夜も何事もなく朝を迎えられるだろう——その時まではそう信じて疑わなかった。
深夜2時過ぎ、突然ナースコールが激しく鳴り響いた。緊急ボタンの赤い光が点滅し、廊下に緊張感が走る。駆けつけると、長年入院していたTさんがベッドの上で呼吸をしていなかった。彼は末期の心不全を抱えていたが、昼間はまだ会話もでき、食事もとっていたはずだ。
看護師が胸骨圧迫を始め、私は気管挿管の準備を指示する。モニターに映る波形は心静止。アドレナリンを投与し、心臓マッサージを続けるが、脈は戻らない。午前2時34分、死亡を確認。
死は医療現場では避けられない現実だ。それでも、昼間に「今日は暖かいね」と笑っていた姿を思い出すと、あまりの落差に胸の奥が冷たくなる。Sさんは無言でシーツを整え、そっと目を閉じさせた後、小さく「始まりかもしれませんね」と呟いた。その声は、妙に重く響いた。
Tさんの死からわずか3日後、隣のベッドのMさんが突然の呼吸困難に陥った。昼間は新聞を広げて政治談議をしていたほど元気だったのに、夜になると急激に酸素飽和度が下がり、口唇は紫色に変わっていた。酸素マスクを装着し、吸入薬を投与するが効果はなく、意識は急速に遠のいていった。
「ドクター、脈が……!」
必死の処置も虚しく、午前4時、死亡を確認。短期間で二人の患者を失ったことが病棟全体の空気を一変させた。廊下の雑談は減り、笑顔も消え、スタッフは互いに目を合わせることを避けるようになった。
その頃、別の病棟でも二人の患者が亡くなったと聞かされた。偶然とは思えない連続。休憩室で若い看護師が不安そうに「また連鎖が始まったんじゃ…」と漏らした。その言葉に、誰も否定する声を上げなかった。
夜勤の看護師たちは、不思議な証言を口にするようになった。「亡くなったTさんとMさん、夜中に廊下を歩いている姿を見た」とか、「二人の笑い声を聞いた」というのだ。冗談めかして語る者もいれば、真剣な面持ちで語る者もいた。
私はカルテを遡り、過去5年間の死亡記録を確認した。そこには何度も繰り返されるパターンがあった。ある患者が亡くなると、その後数日以内に親しい患者が次々と急変している。中には病状が安定していたはずの人まで含まれていた。
まるで亡くなった者が、あちらの世界へ友人や仲間を連れて行くかのように——。その考えは非科学的だと頭ではわかっている。しかし、繰り返しを目の当たりにすると、否定できない感覚がじわじわと胸を侵食してきた。
それからの一週間で、さらに三人が亡くなった。中には、急変前日まで元気に談笑していた患者も含まれていた。彼は急変前、「昨日亡くなったMさんが夢に出てきて、こっちに来いって言ってた」と看護師に話していたという。
ナースステーションには重苦しい沈黙が漂い、スタッフは互いに必要最低限の言葉しか交わさなくなった。夜の廊下は異様な静けさに包まれ、その中に確かに何者かの気配があった。足音のような音が遠くで響き、振り返っても誰もいない——そんなことが続いた。
十日ほど経った頃、不意に連鎖は止まった。死亡はぴたりと途絶え、病棟には再び平穏が戻った。スタッフも患者も安堵の笑みを見せ、まるで悪夢から覚めたようだった。
しかし、その静けさは長くは続かなかった。数ヶ月後、また一人の患者が急に亡くなった。その知らせを受けた瞬間、私は背筋が冷たくなった——再び、あの連鎖が始まる予感がしたからだ。
医療の世界では説明のつかない出来事がある。連鎖死もその一つだ。科学では割り切れない恐怖が、静かな病棟の闇に潜んでいる。そしてそれは、またいつか必ずやって来る——そう、確信している。
怖い話にChat-GPTが書き直してくれましたが、こんな物騒な話ではないです。ただ、病院でよくあるのですけど、誰かが亡くなると数人続くんですよね。波があると言いますか。
だから誰かが亡くなった時に、普通以上に患者のチェックをしっかりします。冗談のよう話ですが、不思議と続くんです。
なお、患者さんが仲良くなった患者を呼ぶとか言う話はChat-GPTの力作です。
あくまで事実は患者さんが誰かが亡くなると、立て続けに亡くなることがあり、それを止めるとしばらくは落ち着く(気がします)。偶然かもしれませんが、20年以上感じていることです。




