第3章*「注文の多い料理店」その1
やっと、ファンタジー要素入ります。
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「岩田興信所」、応接室。
「お元気でしたか」
男は笑顔を見せた。その表情は実に爽快なものだった。
同席している政治郎に目をやり、「これは失礼。名乗るのが遅くなりましたね」と言い微笑する。
「僕は、色 春継。帝大で教鞭をとっており、民俗学を担当しています」
色は、飴色の髪をしており、目は藍染めを薄くしたような水縹色だ。
鼻筋が通り、日本人と異国の半々を取ったような顔立ちのため混血のようである。
年齢は、政治郎と同じ、あるいは1、2個上くらいか。
「私は、倉田政治郎と申します。政府の仕事に従事しておりまして、桜子殿には事件解決に協力して頂いております」
玄関先で、色の「事件の依頼」という言葉になんや心がざわつき、桜子の「記録係であるから同席願いたい」と申し出たのだ。
「ところで色様。先程伺いました、事件とは?」
桜子は茶を薦めながら口を開いた。
「そうですね、久方ぶりなので世間話でもしたい所ですが」
色は桜子にちらりと目をやった、桜子は笑みを返す。
「私的なおしゃべりは、また後日にしましょう」
色は出された茶を一口すすり、話し出した。
「実は、僕の同僚が行方不明なのです」
「それは、帝大の?」
桜子は聞き返す。
「はい。子どもではありませんし、騒ぎ立てるのも良くないと思いましたが、彼が姿を消して3日目になります。自宅にも帰っていないようなのです」
3日前の夕方。
昼食をとれなかったため、講義が終わり休憩を取ると出ていったらしい。まだ作業も残っているとのことで、鞄は講師室に置いたままだ。
「たしかに、それは不自然ですね」
政治郎が口を開いた。色は頷く。
「大学の食堂は昼過ぎに閉まってしまうため、その時間ですから外に行ったと思われます」
警察にも行ったが、成人男性ということでもう少し時間をあけるよう言われたという。
「承知しました。調べてみましょう」
桜子は口元をきゅっと締めると、顎を引いた。
「よろしくお願いします」
色は頭を下げた。
「岩田興信所」を後にした二人。
少しの間、沈黙が流れた。
「倉田さん」
色は歩みを止め、政治郎に話しかける。
「君は、どこまで知っているのかな」
「知っている、とは?」
彼は何のことを言っているのだろう。
政治郎には皆目見当がつかない。
色は政治郎の目をじっと見た。水縹色の瞳が何かを見透かそうとしているのがわかる。政治郎は視線を外さなかった。
「いや、いいんだ。気にしないでくれ」
色はふっと涼やかな笑みを見せた。




