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地獄の再来は許しません。

どんどん生徒会と絡ませていきたい。




体育祭から数日。

 やっと地獄が終わったと思っていたら、今度は別の地獄が生まれた。

きっかけはそう、昼休み。



「天使…いや、李生」



目の前には生徒会のトップ、生徒会長。

名前は知らない(←※生徒会の現親衛隊副隊長)。

 何故か恍惚とした顔をして僕を見つめて、目の前に立っている。

呼び出された時点で何となく悟って気が滅入る。

 名字呼びから唐突に名前呼びになった時点で猛烈に嫌な予感がしていたがもう突っ込まないぞ。

 本当は用件なんて聞きたくもないし門前払いしたかった。

 …だって、陶酔しきった顔の人間がまともなことを言うわけがないでしょ??

 しかし、ここは僕の教室であり、目の前の男のせいで人が沸いている。 

そしてこの男、学校1の権力者。

 そんな中、厄介払いや門前払いなんてとてもじゃないができないし。

 下手な断り方をすると不味い気がしているのだ。

 頼みの綱の瀬尾にいたっては「ktkrぇええ!!」とかいって興奮した様子で役に立ちそうにない。

死んでいいかな?



「李生…すまない、人がいない場所にするべきだったのだろうが、どうしても我慢できず…」



 なんか照れたように頬をかいている会長に僕の笑顔が段々引きつっていく。



『…そうですか。

 で、用件は?』



 嫌悪感が顔に出ないように顔を頑張って真顔に保つ。

やっぱり嫌な予感しかしない。

 だがしかし、聞かないと終われないという地獄イベント。

さっさと終わらせてご飯食べるんだ…(フラグ)。

 感情を殺して生気のない目で見る僕に生徒会長は頬を若干赤らめて言った。

今のどこに照れる要素あった?



「お…僕と付き合って欲しい」

「「「ええぇえー!?(きたぁああ!!)」」」



なんで周りが僕より驚いてんだよ。

…あぁ、終わった。

人生終了だ…。

公衆の面前で公開告白、それも野郎からだよ?

これが女の子なら泣いて喜んだのに。

なんて日なんだろう。

 僕の表情は完全に消え去り、テンションは地にめり込んだ。

 阿鼻叫喚のクラスメイトや他クラスの生徒諸々はさておき、瀬尾の反応はよくわからんがあからさまな喜びが見えるから後で絞めるか。



『…お気持ちは嬉しいのですが、何故僕を好きに…?』



 今まで何の接点もなかったの人物にいきなり告白されて混乱していた僕は断るより先に理由を聞いてしまった。

何してんだぁ、断れや!

 頭を抱える僕に生徒会長は乙女の如く頬を赤く染めて口を開いた。



「あの日挨拶してくれた中に、大輪の花のように存在していた君にひかれたのがきっかけだった。

それから、食堂で食べる姿を見かける度に可愛いなと思うようになったんだ。

そして体育祭で天使のような君をみた時、自分だけのものにしたいと恋心を自覚したんだ。

親衛隊隊長経由で写真を貰いもしたんだが、それだけでは満足できず、告白しようと決めた。

どうか僕と付き合ってくれないだろうか」



 生徒会長はこちらに手を伸ばし、ばっと腰を折った。

 周りから更に歓声が上がるが、切実に止めて欲しい。

僕は先程より返答に困って眉を下げる。

 なんか思ったよりポエミーかつ長文かつ真剣な回答だった、真面目か。

 でも良く良く聞いてみると僕の容姿についてしか述べてないんだよな。

僕の中身知ったらどんな顔すんだろうね。

 野郎に恋愛感情として好かれても嬉しくはないからいっそ幻滅されてしまいたい。

…というか。

 てっきり前食堂で見たときの雰囲気から所謂高圧的な俺様なのかと思ってたけど、告白だけ鑑みるとめちゃくちゃ好青年みたいなんだが。

誰この人?本当に同一人物??

 正直に言えば、頭打って記憶喪失したのかな?と疑うレベル。

 てか、食堂で食べてたの見られてたんか、全然気づいてなかった。

 あとさぁ…、体育祭やら天使云々は絶対仮装レースの話だろ?

黒歴史だから頭ぶん殴って抹殺していいかな。

 そして瀬尾?写真渡したんかおまえ、あとでこ○す。

 どす黒いオーラを出していると、後ろから別の声がかかった。



「あっ、李生」



声の主は雛斗だった。

 会長の存在+公開告白のせいでできた人垣を掻き分けて現れた雛斗。

周りのざわざわが更に広がる。

頼むからもうこれ以上のカオスは許してくれ…。



『雛斗、どうしたの?』



 別クラスの雛斗が僕のクラスにやってくるのは珍しい。

 首をかしげていると雛斗は申し訳なさそうに手を合わせ、



「ごめん、次の授業英語なんだけど電子辞書忘れちゃっt…」



と言いかけて固まった。

 目線はプルプルしながら腰を折り、手を僕に差し出してる会長に向けられている。

その目はさながら珍妙な生き物を見る目だった。

そりゃそうもなるわな。

それから雛斗は僕と会長を交互に見て、



「告、白…中…?」



と全てを察し戦慄いた。

僕は遠い目をして答える。



『…そう、だね』



まぁ天地がひっくり返ろうとOKはしないがな。

僕の恋愛対象は女なんです…。

 それを聞いた雛斗はタタタッと僕の側に近づいてくると口に手を添えると耳元でひそひそ言った。



「…こんなこと言ったらアレだけど、断った方がいいよ。

絶対この人モラハラ野郎だって」



 笑っちゃ駄目だけど思わず吹き出しそうになった。

評価が辛辣で草。

 食堂で散々言われてたもんなぁ、でもこれはそう言われるようなことをした会長が悪い。



「誰がモラハラ野郎だって?」



 しかし、会長には聞こえていたらしくばっと上げた顔のこめかみに青筋がちらついていた。

雛斗は怯むことなくズバッと言ってのけた。



「アンタのことに決まってるでしょう?

李生は優しくて天使みたいな人なんですよ。

だからアンタみたいな横暴な人間と付き合うなんてあり得ないんです」



おっと、会長かなり言われてるぞ。

この前の報復かな。

 まぁ僕も付き合うつもりは微塵もないから否定はしないけど。



「李生が天使なのは認めるが誰が横暴だと?」



 いや認めんな、雛斗の時は敢えて突っ込まなかったけど僕は別に天使じゃねえよ、人間だわ。

てか、素?が現れちゃってるよ、会長。

 雛斗に対して威圧的なオーラを放つ会長に僕は終止符を打つことにした。

 ややカオスな空気になってしまったけど、僕の答えは最初から決まってたんだ。

僕は会長に近づき、会長のそっと手を取る。

 すると、会長は顔をボッと赤く染めて「ハワッ」と会長から出たとは思えない謎の奇声を上げた。



『会長…、大変嬉しいのですが、僕には心決めた人がおりましてお付き合いできないのです。

どうかお気持ちだけ受け取らせてはいただけないでしょうか…?』



 嬉しいわけがないし、好きな人?もちろんいない。

ただの口実で断り文句である。

 いつの日にか瀬尾が萌えると言って熱弁していた、悲しげに目を伏せてからのあざとさ満点らしい上目遣いを駆使して会長を見上げる。

 僕は自分の顔面偏差値を自覚してるからね、使えるものは使わなきゃ。



「グッ…オ、オネガイシマス」



 会長は発作でも起きたのか胸を押さえると、苦しげに言った。

それを聞いた僕はにっこり笑顔で手を離した。

よし、これで円満解決でしょ。

 観衆の中にいた瀬尾が「ウワー、カイチョーカワイソー」とかなんとか言ってたのが聞こえたがマジでおまえ後で覚えてろよ?

 僕はさっと教室の中に戻り自分の席から電子辞書を持ってきてポカンとしてる雛斗に渡す。



「はいっ、雛斗、電子辞書」

「えっ、あ、ありがとう」



 雛斗は受け取った後、少し気の毒そうに会長を見て自分の教室へ戻っていった。

 雛斗から最終的に憐れまれていた会長はなぜか分からないが惚けていた。

 自分も教室へ戻ろうとすると、落ち着き始めていた観衆がまたざわめきだす。

はぁ…次は何?



「会長振られてやんのー!」

「だっさー」

「いいなー、李生ちゃんの上目遣い俺もされてみたい」

「…」



げっ、生徒会メンバーじゃん。

 副会長以外揃ってるみたいだけど、わざわざ野次馬しに来たわけ?暇なの??

 生徒会メンバーの声で会長はやっと我に返ったらしい。



「お前ら!わざわざ見に来るな!」



 怒鳴っているがめちゃくちゃ恥ずかしそうで威厳もなにもない。

 生徒会メンバーは会長に近付いてくるとそれぞれ肩を叩いて慰める仕草をする。

 まぁ小柄で黙ってる人以外は笑いこらえながらだけど。

 生徒会メンバーには尊敬されてないのかな、会長って。



「学園のトップが公開告白とか見せ物じゃんか」

「「ねー」」

「…」

「お前ら…っ!」



会長は怒り心頭って感じだった。

わなわな震えているが言葉にならないらしい。

まぁ見せ物にされた上振られてんだもんな。

 それを他の役員に見られて笑われるってどんな気持ちなんだろう。

知りたくないけど同情はする。

告白終わったし、教室戻ろ。

僕はまた平和な日常へ戻るべく踵を返す。



「あ、あの、李生!」

『?なんでしょう』



去り際、会長に引き留められ、仕方なく振り返る。

 他の生徒会メンバーもいるしあんま長話はしたくないんだけどなぁ。

会長は緊張した様子で口を開いた。



「恋人は無理なら、友達ならいいだろうか?」



友達…生徒会長と…。

 無し寄りではあるけど、流石に2度断るのはなぁ。

 会長のメンタルを破壊してしまうかもしれない。

だから、仕方なく首を縦に振った。



『いいですよ』

「…っ!ありがとう!

あと、同学年だし敬語もなくていいからな」



あっ、同級生だったっけ。

 生徒会長としか覚えてなかったから学年知らなかったな。

この学校一年生でも生徒会長なれるらしいし。

 できるだけ距離取りたいから敬語で行きたいけど、僕に対する会長の態度からするとなんかへこみそうなんだよな。

 僕のせいでへこんだままだったら会長ガチ勢から叩かれちゃいそうだし。



『わかった。 

 またね、会長』



 にこっと笑みを張り付けてそう言い、さっさと会話を切り上げると今度こそ教室へ戻る。

戻る前、



「会長やるじゃん!」

「てか会長キャラ違くない?

「笑顔見れちゃった、かわいすぎる」



などと会話が聞こえていたけど無視した。

 そして瀬尾には後に写真を会長に渡した件について、お仕置きでアイアンクローからの十字固めを決めておいた。

地獄の再来は許しません。 




『そういえば、会長の名前ってなんだったっけ?』

瀬尾「それ絶対会長の前で言うなよ」

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