結論、生徒会とは関わりたくないな。
BLって沼だな…。
もぐもぐと注文したステーキセットを頬張る。
ん、うま!
一万円は伊達じゃないね!!
瀬尾も同じく食べ進めながらもチラチラとどこかを見ていた。
そして何かを見つけたらしくボソッと呟いた。
「おぉ、ガチの毬藻だ」
『は?』
感心している瀬尾の声にステーキから目を外す。
毬藻?あの丸っこくて緑の?
ここは陸上だぞ毬藻がいてたまるか。
そう思って瀬尾の目線を追うと。
『………何あの黒いの』
毬藻っていうより…まっくろく〇すけみたいだ。
黒いもじゃもじゃで明らかに鬘もどきの髪で瓶底眼鏡をかけたチビがいた。
僕が165センチあるのに対してソイツは155センチくらい。
え?あれで変装してるつもりとか馬鹿なの?
気は確かか??と正気を疑う。
バレバレすぎて笑えるんだけど(真顔)。
瀬尾がニコニコしながら黒モジャの方を指す。
「あれが王道転校生だ」
王道転校生って何、ただの転校生なんじゃないの?
ていうか、そもそも転校生が来てたことすら知らなかったんだけど…?
不思議な顔をしていたら瀬尾が答えた。
え?今日転校してきて別のクラスなの?
いや何で別のクラスのお前が知ってんだよ。
思わず、何処から聞いてきたわけ?と尋ねたら笑顔で黙殺された。
王道と聴いてさっきの瀬尾のセリフが過る。
ー「王道イベント、見に行こうぜ」
・・・。
ハッまさかイベントってあの黒モジャの?(正解)
アレに一体何が起こるわけ??
瀬尾は意味深な笑みを浮かべた。
そこはかとなく腐の気配を感じたけどスルー。
これは追及しない方がいい案件だと察した。
王道イベントとは間違いなく薔薇満載なのだろ う。
もちろんのこと僕は見て見ぬ振りをするけど。
ただ、名も知らぬ転校生に心から同情した。
もう巻き込まれてるのかもしれないがBとかなんとかの世界に引きずり込まれるとは。
強く生きろよ…黒モジャ。
すると、生徒会長がいつのまにか黒モジャの前に立っていて。
会長はまるで嫌なものを見たかのような顰めっ面で口を開く。
「おいお前」
会長の低い声は例の黒モジャに真っ直ぐ向けられていた。
会長の声が響いた瞬間場がシンとなる。
さっきまで馬鹿みたいに騒がしくて煩かったのが嘘みたいだ。
むしろ葬式かってくらいに静か。
いつもこのくらいの静けさでいいのに。
一人で食堂の生徒全員黙らす会長って何者?
ここの生徒達は調教済みなの??
黒モジャは食事を受けとるところだったようでトレーを貰った後、生徒会長の方を向いた。
「何か御用でしょうか」
圧ありまくりの会長に対して全く動じていない黒モジャに純粋に驚いた。
メンタルダイヤモンドが瀬尾以外にいるとは。
会長は煩わしそうに目をすがめる。
「お前が転校生らしいな?
そのような恥晒しの恰好でこの学園を歩くなど許さんぞ、ただちに改めろ」
生徒会長が初対面の人間にかなり辛辣で草。
何もさ、見た目でそこまで言わんでも良くない??
まぁ僕も“その変装は流石にないな”くらいは思ったけど。
前髪にかかった髪切れよとか清潔感のこと指摘するくらいでよくないか?
こんなこっ酷く言われたら黒モジャ泣くのでは??
そう思った矢先、黙って聞いていた黒モジャが口を開く。
「…すみませんが、僕がどんな恰好をしようと僕の自由です。
名誉毀損で訴えますよ?」
まさかの反撃!?
それもマジでどストレートな正論。
うん、全く以てその通り。
でもあの生徒会長に反発する黒モジャの肝据わりすぎでは?
生徒会長の名前は覚えてないし正直微塵も興味ないけど、確か財閥の令息だとかなんとか。
金持ちだからか知らないけど常に高圧的な印象があって苦手なんだよね。
彼に逆らったら最後制裁か追放されるらしい。親衛隊に。
怖いよねー。
一応全部噂だけど真相は闇の中。
てかあれ、親衛隊って僕もじゃね?
…まぁ僕活動には一切参加してないしどうでもいいか。
「俺に口答えするなど退学希望か?」
うわ、めちゃくちゃ怒ってる!!怖っ。
ていうか、会長横暴すぎない??
生徒一人を退学させる権力あるの??
にしても、転校初日に退学はヤバいよ…。
ちょっとハラハラしながら見ていた。
「は?そもそも貴方は誰なんです?
名乗りもせずに人を退学にするだどうだって頭湧いてるのですか??」
わぁあ、ここにきて黒モジャ君口悪くなってるよ?!
肝据わりすぎてて最早怖い。
「…俺は生徒会長のだ、覚えておけ愚民」
そう言って転校生に手を伸ばした生徒会長。
それを阻止したのは副会長だった。
「会長、雛斗に失礼なことしないでください!」
副会長が毬藻こと転校生を庇うように立つ。
どういう状況??
え、何、副会長は転校生と知り合いなの??
「これキスイベントあったな」
ボソリと瀬尾が真剣な顔をして何かを呟いていた。
まぁ多分どうでもいいことだろう。
「ほぅ、お前が庇うとはな、意外だ」
「雛斗に手を出すのは許しませんよ!」
会長と副会長が睨み合うよくわからない雰囲気の中。
「あの、昼食食べたいのでそろそろいいですか?」
転校生は強かった。
この一触即発の空気の中でそれを言えるとは。
しかし、副会長はにこやかに転校生に応える。
「時間取らせてしまいすみません。
またお話しましょうね」
「えっ、は、はい」
転校生は少し引きつった顔をして返事をすると生徒会から離れていった。
「チッ、会長とのキスフラグは消えたか」
気に食わなさそうな瀬尾を僕は呆れた目で見た。
キスフラグとかバカじゃないの?
「忍、あの転校生を気に入ってるのか?」
「えぇ、彼は特別です」
「毬藻みたいだよねー」
「ねっ!」
「俺は食指が動かないなー」
「………」
わちゃわちゃしながら生徒会は2階へ消えていった。
生徒会って2階なんだ、と彼らの背中を目で追えば瀬尾が「2階でどんな会話が広がってるんだWkwk」と興奮気味に言っていた。
僕は今見たことは全て忘れることにしてステーキを頬張る。
結論、生徒会とは関わりたくないな。
瀬尾「2階覗きに行こうかな」
『勝手にやってろ』




