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逆らえないのが庶民の常。  

BL作品好きすぎて一時期寝る間も惜しんで読んでました。今も色んなサイトを徘徊してます。




「李生、食堂行こうぜ」

『やだ』 

「何でだよ」

『煩いから教室で良い』

 


何でか知らないけど瀬尾の勧誘がしつこい。

別に食堂自体は嫌いじゃないよ、食堂はね。

ご飯美味しいし、食堂の人親切だし。

 でもさ…、主に生徒会と親衛隊のせいで耳が痛くなるんだよね。

何故って?

 アイドルのライブ会場かってくらいにキャアキャア煩いの。

 耳栓してても突き抜けてくる歓声とか最早災害レベルじゃん。

 防ぎようがないし、防いだところで無駄なのだ。

黙って飯食えよって話だよね。

 瀬尾はいつも食堂に行くけど僕は音に敏感だし煩いの大嫌いだから瀬尾とは分かれて教室で一人で食べてる。 

 最初は瀬尾の誘いを断る度に「ボッチ飯乙(笑)」と瀬尾に煽られていたけど、余計なお世話だとボコして黙らせた。

 瀬尾も親衛隊とはいえ良くあんな場所でご飯食べれるよね、僕は無理。

 てことで別行動で全然構わないのに、なんで今日に限って食堂へ行こうと食い下がって来るんだよ瀬尾。

…さては何か企んでるな??

 じとっと疑いの眼差しを送っていたら、耐えかねたのか瀬尾は良い笑顔で本音を吐いた。 



「王道イベント見に行こうぜ」



おい。 

あっさり取り繕うの止めたぞコイツ。

 瀬尾の無駄に爽やかな笑顔にクラスメイトがざわつくのを感じたけどどうでもいいのでスルー。

 “王道”の意味はさておき、“イベント”と言うワードに僕はスンと表情をなくす。 

やっぱ裏あるんじゃん。

 薔薇の香りしかしないのマジで勘弁してくれる??

 僕は男同士のアレコレに興味ゼロなんだって。

あと大体この手の誘いは僕に得がない。

 得があるとしても思考回路が腐敗して最早発酵してる瀬尾コイツだけ。

となれば当然断る一択。

 


『一人で行け』

「なぁ、奢るから来てくれよ」

『無理』



下らないことに僕を巻き込むんじゃねー。

 強請ってくる瀬尾を無慈悲に突っぱねてお弁当を取り出す。

 実を言うと食堂に行きたくない理由は煩いだけではない。

 瀬尾といると親衛隊副隊長だって認識されるからなるべくセットで目立ちたくないんだよ。

 ただでさえしがない幽霊部員でしかない僕が生徒会ファンクラブの副リーダー扱いされるとか遺憾でしかないだから。  

 前は瀬尾といれば偶に挨拶されるくらいだったのに、今じゃ瀬尾といてもいなくても親衛隊の人達から毎日挨拶されるし。 

仲間認定やめれ??

 副隊長になったところで僕は死んでも親衛隊の活動なんてしないからな。

 僕の頑な拒絶反応に対し、瀬尾は仕方ないかと肩をすくめて最終奥義を繰り出す。 

  


「頼む李生、一ヶ月分奢るから」

『………っ、この金持ちが』



一ヶ月、人の金で食う、飯のうまさ。

 …と、つい惹かれかけた自分を咄嗟に戒める。

あっぶな!悪魔の囁き怖すぎ!!

 つい数日前親衛隊のことで気分を害したのに早速揺さぶられるとか馬鹿すぎるでしょ。 

 一瞬でも瀬尾に屈した事実が悔しすぎてダンと机を叩く。

 僕の近くに座っていたクラスメイト達がビクッとしたのが見えて内心謝る。

ごめん、でも瀬尾が悪い。  

 一度で懲りずにまた僕を金で落とそうだなんて信じらんない!!

ここぞという時に買収がお得意の瀬尾。

 成金だか何だか知らないけど謎に金持ってんだよねコイツ。

 絶対YESだけは言わないぞと反抗心を燃やす。

 すると瀬尾は思案するように顎に手を当てて、「なら…」と意味深に口角を上げた。

 その表情似合いすぎてムカつくから今すぐやめてくれ。



「一ヶ月が駄目なら3ヶ月は?」

『乗った』 



 威力100倍の魅惑攻撃に惨敗してターンエンド。

3ヶ月はずるいって!!!

庶民の無力さを身にしみて感じた。

 結局まんまと釣られてしまった僕はきっと瀬尾以下の馬鹿だ。



「ははっ、チョロいな」

『くそ…』



してやったりと上機嫌な瀬尾とへこむ僕。

 瀬尾は僕の両肩を掴みにっこり、いやニタリと微笑む。

 その笑みにクラスメイト達が頬を赤くしているのが見えて目を疑う。 

この笑顔に見惚れるとか正気なのか?目腐ってんじゃないの??

眼科に行くことを心からおすすめしたい。

どこからどう見たって悪魔の嘲笑だろコレ。 



「じゃ、大人しく食堂へ行こうか…李生」



 仕方なく広げたお弁当を保温バックの中に入れた僕は瀬尾に手を引かれて教室を出る。

 そんな厳重注意しなくても逃げないっつーの。 

行先はもちろん食堂ことライブハウス‐騒音‐。

つまりは…地獄。

じ、地獄への切符を買ってしまった。

堕ちるなら瀬尾だけ堕ちればいいのに。

 人のこと巻き込むし人の不幸喜ぶし罪しかないぞ天罰下れマジで。

 食堂に行くのは入学当初以来でかれこれ半年以上ぶり。

僕、煩いの耐性ゼロなのに…。

耳壊れたらどうしようガクブル。



「こんにちは、環様!李生様!」

「おー、元気そうだな」

「隊長、副隊長こんにちは!」

「あぁ」



ちょ、今副隊長言わないで追い打ちSTOP!!

 親衛隊らしい人達に挨拶されたけど地獄のことで思考が埋まっている僕は黙って頭を下げるだけ。

 怯えていると前を歩いていた瀬尾が立ち止まる。

アッ、食堂に着いてしまった。 



「よし、行くぞ!」

『ムリカエルシネタマキ』  

「行くぞ!!」



 僕のなけなしの抵抗と心からの悪口をガン無視しやがった。

このメンタルダイヤモンドが。

 いつか一点集中攻撃で粉々にしてやるからな。

 グギギと瀬尾に繋がれている手を解こうとしたがまるっきり歯が立たず徒労に終わる。

 瀬尾は意気揚々とした顔で無駄にデカい食堂のドアを開けた。

それからドアの先に踏み込んだ瞬間。



「きゃああ!隊長様ぁあ!!」

「環様ぁあ!!抱いてぇええ!!」

「チッ、親衛隊かよ」

「えっ待って、李生様いる!!

 出現率激レアなのに!!」

「李生様天使すぎ!!」



耳 が し ん だ。

頭が割れるような歓声が耳を貫く。 

うるっっさい!!

鼓膜死ぬかと思ったわ!!

 腹いせに後で瀬尾をサンドバッグにすることを決めた。

親衛隊はいつからアイドル化してんの??

てか今僕も叫ばれてなかった!?

 天使とか羞恥しすぎて死ねる渾名で呼ぶな!!

 あと人を伝説のポケモンみたいに言わないで欲しい。

ちゃんと在籍してるし学校来てるから!!

 叫び声の中に親衛隊のアンチが一部聞こえが正直どうでもいい。

だって僕は幽霊部員(※副隊長)だからね。

 高すぎる注目度に気圧されて瀬尾に貼り付いている僕とは真逆で慣れているのか瀬尾は呑気に笑っている。



「李生大人気じゃん。

 クフフ、チワワ✕ツンデレ副隊長も悪くn『シネ』」  



 油断していた瀬尾の鳩尾に肘鉄をめり込ませる。

 そして瀬尾の手が離れた隙にさっさと席を探しに行く。

 肘鉄をくらわせたのは地獄へ招待されたことへの恨みも込めてだけど、一番の目的は変な噂の拡散を避けるためだ。 

この学園は薔薇が満開らしいしマジ無理。

 ずっと前に隣で垂れ流していた瀬尾の話によると、男同士で手を繋いでるこの行為すらキャーキャー喧しく叫ばれる対象になり得るという。 

瀬尾とラブとか噂でも嫌だから!!

 僕で薔薇関連の妄想でっち上げた暁にはお礼参りで殺してやる。

頭の中が年中花畑なのは瀬尾だけにしろよ。 

僕は薔薇にも百合にも興味ねー!!

 先に席に着くと落ち着いてきた瀬尾が僕の隣に座った。

 僕は注文用に備え付けられたタブレットを取り注文を始める。



「李生のいけずー」

   


 クーデレ美少年だの隠れゴリラだの褒めてんのか貶してんのか分からない呼び方をしてくる瀬尾にイラッとして釘を刺す。 



『次馬鹿なこと言ったら校舎裏ね??』



僕の目線は画面にしか向いてない。

 瀬尾の方見たら考えるより先に手が出そうなんだよね。

最悪息の根を止めかねない。



「サーセン」



 僕の無双時代を見てきた瀬尾は口をミッ◯ィーにして噤んだ。

 かつて校舎裏に呼ばれた奴らは漏れなくタコ殴りの刑に処されてきた。

 瀬尾もせっかく無駄に綺麗な顔面がメコメコなのは嫌…だよね??

どМなら心置きなく殴るけども。



「何食う?」 



 しれっと話をすり替えた瀬尾は質問してくるが、僕の指に迷いは一切ない。

 画面の一点目掛けてタップしサクッと注文する。

ピロンと注文完了の画面が表示された。

よし、僕の食料は確保できた。

え?お弁当あるのに頼むのか??

 まぁ食べようと思えばこのくらい入るから大丈夫。  



「え、頼むの早、何頼んだんだ?」

『ボリューム満点ステーキセット』

「は?おいソレ一番高いやつだよな??」



 人の奢りでマジかよお前…と顔を青くしている瀬尾を鼻で笑った。

そう、一万円だからね…このセット。

 基本的には金持ちが通う学園であるため食堂のご飯価格は目茶苦茶高い。

 オムライス単品で4000円とか頭おかしいのか??

材料何使ったらそんな高くなるの??

庶民には到底手の届かない価格である。

 でもまぁ瀬尾の奢りだし僕の財布には何ら影響はないから無問題。

僕は満面の笑みを浮かべて言ってやった。



『人の金で食う飯って美味いよね』

「俺の財布を破綻させる気か?」

『これから3ヶ月毎日ステーキセットね』

「二度と食堂来んな悪魔」  


 

お前が呼んだんだろバーカ。

自業自得だ阿呆。

あと冗談だし。

3ヶ月毎昼ステーキとか高校男子とはいえ流石に胃もたれするわ。

 瀬尾と軽口の応酬をしていたら、突然耳が割れるような騒音が食堂に響き渡る。

煩いのはもう諦めた。

今後は耳栓でもしとこ。

 食堂のドアを開け放ち現れたのは5人の男達だった。

あー、はいはい生徒会ね。 

 僕は白けた顔をして手元にあるスマホをイジる。

どんなにイケてようが野郎に興味なんてないもん。



「きゃああああ!生徒会の皆様よ!!」

「会長様ー!!」

「副会長様ぁあ!」

「夕様ー!!由良ー様!!」

「有馬様!!抱いてぇええ!!」

「百様ー!!今日もお素敵ですー!!」



 生徒会の登場で騒ぎ立てる親衛隊だかその他の生徒。

 何も面白いことなんてないのに瀬尾がワクワクした眼差しを生徒会に送ってるのどゆこと??

 瀬尾がご機嫌=腐の予感という最悪の方程式が浮かぶ。



「おっ、生徒会の皆様方の登場だ」 

『はぁ、うるせー』

「本性がまろびてておりますわよ、李生さん」

『キッショ』



 ただでさえ濃いキャラにオカマを追加しようもんならマジで縁切るからね。

 あーあ、なんでコイツなんかの誘惑にのっちゃったんだろう。

逆らえないのが庶民の常。




瀬尾「食べてる姿は可愛いんだけどなぁ」 

『“は”って何?』

瀬尾「ナンデモナイデス」

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