なんでそうなるかな??
シリアル…じゃなかったシリアス展開。修学旅行編書かなきゃなぁ…(´ω`)
信楽契・信楽有馬と極力会わないと決めたのに何故か二人との遭遇率が有り得ないほど高くて泣く。
一番嫌な展開2人と同時に会うことはないが片方とどこかで出会い話しかけられる。
「李生ちゃん、手伝うよ」
『え、ありがとう…』
兄の方は何故か積極的に僕を手伝ってきたりするし。
「クラスメイトから聞いたんですけど天使先輩って頭もいいんですね!」
『?うん、ありがとう』
弟の方は積極的とまではいかないがふとした瞬間に近くにいて話すことが増えた。
兄、弟、兄、弟と交互に現れる信楽兄弟に僕は段々気が付いてきた。
…もしかして、僕取り合いされてる?
いや、ただの自意識過剰だったら恥ずかしすぎるから埋めてほしいんだけど。
有馬が僕のご機嫌を取ってくるのも契が隙をみて話しかけてくるのも。
全部。
僕が争いの火種になってるなんじゃね?
2人がどんな理由で僕に近寄ってるのかは知らんけどさ。
僕を挟んで喧嘩しないで欲しいんだよね。
僕は取り敢えず先ずは話しやすそうな弟に聞いてみることにした。
放課後、誰もいない教室に信楽契を呼び出す。
「天使先輩から呼び出しなんてドキドキしちゃいますね」
『…告白じゃなくて、聞きたいことがあって』
少しおどけてみせる信楽君にそう切り出した。
信楽君はいつものように穏やかな笑顔を浮かべている。
『ぶっちゃけて聞くと君お兄さんのこと嫌いだよね?』
信楽君はすぐには答えなかった。
しばらく窓の外を見つめてから、信楽君は静かに笑った。
「どうしてそう思うんですか?」
『普通に仲が良い兄弟なら毎回交互に出会うわけないんだよね』
生徒会の東雲兄弟を見てみ?
たまに行動違っても一緒にいること多いしちゃんと会話してるよ。
それに比べて信楽兄弟さ、どう考えてもお互い避けてるじゃん。
シフト制かってくらい綺麗に会わないの変じゃん。
信楽君は少し笑顔を固くすると、やがてふぅと息を吐いた。
「…嫌いですよ。
でも、小さい頃は好きだったんです。
ホントですよ」
本音が聞けてちょっと安心した。
やっぱり嫌いだったか。
でも、好きだった過去も告げられて意外だった。
何があってそんな嫌い合ってるの?
僕が尋ねるより早く信楽君は口を開いた。
「…昔から兄は勉強も運動もできて、顔がよくて、人付き合いも上手い。
誰からも好かれる」
信楽君は淡々と話していく。
「僕は昔から兄に敵うものはなかった」
『でも、契も人付き合い上手いじゃん、他は学年違うしわかんないけど』
「……そう見えますか?」
『見える』
「ありがとうございます」
信楽君は嬉しそうに小さく笑った。
けれど、その笑顔は少しだけ寂しそうだった。
「でも、それは後から身につけたものです」
『後から?』
「兄を見て覚えたんですよ」
信楽君は近くにあった椅子に座ると机に頬杖をつく。
「どうすれば人に好かれるのか。
どういう言葉を言えば喜ばれるのか。
どうすれば相手が自分から離れなくなるのか」
淡々とした口調はまるで他人事のように聞こえた。
「兄は、それを何も考えずにできた。
でも僕は、考えないとできなかった」
『……』
「だから、真似したんです」
そして、信楽君は少しだけ笑う。
「兄のようになりたかった……わけではありません」
その言葉には、妙な重みがあった。
「ただ、嫌だったんです」
『何が?』
「何をしても兄と比べられることが」
頬杖をついた方と反対の指が、机の上で小さく動く。
気のせいか声のトーンが少し暗くなった気がする。
「兄は顔がいい。
だから、多少のことは許される。兄が失敗しても『まあ、有馬だから』で終わる」
「僕が頑張っても、『有馬くんの弟なのに』と言われる」
「何をしても、兄が先にいる」
そこで信楽君は耐えられないといいたげにフッと笑った。
「……本当に、嫌でしたよ」
言葉には沢山憎悪が滲んでいるのにその笑顔には少しも怒りが見えない。
だからこそ僕には余計に怖く感じた。
「それで、あるとき兄に彼女ができたんです」
『彼女?』
「はい」
信楽君は一度だけしっかり頷く。
「最初は兄の彼女に興味なんてありませんでした」
けれど、その彼女が契に相談してくるようになった。
兄が忙しい。
話を聞いてくれない。
寂しい。
そんな話を、信楽君は親身になって聞いた。
「僕は、ただ話を聞いただけです」
『……本当に?』
「もちろん」
即答した信楽君は少し遠くを見る目をして笑った。
「……ただ、僕は昔から、人の欲しい言葉を見つけるのが得意だったんです」
大丈夫。
貴女は何も悪くない。
僕はちゃんと貴女を見ている。
そんな言葉を掛けているうちに、彼女は信楽君を頼るようになったという。
「そして、彼女は兄と別れました」
『……その子は君を好きになったの?』
「どうでしょう」
僕の問いかけに信楽君は肩を竦めると曖昧に笑う。
「僕は何もしていませんよ。
彼女が自分で僕を選んだだけです」
『……』
「そう思っていました」
信楽君はそこで、一度だけ視線を落とした。
「でも、結局……僕も選ばれませんでした」
『え?』
「付き合って暫くして、彼女は僕に言ったんです」
信楽君はまるでその言葉を今でも覚えているようにゆっくりと口にした。
「『契くんのほうが優しい。でも、私は有馬くんの顔のほうが好き』って」
『……最悪だね』
「ふふっ、そうですね
信楽君は傷ついているはずなのに明るく笑った。
「僕も、そう思いました」
その笑顔から感情は読み取れない。
「そのとき、初めて分かったんです」
「僕がどれだけ努力しても、どれだけ相手を理解しても、どれだけ優しくしても……兄には勝てないんだって」
『……』
「だって兄は、顔がいいから」
信楽君は静かに笑う。
「何もしなくても好かれる」
「何をしても許される」
「僕が一生懸命手に入れようとしているものを、兄は最初から持っている」
信楽君はほんの少しだけ目を細めて言った。
「……そんなの狡い。
許せませんでした」
『……』
「それからです」
信楽君は言葉を区切るとうっすら微笑みながら僕を見る。
「僕が兄を嫌いになったのは」
『嫌いになりたかったわけじゃないんだよね?』
「…ええ」
少しだけ間を置いて。
「だからこそ、嫌いになった後のほうが楽でした」
『……』
「兄が幸せそうにしていると腹が立つ」
「兄が誰かに好かれていると腹が立つ」
「兄の隣に誰かがいると、その人を僕のほうへ向かせたくなる」
「でも、嫌ってしまえば無関心でいられる」
腹が立つと言いながらも、それでも、信楽君は笑っている。
怒りなんて感じさせない軽い口調だった。
まるでベールで覆い隠されたように一切の負の感情が見当たらなかった。
『有馬には言わないの?』
「兄さんには何も言いませんよ」
『なんで?』
「兄さんに僕の本心を知られるなんて、悔しいじゃないですか」
そう言いながらも穏やかな声だった。
僕はしばらく黙っていた。
この男は見かけは良いがその実は真っ黒な腹を抱えていて、笑顔のまま人を追い詰める。
そんな気がした。
「……まあ、兄も僕のことが嫌いでしょうけどね」
浮かぶのは信楽兄弟がかち合ったあの瞬間。
好きであれば、少なくともあんな闇深い目で兄弟を見ないと思う。
『…みたいだね』
「でしょう」
信楽君は大したことがないような顔をして頷くとなんとも言えない顔の僕を見て少しの間目を伏せた。
「兄は昔から、自分が一番じゃないと気が済まない人ですから」
そう囁くように言って、少しだけ嗤った。
「だから僕たちは、お互いに嫌いなんですよ」
兄は、弟が自分から何かを奪うと思っている。
弟は、兄が何もせずにすべてを奪っていくと思っている。
どちらが悪いのかなんて、もう分からない。
ただ一つ分かるのは。
信楽有馬と信楽契。
二人の間には、仲の悪い兄弟という言葉だけでは片付けられないほど、深い溝があるということだった。
「兄さんが天使先輩にご執心なのは知ってたので少し気になって関わっていましたが僕の本音に気付かれたのは初めてです」
にこにこ嬉しそうに笑う信楽君に僕はスッと目を逸らす。
信楽君はそれなりに性格が悪いがそれを隠す演技力がえげつない。
でも、同類の僕には分かってしまった。
いや分かりたくないけど、仕方ない。
多分信楽君は自己完結してそうだから他人からの理解なんて要らないだろう。
そう思ったけど、気付いたら口を開いていた。
『…僕は君じゃないし、君の気持ちはわからないよ。
でも、君は君だし、もっと感情出していいと思う』
「…感情?」
『ムカついたなら怒る、嬉しいなら笑う、悲しいなら泣く、傷ついたら落ち込む。
当たり前だけど多分君できてないでしょ。
いい人演じてその役から抜け出せてないんじゃないの?』
「!」
後半の言葉に信楽君は初めて怯んだ表情を見せた。
いい人演じるのは大変だし、苦労する。
精神擦り減らしながら信楽君は感情を殺していたのだろう。
誰かに必要とされるために、自分の存在価値を証明するために。
でも、根詰めてもいつか壊れるからな。
『君は一度有馬と喧嘩したらいいんじゃないかな。
本音ぶつけたら多少スッキリすると思うよ』
よし、聞きたいこと聞けたし言いたいことぶつけたし帰るか。
じゃ、と話を切り上げて出ていこうとしたら信楽君にガッと腕を捕まれた。
ん??
「いやいやいや、そこは仲介入るとかじゃないんです?」
『?なんで僕がそこまでしなきゃいけないのさ。
君ら小学生なの?
僕先生じゃないんだけど』
「辛辣すぎません?
揺さぶるだけ揺さぶってさよならとか許しませんから」
『えぇ、何それ』
結局信楽君から猛抗議クレームが入り僕は何故か兄弟喧嘩の仲介役をすることになった。
そして何故か名前呼びすることを強制された。
なんでそうなるかな??
契「天使先輩って世話焼きなタイプなんですか?」
『無視しようにもできなかっただけだよ!』




