そもそも僕は優しい人間じゃないんだよ。
Xとか使うの苦手なので全部ここに載せてくようにしました。
二学期も終盤に差し掛かり、テストの時期がやってきた。
瀬尾がようやく退院してきたと思ったら顔面蒼白で僕の部屋に駆け込んできた。
どうやら入院中に僕がわざわざノートを印刷して届けていたというのに、ろくに勉強していなかったらしく。
それどころか同室で仲良くなった腐男子とよろしくしてずっと語り合ってたとのこと。
故に勉強不足で退院からのテスト期間へ突入した瀬尾は泣きついてきたのだった。
特待生は総合得点が9割以上じゃないと認められないため日頃の勉強の大事さがよくわかる。
…だというのに、バカなのか?
自業自得だろうが、どう考えても。
僕の善意を無駄にしやがって、自力でなんとかしろや。
話を聞きながら机に向かって勉強していたら瀬尾が土下座してきた。
「頼む!マジで特待生消されたら特権がなくなる!」
特待生をなんだと思ってんの??
全校生徒に謝れ。
『お前は一度失ってみるべきでは?』
失って気付くものもあるだろ、知らんけど。
「鬼畜かよ!何でもするから助けてくれ!」
この通り!と土下座する瀬尾をスンとした顔で足を組んで見下ろす。
何でもすると言われてもねぇ。
瀬尾にしてほしいことなんて…。
と思っていたら、ハッとした。
そうだ、瀬尾を使って生徒会避けしよ。
『なら、僕が生徒会と極力関わらないようにガードしてよ』
「エッ(;゜д゜)、えっ(^^;)(;^^)」
何故挙動不審になってるんだ、瀬尾。
動揺しているらしい瀬尾は某電気ネズミのしわくちゃ顔をする。
そんな顔するほどの提案してないと思うんだけど。
でも、僕が生徒会が関わらないようにしたいという願いが嫌だというのなら。
それはつまり。
「俺の萌えが…」
あ、やっぱBL関連だな。
白い目を向けながらも笑顔で投げ掛ける。
『選んでいいよ。
ただし、断ったらテストは自力で頑張りなね』
僕は普通の日常がほしいだけ。
大体が瀬尾のせいで大変な目に遭ってるのだから責任取ってもらわなきゃ割に合わない。
瀬尾は冷や汗だらだら流しながら言う。
「だ、だけども、だけどもだ李生?
世の中には“人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んじまえ”という言葉がありましてだな」
『ふーん、つまり?』
「殺されたくない!」
瀬尾の怯えている様子を見ても生徒会ってそんな物騒な集まりだったかなと思う。
にしても、恋路ねぇ。
生徒会長からは確かに好意向けられてるけど、他はよくわかんないんだよな。
懐かれてるのか好かれてるのか。
副会長からの嫌われ具合くらいわかりやすかったらいいんだけどね。
「高級スイーツ毎日献上するからご容赦ください!」
再び土下座する瀬尾に『(どんだけ生徒会のガードが嫌なんだか)』と頬杖をついた。
そこまで拒否されたらどうしようもない。
…はぁ、妥協するしかないか。
『わかったよ』
ため息混じりで言ったら瀬尾は満面の笑みで事前に買っておいたらしいスイーツを持ってきて僕に手渡すと去っていった。
それから教室で休み時間の合間にも瀬尾に勉強を教えていたら雛斗がやってきた。
「李生、わからないとこあって聞いてもいいかな?」
『いいよ、どこ?』
瀬尾は一度理解すればサラサラ解ける頭をしてるから、教えることは少ないので聞かれるまで放置して雛斗の質問を受ける。
雛斗も成績は悪くないが英語が苦手らしい。
『この文で、leaveは「出発する・去る」ではなく、leave OCで「OをCのままにしておく」の意味で使われてる。つまり、文の意味は「ドアを開けたままにしておく=ドアが開いている」だから、形容詞のopenを使うんだ』
「あー、なるほど!」
メモした雛斗は「ありがとう、李生!」と笑顔で言った。
「めっちゃわかりやすい!家庭教師向いてるよ!」
『ありがとう』
遠い目をして言った僕を雛斗は不思議そうな顔をして見て去っていった。
中学校時代、昴や他の舎弟に死ぬほど教えてたからかもな。
勉強嫌いがほとんどの舎弟達だったから、成績キープの重要性を根気強く説いて勉強させていた。
すると、なんだか教室の外が騒がしいことに気が付いた。
「やだー!勉強したくないー!」
「勉強しないと留年だってば!」
聞こえてくる喧嘩に嫌な予感がした。
あの声は間違いなく生徒会の双子だ。
そして喧嘩の声は確実にこちらへ近づいてきている。
そして、双子は僕の教室に現れた。
東雲由良が暴れる東雲夕を引き摺っていた。
「李生先輩、夕を説得してください」
『…なんで僕?』
「夕は李生先輩に懐いてますし、特待生で頭の良い李生先輩なら弟の留年の危機を救ってくれるかなと」
東雲由良は自信満々で東雲夕を差し出した。
東雲夕は不満そうに僕を見る。
舎弟を説得したやり方がコイツに通じるのかな。
僕の説得でこのポメが納得するんか??
追い返してもよかったけど、東雲由良は断固退かないと言いたげだった。
まぁ片割れが留年するのは一大事か…。
勉強をやめてじーっとこちらを見ている瀬尾の頭に手刀を入れて立ち上がる。
東雲夕の前に立つと
『…まず成績が下がるとどうなるか想像できる?』
「…怒られる」
『そう、怒られるよね。
それが続けばどうなっていく?』
「……?」
『わからない?
答えは自由がなくなるんだよ』
僕は指を立てて言った。
『成績が悪くなると塾へ行け、スマホ/ゲーム没収、補習来いと命令され従うしかなくなる。
最悪留年すればいいやなんて甘い考えしてたらそうなるってこと。
好きなこともできず、自由をなくすんだよ』
おわかり?と東雲夕の顎を指で持ち上げて問いかけると東雲夕は顔を青くしていた。
『ま、逆に言えば最低限の勉強してたら誰にも文句を言われないってことだから大人しく勉強しときな、わかった?』
指を離すと東雲夕はブンブンと勢いよく首を縦に振った。
納得したみたいだけどこれでいいのか?
東雲由良の方を見るとグッジョブと親指を立てていた。
「ありがとうございます、李生先輩」
『ま、後は頑張っt「まぁまぁ、そう言わずに僕達にも勉強教えてくださいよ」』
切り上げようとしたのに遮ってきやがったぞコイツ。
東雲由良はにっこり微笑んでお願いしてくる。
「夕も李生先輩が先生なら頑張れるよね?」
「!うん!」
東雲夕の餌待ちのポメラニアンのごとくキラキラした目を向けられて断るにも断れきれず。
まぁ瀬尾はほとんど手がかからないから別に構わないけどさ…。
生徒会と関わりたくないのに向こうからどんどん絡んでくるから頭が痛い。
その後気を抜けば逃げ出そうとする東雲夕にスパルタでビシバシ教えていたら怯えたポメラニアンと化してテスト期間終了後は暫く近づいてこなくなった。
東雲由良曰く東雲夕には僕が般若に見えていたらしい。
留年回避できたんだからいいだろ、感謝してよね。
東雲夕は僕のこと厳しいとか思ってるだろうけどさ。
そもそも僕は優しい人間じゃないんだよ。
夕「李生先輩怖かった…(プルプル)」
由良「でも厳しい分かりやすかったじゃん」




