【番外編】まさかこの噺が伏線だったとは思うまい。
李生が一年生の頃のお話。
これは物語の一年前の噺。
僕がまだ高校一年生だった頃。
知り合いが瀬尾以外いなかった僕は瀬尾ともクラスが離れて一人ぼっちだった。
けれど、わざわざ別クラスまで遊びに行くのは面倒でまぁ1人でもいいか、と思うことにした。
そんなある日、1人で移動教室のため廊下を歩いていると声をかけられた。
「天使君」
『?何』
振り返ると棗と楸がこちらへ歩いてきていた。
僕の両隣にやってきた二人はどこか身構えてる僕に気さくに話しかけた。
「俺は花野棗、よろしく」
「僕は奥山楸です、よろしくお願いします」
目立つ容姿をしてるだけにクラスメイトだとは覚えていたけれど、名前までは覚えていなかったため親切だなと思う。
『…天使李生、よろしく』
にこりともしない挨拶。
これまでの学生生活でも愛想がないとよく言われていたからこの二人も気を悪くするんじゃないかと思ったらそうでもなかった。
二人が離れていく様子はなく、三人並んだままだった。
「次の授業小テストあるみたいですが勉強されました?」
「えっ、今日だったっけ?」
『…あー、なんか言ってたね』
楸の投げ掛けにマジかと頭を抱える棗とまぁなんとかやるだろと強メンタルを見せる僕。
その後、楸はなんで敬語なのか尋ねたら“癖”らしい。
気付けば下らない話で盛り上がり、警戒心なんてなくなっていた。
それから、少しずつ話すようになり、数ヶ月が過ぎた頃には名前呼びも普通になりすっかり仲よくなっていた。
昼休み、教室で棗と楸と食べていたら、楸が唐突に言った。
「暇ですし、恋バナでもします?」
「お、いいね」
『えぇ、ここ男子校なのに?』
出会いないし、彼女なんていないし、恋愛トークできなくないか。
嫌そうな顔をするも乗り気な棗と楸に強制恋バナさせられることになった。
「まず、見た目のタイプは?
僕はだぼっとしたカーディガンが似合う可愛い系の人ですかね」
「俺も華奢で可愛い子かな」
『うーん、ボーイッシュな子?』
可愛い子も良いんだけど今までの経験上、大体性格悪いんだよね。
さっぱりした感じが僕的に関わりやすそう。
「では、性格は?
僕は穏やかで一緒にいて落ち着く人ですね」
「はっきりしていて優しい人かな」
『…悪いことをしたら止めてくれる人』
「何か犯罪でもやるご予定で?」
『違うよっ!
…、悪いことを悪いってちゃんと怒ってくれる人って貴重じゃん』
「「たしかに」」
恋バナというかただの好みの暴露みたいだったけど。
棗と楸は楽しそうだったからまぁいいか。
「李生さんが悪いことしてたら止めに行きますね」
「俺も全力で怒りに行くよ」
『えっΣ(・Д・)
…うん、ありがとう』
まさかこの噺が伏線だったとは思うまい。
棗「全く気付かれてないね」
楸「自分のことには鈍感なのかもしれないですね」




