誰にでも触れられたくない秘密はあるものだ。
番外編も書きたいけど最近想像力が欠乏している…(´・ω・`)
「天使先輩」
放課後、帰ろうと廊下を歩いていたら突然後ろから呼び掛けられ驚いた。
振り返ると藍色の髪をした東雲がいた。
…はぁ、東雲夕の次は東雲由良か。
藍色はオレンジより比較的落ち着いている性格らしいと瀬尾が言っていたのを思い出す。
『東雲君だっけ、何か用?』
わざわざ人がいない時間帯を狙って話しかけてきたのだから何となく察せないこともないけど。
東雲由良は少し暗い表情で口を開いた。
「どうして僕が甘いもの好きって知ってたんですか」
あー、やっぱりその件か。
この様子を見るに東雲夕は全部話してしまったようだな。
僕だって瀬尾から聞かされた情報通りアドバイスしただけなんだけどね。
『風の噂だよ』
「そんなわけない!
皆、生徒会だって、夕すら知らないように隠してたのに…」
心底悔しげな表情をする東雲由良に内心驚く。
エッ、嘘でしょ、マジで誰も知らないの?
瀬尾は逆にどうやって知ったんだ?こえーよ。
というか。
『なんで隠してたの?』
別に好きなら好きでよくないか?
隠す必要性がわからなくて首をかしげていると東雲由良はどこか思い詰めたような顔になった。
「僕と夕は同じじゃダメなんです。
甘いものが好きなのが夕、辛いものが好きなのが僕。
オレンジの髪が夕、藍色の髪が僕。
一人称オレが夕、一人称僕は僕。
僕と夕は違ってなきゃいけない」
わぉ、なんか激重感情抱いてそうだな。
同じじゃダメで違ってなきゃいけないなんて面倒じゃないのかな。
東雲夕はピカピカに明るくて何も考えてない様子で東雲由良も東雲夕といるときはいたずらっ子みたいな感じだったけど。
1人のときは確かに落ち着いた性格らしい。
僕はなんて返せばいいんだろう、と悩みながらも口を開く。
『何があったのかは知らないけど、ずっと1人で抱えるのはしんどいんじゃない?』
「!」
東雲由良は目を見開くと表情が泣きそうに歪んだ。
言えないことは誰にだってあるよね。
僕も元ヤンという過去を隠してはいるけど、瀬尾は知ってるからまだ気楽でいれる。
まぁ文化祭のときにネタとして脅してきた件は許さないけど。
暫く黙っていた東雲由良はポツポツと話し出した。
「僕と夕は中学校までは全てをお揃いにしてたんです。
髪型、髪色、服装、好きなもの、嫌いなもの、色んなものを。
授業を入れ替わっても誰も気付かないほど僕らは似ていて。
毎日のようにお互いの振りをして遊んでいました。
そんなある日、僕に好きな人できました。
彼女は穏やかな人で接しやすく、僕のことを大事だと言ってくれていました。
…でも、僕は見てしまった。
彼女が夕に言い寄っているところを。
僕は後から彼女にそのことを聞いたんです。
彼女はあっけらかんとして言った。
“お揃いだからどっちかが手に入れば構わない”と。
僕は夕のスペアで夕は僕のスペアだと思われていたことがショックでした。
僕はその日から“お揃い”をやめました。
だって、やめない限り、僕と夕は1人の人間として見てもらえないと思ったから」
そこまで言って東雲由良は口を閉じた。
わぉ、思ったより傷深そうだな。
双子ならではの闇というかなんというか。
“同じだからどっちでもいい”発言はそりゃ傷つくのも仕方ない。
でも、いくらそっくり双子とはいえ全て同じとは限らないと思うけどな。
とはいえ、東雲由良は自分の傷つきから東雲夕にも同じ経験をさせまいと正反対を演じているわけか。
なるほど。
『普通に女見る目なかったんじゃない?』
「…は?」
『そっくりな双子とはいえ少しの違いも見抜けない女なんか好きになるからだよ』
やれやれとポーズを取って言えば、カチンときたのか東雲由良が「なっ、それは…!」と言い返そうとする。
しかし間髪いれずに言った。
『甘いもの好きなら好きでいーじゃん。
我慢する生活続けて君は幸せになれるの?』
「………」
『なれないでしょ?
君は君のままでいていいんだよ。
きっと君自身を見てくれる人が現れるから』
「…そんなの、いるわけ」
『いなかったら僕を気が済むまで殴るなり何なりすればいいさ』
まぁ僕の勘って案外当たるから大人しく殴られるつもりはないけど。
東雲由良は暫く信じるか信じないかを悩んでいたようだった。
しかし、疑うのを諦めたのか吹っ切れた顔をして言った。
「もし現れなかったら…責任、取ってくださいね?李生先輩」
小悪魔のような笑みを見せる東雲由良。
東雲夕のときも思ってたけど当たり前に名前知られてるんだよなぁ。
十中八九あの会長のせいだろうなぁ。
「由良ー!
ってあれ、李生先輩もいる」
「夕」
仲直りしたからか元気な様子の東雲夕もやってきて、用は済んだかと僕は背を向けて歩き出しながら言った。
『仲良くやりなよ』
「!ありがとうございます」
「ねぇ、何の話してたの?!」
「秘密ー」
後ろから楽しそうに話す双子の声が聞こえてきた。
関わる気はなかったとはいえ、まぁ仲直りできたならいいかと思うことにした。
東雲由良から聞いた過去噺は記憶の奥底に置いておこうと決めた。
誰にでも触れられたくない秘密はあるものだ。
夕「李生先輩って何だかんだ優しいよね~」
由良「お人好しってやつでしょ」
夕「でも悪くないよね」
由良「…まぁね」




