気のせいだって思いたい。
個人的に風紀委員会の2人も好きなんだよなぁ。
30分の休憩時間ができたため、一旦着替えて教室を出る。
でも、出たはいいけど回る人結局いないんだよな。
瀬尾は明日退院したらしいから二日目の一般公開にしか来れないみたいだし。
まぁ「李生の高飛車メイドwktk」ってシぬほどうざいL○NE送られてきてたし、別に来なくていいんだけどな。
というか瀬尾だけ出禁にしてやりたい。
「李生?」
『あ、棗』
歩いてたら風紀委員会の仕事であるパトロール中の棗と遭遇した。
話を聞くとどうやら棗や楸も僕と同じく殆ど休みがないらしい、ブラック勤務同士だ。
特にすることもないし、棗についていくことにした。
賑わう廊下を歩きながら棗と駄弁る。
「李生のとこ人気らしいね、メイド喫茶だっけ」
『うん、(高飛車)メイド喫茶…』
人気ね…、と虚ろな目をして頷く。
確かにメイド喫茶なんだけどオタクのせいで要らん設定が追加されているのだ。
あのオタクだけは絶対に許さない。
しかし、不幸中の幸いにも棗の反応を見るにどうやらメイド喫茶のコンセプトは漏れてないらしい。
喜んでいいのかわからないが変に噂が広まって歩く度にヒソヒソされる方が嫌だ、耐えられない。
「気になるし、行ってみたいな」
『やめて来ないで』
これでもかと全力拒否を見せる僕に棗は驚いた顔をした。
いや普通のメイド喫茶でも来て欲しくないのに高飛車メイド喫茶なんてもっと嫌だよ。
「そんなに嫌がるなんて一体どんな喫茶店なんだい?」
『言ったら絶対来るから言わない』
「なるほど、ますます気になるけどな」
嫌がる僕をみてニコニコしてる棗はドSなの?
高飛車な僕見た時の反応怖いから出禁にしようかな。
来る気満々の棗に僕は阻止すべく思考する。
こんな時に出てくるのが瀬尾だ、ほんと嫌だけどアイツの知識はたまーに役立つ。
とはいっても瀬尾曰く僕の役立て方は使う相手の性癖を歪ませるのだとかなんとか。
だがそんなことは知らん!
僕は僕の平穏のために行動するんだ。
僕は足を止めると、棗の手を引く。
目を丸くして振り返る棗に、
『ニヤニヤしないでよ…、絶対後でからかうつもりでしょ?
絶対ダメ。
僕が接客担当終わるまで出禁だから!』
と言い放った。
ぷくっと頬を膨らませて少し怒ったフリをしつつも、手首を握る力は緩めない。
よし、瀬尾の言ってたツンデレヒロインのセリフを使ってやったぜ。
棗はそんな僕の演技に何故かとても嬉しそうな顔をする、なんでやねん。
「出禁だなんて悲しいな。
絶対からかったりしないから来ちゃダメ?」
チッ、流されくれないのか。
僕の理由に対策して切り返されてしまった。
やっぱり会長みたいに一筋縄ではいかないよな。
まぁあの人の場合はギャップや好意を利用したからうまくいったのもあるけど。
棗は僕と一年一緒にいたから生半可なあざとさは通じないみたいだね。
だがしかし、これで諦める僕ではない。
『…ダメ。
だって、あんな格好してるのを棗に見られるの、すっごく恥ずかしいんだもん…。
頼むから今日は他のクラスまわっててよ、ね?』
赤くなった顔を隠すように片手を頬に当てつつ、上目遣いですがるように引き留める。
瀬尾の言ってたツンデレヒロインが相手に本音を見せるセリフだ。
これでどうだ、と内心ほくそえんでいたら棗は僕の表情を穴が空きそうなくらいにじっと見ていた。
その瞳はあまりに熱が篭っていて少し怖かったが逸らせなかった。
少しの間見つめ合うと瞳が元に戻った棗はふっと笑う。
「…仕方ないな、君にそこまで言われたら強行突破はできないね。
他の人に感想聞いてみようと思う」
『聞かなくていいから!』
そう言い返すと棗は「はいはい、わかったよ」と仕方なさそうに笑って僕の頭を撫でる。
すると、後ろから声がかかった。
「おや、委員長と李生さんではありませんか」
振り返ると楸がいた。
風紀委員会の2トップが揃ったな。
棗は楸のもとへ歩いていくと仕事の話をしていた。
「楸、1年は問題なさそう?」
「はい、滞りなく」
「なら、次はステージの方頼んだ」
「畏まりました。
…会長は李生さんとデートですか?」
「羨ましいだろ?」
「はい、この上ないですね」
…仕事の話してんだよね?
なんか楸ニヤついてるけど。
人が多いから会話は聞こえてこないが嫌な予感がした。
でもまぁ仕事の話してるってことにしとこ、薮蛇をつついて蛇を出す必要もあるまい。
会話が終わったのか笑顔を浮かべた楸は僕にも手を振って去っていった。
「待たせてすまない、李生はあとどれくらいで戻るんだい?」
『んー、15分くらいかな』
「わかった、何か食べる?」
『うーん、焼きそば食べる』
そう返すと棗に案内され屋台飯を売ってる教室に着いた。
棗マップも見ずに案内してたけどまさか全部の教室の出し物覚えてるの?
気になって聞いたら爽やかな笑顔で「たまたま記憶にあっただけだよ」という答えが返ってきた。
絶対たまたまじゃない…と思いながらも追及はしなかった。
焼きそばを買うと席に座ってもぐもぐ食べる。
棗は食べてる僕をじっと見ていた。
「ソースと青のりついてるよ」
『ほほ?(どこ?)』
クスクス笑う棗に指摘され箸を止める。
焼きそばって美味しいけど口の周りベタベタになるんだよね。
食べるのを中断しようとしたら棗が僕の口元にすっと手を伸ばしてきた。
そして口についてたソースと青のりを拭う。
ティッシュか何かで拭くのかと思ったらペロリと舐めた。
『!?』
さらっとカレカノがするようなことをされて固まってしまった。
エッ、えっ??
普通友達にしないよね!?拭くのはまだしも何故舐めた!?
今のを瀬尾に見られてたら祭りかってくらいに騒がれて最悪だったな、やっぱいなくて正解だった。
「どうかしたかい?」
どうかしてるのはお前だよ!と叫びたかったけど不思議そうに首をかしげてる棗は無自覚らしい。
無自覚であの動作するとか天然タラシじゃん。
というか僕女じゃなくて男なんだよな。
棗も一年のとき華奢で可愛い子がタイプとか言ってたし対象もきっと女…だよね?
対象じゃない男にもそんな行動するようになるなんて男子校って距離感までバクらせるの??
怖いんだけど。
『なんでもない…』
僕は何も言わず棗の天然行動ということにして流すことにした。
その後、焼きそばを食べきると丁度いい時間になったため棗と分かれて自分の教室に戻った。
ら、何故か午前とは違う衣装着せられて死んだ魚の目になりながらも仕事をこなした。
それにしても、まさか棗とBL展開だなんて。
気のせいだって思いたい。
棗「可愛かったなぁ」
楸「本当に羨ましい限りです」
棗「こればかりは役得かなぁ」




