お帰りくださいませ、ご主人様。
高飛車メイドセリフ集欲しい。
3週間後、文化祭準備期間が終わった。
そして、今日が本番の文化祭当日。
メイド服や接客訓練はどうなったのか?
誰かに文化祭回るの誘われなかったのかを教えてくれ?
野暮なことは聞くんじゃない。
思い出したくもないしメイドに至ってはこれから着て実践しなきゃいけないんだよ僕は!
バタバタ慌ただしい雰囲気の中、僕はメイドの格好をクラスメイトにより完成させられて虚ろな目で開店を待っていた。
すると、視線を感じてそちらを見るとオタクが血走った目で僕を見ていた。
え?こわっ。
「やはり李生殿は金髪ツインテールがよく似合っておられますな。あれでツンとした接客など完璧な高飛車メイドではありませぬか。メイド服はミニ丈も大変良きですがやはり李生殿の気品あるオーラにはロング丈が最高ですな。そして上品でありながらもフリルたっぷりで可愛さも加味されており、リボンで引き締まった細いウエストもまた…ブツブツ」
恥ずかしいから僕の格好を小声で実況すんな、オタク!
見なかったことにして教室内に視線を移した。
教室の喫茶ルーム自体はいつの間にか完成してて驚いたんだよね。
メイド喫茶っていうからラブリーな感じかと思いきやアンティークな飾り付けだし。
てか、僕メイドの訓練以外なんもしてなかったけどいいのかな。
…まぁいいか、終わったことだし去年も似たような感じだったし。
あー、始まって欲しくないな。
2日間もあるんでしょ?
しかも明日は一般公開だからもっと多くの人が来るわけで。
僕を殺す気なのかな?
人前でこんな性癖の塊みたいなメイド接客をしなきゃいけないなんて。
頼むから会長は来ないで、てか来るな。
こんなん絶対性癖歪むから、これ以上会長が変になったら取り返しつかんて。
なんて思ってたら。
何やら教室の入り口が騒がしいのに気付いてそっちを向くと。
『(か、会長…!?)』
普通にいるし、なんなら普通に整理券一番勝ち取ってやがる。
なんで来たの!?
てか、なんでもう並んでるの!?
自分のクラス放置してまでして僕のクラス来たんか!?
まさか、文化祭回るのやんわり断った仕返しのつもり!?
表には出さず頭の中で混乱していると、
「李生様っ、会長様から指名です」
クラスメイトの同じメイド役のチワワに笑顔で告げられ絶望する。
そう、僕のクラスのメイド喫茶は指名可能なのである。
くそ、会長が最初の客とか無理ゲーだろ。
とか思ってたら続々指名が入ってきた。
「えーと、生徒会の信楽様と柊様も指名入ってます、他ー…」
最初全部生徒会じゃねぇか。
嫌がらせかなぁ、僕への。
会長の性癖歪めることも不安だけど、反応が予測できない信楽も相当怖い。
そして柊はなんで来たのかな?笑いに来た??
結局姫役決定したらしいから仕返しに見に行くか。
いよいよ、開始時刻間際になった。
高飛車メイドなんてやりたくもないけど、ここでひよって適当にするのも格好悪い。
教室の入り口に立ち、意識を切り替える。
深呼吸をして目を閉じ、開く。
教室のドアを開けた。
「!り…」
『お帰りなさいませ、ご主人様』
うっすらと微笑む僕を見て頬を赤くし破顔する会長。
僕は途端にストンと表情を落とす。
『…って、そんなに嬉しそうな顔をしないでくださいます?
気持ち悪いですわ』
「!?」
さらっと髪を手で靡かせ会長へ軽蔑した目を向けた。
会長は最初赤面で口をパクパクさせていたが、これが高飛車メイドのコンセプトだと理解したのか少し落ち着いた。
『今日はお帰りになられましたのね。
あなたが不在の間、館の空気が澄んでいてとても快適でしたのに…、残念ですわ』
そう言いながらも仕方なくと言う風に(まぁ内心も同じだが)席へと案内する。
会長はガチの高飛車メイドムーヴをこなす僕に終始困惑していたが「メイド服、似合ってるな」と褒めてきた。
『褒めても何も出ませんよ。
でも目は腐っていないようで何よりですわ』
ツンとした返しだったが会長は慣れてきたのか「照れ隠しが上手だな」と笑った。
今のはアドリブだけど1ミリも照れてないからな?
でも、いつも遠慮して控えめにしてるけど、俺様会長に強気で出れるこのキャラクターはおもしろい。
席についてからは指名は関係ないのでメニューを置いて去る。
去り際に会長が「こういう李生もいいな」と呟いていたのが怖かったが聞かなかったことにした。
僕は会長の新たな扉など開いていない。
その後も生徒会が続いた。
「李生ちゃーん!うわ、超絶可愛い!
写真撮っていい!?てか撮ろ!!」
『よく口の回るお方ですこと、お黙りになってくださいます?
私の注意が聞けないのなら帰っていただいても構いませんのよ』
案の定僕を見て騒ぐ信楽には笑顔で帰れアピールをしてみたり。
「よう似合っとるね、流石学園の姫やわ」
『ふふ、それ以上禁句を仰ったら出禁にいたしますわよ、ご主人様』
はんなりしながらも謎に煽りを忘れない柊に圧のある微笑みを浮かべて釘を刺す。
生徒会はこれで最後だったからよかったけど、その他も指名が続々入り目が回りそうだった。
これで一日目はしんどすぎる。
なんとかシフト交代できたものの、僕だけ指名がえげつないため休みの時間が30分ほどしか取れなかった。
文化祭ブラックすぎでしょ、もっと休ませろ。
客にこう言ってしまいたい。
お帰りくださいませ、ご主人様。
『柊はマジでなんで来たの?』
百「おもろそうやなって思ったから?」
『いや疑問符で返さないでよ』




