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フロントガラスに広がるのは、どこまでも続く真っ直ぐな道。目的地までは、まだ数百キロある。けれど、この孤独で自由な時間が、彼女の心を静かに満たしていく。
アクセルを踏み込む右足に、確かな力がこもる。 夜を越えて、光の中へ。
この長い長い道が、自分をどこまで連れて行ってくれるのか。その答えを知るために、彼女は今日も大型のステアリングを力強く握りしめる。
時速八十キロ。
車間距離、四十メートル。
この物理的な距離こそが、香にとっての優しさだった。並走するドライバーたちは、香が女であることも、口下手であることも知らない。ただ、この巨大な塊を真っ直ぐに、安全に運ぶ「プロ」として、そこに存在している。
フロントガラスに広がるのは、どこまでも続く真っ直ぐな道。 目的地までは、まだ数百キロ。 夜を越え、光の粒子が舞う山脈を背に、香は大きく一つ息を吐いた。




