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夜明けは、もうすぐそこまで来ていた。


心臓の動悸がようやく落ち着きを見せ始めた頃、香は滑り込むように最寄りのパーキングエリアへと入った。大型専用レーンに相棒を停め、深く息を吐いてからドアを開ける。


ステップを降り、真っ先に運転席側のドアへと目をやった。


外灯の鈍い光の下、そこにははっきりと、鋭い衝撃の跡が残っていた。塗装がわずかに剥げ、鋼鉄の肌が小さく歪んでいる。


それは間違いなく、あの速度、あの角度で叩き込まれた「一撃」の証だった。


「……本当に、やったんだな」


指先でその凹みに触れる。冷たい金属の感触が、自分が死の淵から引き戻された事実を改めて突きつけてくる。


もし彼が蹴らなければ、今頃このトラックは、そして自分は、取り返しのつかない残骸に変わっていたはずだ。


香は激しく波打つ感情を鎮めるように、顔を洗おうと歩き出した。


深夜のパーキングエリアは静まり返り、自販機の唸り声だけが響いている。洗面所へ向かう道すがら、ふと視線を「二輪車専用スペース」へと向けた。


そこには、一台の黒いハーレーダビッドソンが佇んでいた。


余計な装飾を削ぎ落とし、闇に溶け込むようなマットブラックの巨体。


走行直後の熱を帯びたエンジンが、時折「キン……」と、生き物の吐息のような金属音を立てている。間違いない。あの時、闇を切り裂いて走り去った影だ。


その傍ら、一人の男がベンチに深く腰掛けていた。


全身を黒いレザージャケットに包み、ヘルメットを脱いだその頭からは、夜風にさらされた髪が乱れている。彼は香が近づくことに気づいているはずだが、こちらを見ようとはせず、ただ静かに夜の空気の中へ煙草の煙を吐き出していた。


香の足が止まる。

 

洗面所で冷たい水を浴び、思考を整理した香は、再び黒いハーレーの元へと歩を進めた。自分でも不思議なほど、足取りは迷いがない。


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