13
十分ほどして湯から上がると、鏡に映る自分の肌は桃色に上気していた。
銭湯から上がったばかりの脱衣所。まだ肌に残る水分を大まかにタオルで拭き取ると、香はすぐにその実用主義の塊を手に取った。
桃色に火照り、微かに汗ばむ素肌に、ブランドのロゴすら付いていない、極めてシンプルなベージュのシームレスブラだった。
Tシャツに響かないことだけを考えて作られたような、飾り気のないつるりとした質感。
おしゃれ用の勝負下着とは程遠い、速乾性と通気性に全振りのそのインナーからは、彼女の地に足のついたリアルな生活の匂いが伝わってくる。
もちろん、お揃いのショーツも徹底して実用主義だった。
ブラと同じく縫い目のないヘム仕様のベージュで、レースやリボンといった装飾は一切削ぎ落とされている。
ヒップを包み込む生地は薄く、驚くほどなめらかに肌に吸い付いていた。ウエストや足の付け根を締め付けることなく、第二の皮膚のようにぴったりとヒップを包み込んだ。
タイトなボトムスを穿いても決してラインを浮き上がらせないそのストイックな佇まいは、色気を取り繕うことのない、彼女の潔い日常そのもののようだった。
これから再び、十トンの衝撃と何時間も向き合うのだ。
お洒落なレースや締め付けの強いワイヤーは、長距離ドライバーの戦場においてはただの障害物でしかない。
再び白いソックスを履き、紺色のツナギに身を包む。身体の芯に残る余熱が、これからの夜の走行を支えてくれるはずだ。
番台で冷えた飲み物を買い、外へ出る。
夕方の冷気が、火照った肌に心地よい。駐車場で待つ銀色の相棒を見上げ、香は小さく頷いた。
「よし。行こうか」
再び運転用のサンダルに履き替え、彼女は軽やかにキャビンへと飛び乗った。
目的地、目標集積所まではあと一息。
エンジンの始動とともに、香の瞳は再び、鋭く、静かなプロの光を宿した。




