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二日目の午後は、予定を少しだけ調整して「銭湯」をルートに組み込んだ。
長距離ドライバーにとって、風呂は贅沢な娯楽だ。
大型トラックを停められる広い駐車場を備えた銭湯となると、その数は極端に絞られる。タブレットの地図と睨めっこし、路肩の広さや進入角度をシミュレーションしながら、ようやく一軒の古びた公衆浴場を見つけ出した。
街道沿いに現れた、色褪せた暖簾。
香は狭い路地を慎重に見極め、巨体を滑り込ませた。サイドブレーキを引く音が、静かな昼下がりの街に響く。
キャビンの中、香は運転用のサンダルを脱ぎ捨て、使い古したサンダルに履き替えた。
運転席のドアを開け、手すりを掴んで地面に降り立つ。
着替えを詰め込んだスポーツバッグを肩にかけ、香は入り口へと歩き出す。 アスファルトを蹴るたびに、サンダルの中で白いソックスがわずかに動く。
番台へ向かう道すがら、やはり数人の通行人の視線が刺さった。
路肩に鎮座する十トンの巨体と、そこから降りてきた若い女。けれど、香はもうそれらをやり過ごす術を知っている。
顔色をうかがう必要はない。自分はただ、汗と疲れを流し、またあの道を走るためにここへ来ただけだ。
ガラガラと引き戸を開けると、湿った木の香りと石鹸の匂いが鼻腔をくすぐった。香は番台の老婆に軽く目配せで挨拶を済ませると、脱衣所へと足を踏み入れた。
白いソックスを脱ぎ捨て、素足になった瞬間、ようやく「戦場」から一時退却したような解放感が、足元からじわりと広がっていった。
マンションの狭いユニットバスでは、どうしても「作業」として身体を洗うだけになってしまう。四方の壁に肘をぶつけ、膝を抱えて浸かる湯船は、香にとって休息とは呼べなかった。
だからこそ、こうして苦労してでも、天井が高く、手足を思い切り伸ばせる銭湯に惹かれる。




