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シネマね!~剣とナゴヤがB級ホラー~  作者: 山田中ミキヤ
後章 彼女は選んだ道を行く
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外郎之剣

 名古屋城をぶっ壊す怪獣といえばモスラとゴジラで相場が決まっているのだが、現実に大暴れしているのはそのくらい大きな一匹の蛇だ。

 ヤマタノオロチは頭の八つある怪物だが、今は頭が一つの大蛇でしかない。

 他の頭は七人の巫女がすでに封じてしまったからだ。

 その頭部には暗雲が濃く渦巻き、グワシャンと絶え間なく雷を落としていた。

 蛇腹でそこらを這い回り、ビルや高架をつぎつぎと破壊していた。


「あんなむちゃくちゃしやがって……」

 大樹は舌打ちした。

「正面に回る。たぶん、チャンスは一回だ」

 ブギーマンが言った。

「一回って、方法もわかんないのに?」

「そうだな。さて、どうする?」

 蛇になろうが、巨大化しようが、腐っても葵だ。方法は一つ。

「ぶん殴る」

「俺もいろんな神様にケンカ売ってきたけどさ、あれを見て言えちゃうんだから、たいした度胸だと思うよ」

 白鳥が旋回し、大蛇に向かって突き進む。

 グワシャーンっと、雷が側を落下した。


「伏せてろ。上で丸焦げになられちゃ意味がない」

 言われるまま体を伏せた。

 側に近づくと、大樹の半身ほどのうろこが見える。

 それらが景色として流れ、やがて巨大な目玉がぎろりと大樹を捕らえた。

「今だッ!!」


「こんのぉー、あほんだらああああああああ!!」


 大樹は草薙の剣を持って大蛇の頬を掠める。

「ぎゃ──────ッ!!」

 大蛇の悲鳴が高鳴り、鮮血が散る。

 だが大暴れは収まらなかった。

「あんまり意味なかったな」

「うるさい黙ってろ」

 大蛇の逆襲が始まった。こちらに頭を向け、巨大な口をぱっくり開く。

「私に文字通り歯向かうとか千年はええよ!」

「あいつ何歳だと思ってんのよ」

 ブギーマンの余計な茶々を無視して、大樹は身構えた。

「おい、ちょっと……どうすんの!?」

 さしものブギーマンも焦りを見せた。

 大樹は大蛇に向かって跳躍する。

 大蛇の口が迫る。

 二人の過ごした名古屋を突き崩しながら、大蛇が迫ってくる。


〝どんな手段であっても構わない。私には大樹ちゃんが必要なんだ〟


〝一緒にいられなくても構わない。ここで、ただ待っていてくれればいい〟


 嘘もごまかしもあった。でも、名古屋で過ごした日々は真実だ。

 それを、あいつ自身に消させるものか──ッ!

「全てを嘘にするなッ!! あおいいいいいいいいいいいいッ!!」



「……っく……ひっく……」

 真っ暗な暗闇の中で、葵は泣いていた。

 あいも変わらず、めそめそと泣きじゃくっていた。

「……ごめんなさい……っく、ごめんなさい……ッ」

「……」

 大樹は黙ってそれを聞いていた。


「私……大樹ちゃんに、ここに居て欲しかったんだ……っ。

 名古屋が消えちゃうとか土地神とかどうでもよかったんだ……っ。

 全部全部、私のわがままなんだッ!」

「……」

「だから、私は……、え」


 ばこーん。


 大樹の拳が葵の顔面にめりこんだ。

「ここは、、容赦なく殴るところ、、なんだね……?」

「わたし的には」

「さすがです」

 ぼたぼたっと零れる鼻血を抑えて、葵は呻いた。

「いつまでもめそめそ泣いてるな。

 なんでお前だけが私を必要にしてるんだよ。

 どこに行ってもダチはダチでしょうが。

 それを嫌われちゃうとか行かないでとかうじうじうじうじ蛇みたいに」

「ごめん、蛇なの」

「知ってる。

 ──いいか、

 ……二度といわないからよく聞けよ」

 大樹は葵をそっと抱きしめた。


「どこまでもお前がついて来てくれて、うれしかったんだ。

 いつも一緒に居られて、楽しかったんだ。

 間違えんな──私とあんたは、この場所に居た。

 だから、どこにいっても私の場所はここにあるんだ。

 あんたがいるかぎり、ここは私の居場所なんだ。

 ……わかったか?」

 葵は大樹の胸に顔をうずめて頷いた。


「……じゃあ……帰ってきてくれる?」

「気が向いたらな」

「うん。……信じてる」



 大樹はセントラルタワーの屋上に立っていた。その側には葵が居る。


 大蛇が正面から襲ってくる。




「なんであいつ、消えてないのよ」

「なんていうかな。

 力が余っちゃったっていうのかな」

「うげぇ。

 あれと戦わなきゃいけないわけ?」

「大樹ちゃんと私なら、大丈夫だよ」

「だといいけど。──いくよ」




 大樹は草薙の剣を構える。

 葵が発光し、剣に吸収された。


 すると、大樹の体に変化が起こる。

 服装は神々しい巫女衣装に代わり、纏めてあった髪ははらりと長髪に戻り、それを縫うようにかんざしが差し込まれる。


「草薙の剣ってさ、ヤマトタケルが使ったときに名前が変わったんだよね?」

 大樹が尋ねると、葵はうーんっと声を上げた。

「そうだね。

 どうせだから、名前、かえちゃおっか。

 外郎之剣(ういろうのつるぎ)とかどう?」

「え。そんなんでいいの!?」

「だって、大樹ちゃんが名古屋で一番好きなものだから、そんな感じが良いかな」

 歴史に名を残す名刀が個人の趣向で名前を決めてしまってよいものかと。

「あー、まあ、本人が良いって言ってんだから、いいか」


 大樹は草薙の剣、改め外郎之剣をかざした。

 雷──神の鳴り声が響き、外郎之剣は閃光を放った。

 それを、振り下ろす。




「ギャ────────────ッ!!」




 大蛇の絶叫が名古屋中に響き渡った。

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