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MICHI  作者: 104


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4/5

4.雨が通りすぎれば…

 なんでだろう?どうして?私は芝の道を進み、また別の広場にたどり着いた。

 突然の変化に対しある程度の免疫はあるつもりだった。だから多少のことでは驚くことは無くなっている。でもそれを考えていただけにびっくりしていた。今までは本当に余裕がなく、今ここにある現実を受け止めるだけで精一杯だった。だけど今の私は、それまでの私と確実にちょっとだけ違っている。人類の進歩からすればたいしたことがないかもしれないが、私的にはかなりの進歩だ。月に人類が一歩を踏み出したのと同じくらい画期的なこと、でもないこともちゃんと気が付いている。成長しているのだ。でも、しかし、だけど、私は今、イスに座っていた。広場の真ん中にポツンと置いてあるイスにちょこんと座っていた。けっこう気軽に生きてきた私。長いものには巻かれてきた私。上司にだって、先生にだって、親にだって逆らったことがちょっとしかない私。I LOVE PEACE!だからこれはちょっとやばいと思うことや、もしかしたら自分が不利になることに対しては目を瞑っていた私だった。いったい私に何が起きているのだろう?このままノー天気に進むと災いが起こるのではないか?そんな不安が私にはあったのだ。でもイスに座って考えていても何も答えが見つからないことも事実。そもそもこのイスが私を悩ましている原因!?まんまとこのイスに操られているのか?それとも私がイスを呼び出したのか?考えれば考えるほどわからないことばかりだ。私の中で様々な葛藤が膨張していった。頭でも冷やせば何か進展はあるのか?なんて思っていると雨なんか降ってきたりするのかもしれない。でもそれだけは勘弁してもらいたい。なんてったって、私は雨が大っ嫌いなのだから。

 それは、私が中学生の頃に遡る。

 私は陸上部だった。それもリレーの選手。アンカーだった。中学の頃というのは、それほど力の差はなかったのだと思う。だって私が4人のうちの1人として選ばれたくらいだからだ。なんとなく陸上を選び、いつの間にかリレーの選手として走っていた私。個人競技ではない以上、長いものに巻かれるタイプの私は頑張ってしまっていた。他の3人に迷惑はかけられない。ただそれだけの理由で頑張っていた。だが、他人からするとあいつは熱心だと思われていたみたいだ。後から聴いた話なのだが、リレーのメンバーはそれほどやる気がなかったが、私が頑張っていたからなんとなくやっていた。そしたら夢中になっていたというのだ。まー、悪いことではないので結果オーライだったのかもしれない。でも、だからと言って、私たちのチームはそれほど速くはなかった。地区予選を通るか通らないかギリギリのチームだったのだ。

 なんであれ一生懸命やっていたことだ。負けるのは悔しい。悔しかった。アンカーであった私はいつも最後の屈辱を受けていた。だから第一走者、第二走者、第三走者よりも「負け」を感じていた。ただの思い過ごしかもしれない。本当は私より皆の方が悔しさを噛み締めていたのかもしれない。そんなことはどうであれ、レースの度、少しずつ悔しさを蓄積していたのだと思う。

 そして、陸上生活最後のレース。その日は雨が降っていた。最後ぐらいいい成績ってやつを残したかった気持ちが強かった。今思えばそうだったんだと思う。いくら最初から弱いと分かっていても、いくら勝ち目がないと分かっていても、その時はとっても寂しかった記憶がある。私はゴールに向かいトラックを走りながら泣いていたのだった。その時、私の脳にインプットされたのかもしれない。それは何事も一生懸命しないこと。雨の日は、あの走って泣いたことを思い出すことを・・・。

 雨が降ってきた。

 なぜだかちゃんとそれを待っていた気がした。私はイスを立ち上がり、進むことを選んだ。私が何気に望んでいたからなのか、雨は次第に激しくなっていった。せっかくの服がびしょぬれで台無しだったが、ここでネガティブになるのは絶対いやだ!!それだけは止めようと考えている私もいた。何だか雨を歓迎できる気がしたのだ。そう考えると雨の中の散歩も悪くない。本当に目が覚めたみたいだ。そして私は笑っていた。立ち止まり空を見上げた。雨粒が目に入ってきた。雲が異様に速く流れていた。傘は必要ない。風がドライヤーの変わりに私を乾かしてくれる。雲の流れを見て分かるような気がした。風は私の味方のように感じていた。しばらくすると雨は止み、風が私を包んでくれた。

 私はここのからくりがちょっとずつ分かってきたみたいだ。

 それは道を進むこと。

 私は散歩という行為が好きだった。一人になりたいと思うときは必ず散歩した。一人暮らしなんだから一人になっているだろうと思うかもしらないが、そうじゃない孤独感を味わうには人気がない夜の町並みを散歩する方が好きだった。

 森が段々と暗くなっていった。星が幾千幾万と見えるようになるまでそれほど時間はかからなかった。きっと私が思っていることはほぼ当たっているに違いない。そう確信がもててきたのだ。

 なんとなく理解していたつもりだが、歩く道が分かれることはなかった。後にも先にもハデな服とシンプルな服がかけてあったあの道だけだった。ちゃんとお腹がすくと間もなく広場が現れ、そこにはテーブルがあり、食事があった。ここは私だけの世界。もう話すことを必要としない世界。誰に気兼ねすることもなく、長いものに巻かれるわけでなく、自分が行きたい道をひたすらすすんでいった。なぜか眠たくはなかった。夜になっても朝がきても歩いていた。別に急いでいる旅ではないが、なんだか変わりばえしない景色を歩くのが私の仕事のような気がした。

 でも、ゴールがない散歩は私には荷が重すぎたのかもしれない。私がまだこの世界をちゃんと理解していないからこんな状況に陥ったのだ。そう最初は認識していた。だがそれすらも思わなくなり、けどこの世界のルールや、この世界での生き方にかんしては要領をえてきた私は、散歩することを拒否したいと思い始めたのだった。

 あの靴も、オムライスも、服も、雨も、風も偶然じゃなく必然だったのだ。

 そんな仕組みを理解していった私はだんだんと散歩という行為が意味を持たない気がしてきたのだった。

 そして、いつもより大きな広場にたどり着いた。

 それが私への答えだった。

 その広場はそれまでの広場とそれほど変わらない広場だと思ったが、それは違った。いたるところで光が見え隠れしていた。よーく耳を澄ますとクラッシクだったり、ロックだったり、演歌だったり、様々な音楽が聞こえた。へたくそな歌や耳障りな楽器の音もそこにはあった。それまで私一人の世界だと思っていた確信が雪崩のように崩れていった。

「あなたはどこから来たんですかな?」

 頭の中が真っ白になった私は何も言い返せないでいた。

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