番外編5 プロポーズ
あっという間に、高校や大学も終えて、俺はそのまま城洛大学の助手に抜擢され、葵音は図書館司書になっていた。
大学生になってから、サークルやバイト、勉強などで忙しかったが、葵音といる時間だけは惜しまなかった。
そして、社会人になってからも職種は違うながらも、ほぼ毎日会っていた。
「…………ねぇ咲翔、これ実質同棲じゃない?」
「ふぇ?」
ふと言われた言葉に、思わず大きな声を出してしまった。隣の部屋にはいつの間にか大学生になっていた奈緒音、向かいの部屋にもおじさんとおばさんが寝ている。
「だってさ、どっちかの家に一緒に居ることのほうが多いじゃん」
「…………確かに」
「(待ってるから)」
耳元で囁かれた。その意味が分かった。
…………明日は早くに仕事を切り上げることが確定した。
「すみません。これ、お願いします」
俺は、無理を言って早く仕事を切り上げ、ジュエリーショップに来ていた。
「ありがとうございました」
城洛地方では有名なデートスポットに来ていた。
今でも覚えている。初めてここに来たとき、葵音のはしゃいでいる姿を。葵音は昔から一見は大人しく見える。
けど、好きなものを見るとはしゃぐのは今も昔も変わっていない。
「葵音、お待たせ」
「ううん、待ってないよ」
そこには、一段とおしゃれをしている葵音の姿があった。後ろには城洛地方の夜景が広がっている。
「夜景、キレイだね」
2人で隣り合って、夜景を眺める。もちろん、手を繋ぎながら。
遠くで、お城のライトアップが開始されたのがはっきり見えた。
城洛大学の創始者の重臣が仕えたお城だ。おじいちゃんはその重臣の跡を学長として継ぎ、俺もそこで働いている。
「……じゃあ、そろそろ行くか」
「うん」
月光と夜景に照らされた葵音を見て、色々な思い出を思い出す。小さい時から紡いできた思い出。
「咲翔、どうしたの?」
俺は、片膝をついた。
「…………葵音、俺と結婚してくれ!!」
小さなぬいぐるみが付いている小さな箱を取りだし、指輪を見せた。月光でダイヤが光る。前にここに来たときに、ショーケースに並んでいるこれを葵音がチラッと見ていた。それをずっと記憶していた。
まだ残っていてよかった。さっきジュエリーショップに行ったとき、これしかないと思った。
「…………もう準備してくれたんだね。はい、喜んで」
葵音の左薬指にゆっくりその指輪をはめた。少し緊張して手が震える。けど、確実にはめた。
「うれしい…………」
葵音の目から涙が溢れていた。指につけられた指輪を見ながら。その様子を見て、俺も泣きそうになった。
けど、それを堪えて葵音に抱きつく。
もう、あんな思いはさせない。これからもずっと。
いつの間にか、何組かのカップルが来ていたらしい。
拍手が聞こえてきた。俺たちは、急に恥ずかしくなって、そそくさと建物の中へと入っていった。




