番外編2 雪
夜ご飯は、葵音の家で食べることになった。
母さんたちにも許可を取ったから、大丈夫。まだ、付き合ったことは話してない。
メニューは、豪華だった。
ドレッシングのかけ方が綺麗なサラダ、ブリの照り焼き、ステーキに、お赤飯。そして、中央に置かれていたのは、ケーキだった。多分、手作り。
…………この短時間で用意したん?
というか、お赤飯はどっちの意味で、用意してんの?
「…………このメニュー何?」
「何って、お祝いよ」
「このケーキ、奈緒音が作ったんだ!!」
「…………あ、ありがとうございます。こんな豪華な」
「いいのよ。せっかく、彼氏さんになったんだし」
…………お赤飯用意した理由、そっちの意味の方が高そう。なんか、急に恥ずかしなってきた。
「そうだぞ。さらに一歩、公認家族に近づいたしな」
…………おじさん、顔赤くない?もしかして、酔っ払ってる…………?
「もう…………」
葵音はいつも通り、呆れていた。けど、幼馴染として普通だと思っていた光景は、今はかわいいと気づけた。
◇ ◇ ◇ ◇
次の日、朝早くに目が覚めた。外は薄っすらと暗い。
そんな暗い中でも分かるほどに、雪が積もっていた。
今も降り続けている。きっと、昨日から降り続いているのだろう。
この地域で、こんなに降るのは珍しい。
雪に慣れていないせいか、何歳になっても心が躍る。
写真を撮ろうと思い、スマホを手にする。一件のメッセージが入っていた。
「奈緒音が、咲翔と雪だるま作りたいって言ってるんだけど、良い?」
「そっち行くわ」
すぐに返事をした。断わる理由がない。
「咲翔様、おはようございます」
「おはようございます。申し訳ないんですけど、車って出せますか?」
三明さんは、メイド長兼俺の担当になった。昨日決まったらしい。
「大丈夫でございます。葵音様のご自宅ですか?」
「はい。よろしくお願いします」
三明さんは、深々とお辞儀をした。その顔には笑顔があった。
この邸宅の主であるおじいちゃんが、昨日のうちに、ここの使用人さん達は感情を隠さなくて良いという制度にした。幾分か過ごしやすくなった。
横に待機している使用人さん達の表情も、穏やかだった。きっと、付き合っていることは薄々気付いているのだろう。
◇ ◇ ◇ ◇
――ピンポーン
「咲翔お兄ちゃーん!!」
奈緒音が玄関を勢いよく開けて、飛びかかってくる。
鳴らしてからすぐに出てきたから、玄関に居たのだろう。
「もう、コケるよ。咲翔、おはよう」
「おはよう、葵音」
「いっぱい積もってる!!」
その間、奈緒音は、顔が白い息で覆われそうなほど、雪の上で飛び跳ねていた。
それから、俺たちはまぁまぁな大きさの雪だるまを作った。3人で協力して、大きいながらも綺麗な形になっていた。
「裏から木の枝取ってくる!!」
「ごめんね。明日も学校なのに」
「ううん、そんなんどうでもいいよ。こうやって、居るだけでも楽しいんやから」
「咲翔…………」
居るだけでも楽しいのは昔からだった。けど、今は一段と楽しい。
「…………ん」
葵音の方を見た。目を瞑っていた。…………意図は分かった。俺は、顔を近づける。
――チュッ
「お姉ちゃんと咲翔お兄ちゃん…………?」
「「あっ…………」」
いつの間にか、奈緒音が戻ってきていた。
…………見られた。
「…………奈緒音、忘れて」
今すぐ薄手になりたい気分だった。




