第58話 一城康俊
次の日、ようやく学校に登校できた。
葵音とは、途中から一緒に登校する。
いつも通り…………とまではいかないけど、無いよりよっぽどいい。
…………生徒会の人たちにも、謝らないとな。
「おお、咲翔ずっと休んでどうしたん?」
「……泰斗、早ない?」
「今日はたまたま」
「…………風邪引いてさ」
「そうやったんや」
授業は、聞けた。けど、勉強をサボってたから内容が入らない。休み時間中、泰斗に欠席分のプリントとノートを見せて貰ったけど、ブランクは大きい。
「咲翔、生徒会やったっけ?」
「うん。謝らんと」
「休んで?」
「うん」
「そこまでせんでもええ気がするけどな〜」
「……それはそれでどうかと思うけど?」
久しぶりだ。やっぱり、今の関係が良い。泰斗とも、葵音とも。変わりたくない。
「すみません。ずっと休んでて」
「そんなに休んでた?」
「先輩、会長が休んでたの知らないんですか?」
生徒会に当選してからそこまで経っていない。会長職に興味がないのには、変わりがない。
けど、この雰囲気だけはキライになれない。
「――じゃあ、お疲れ〜」
溜まってた仕事を終わらせた。疲れるけど、同級生と先輩のお陰で終わった。
「……咲翔」
「葵音……」
葵音の笑顔を最近見れてない。説得したときも、笑顔というより安堵の顔。
夏休みまでは、笑顔で呼んで近づいてきた。けど、今も笑顔じゃない。不安、の顔。
葵音は、それ以上何も言わない。黙って空き教室に入る。作戦会議だ。
別に、約束したわけでも今この場で決めたことでもない。
けど、なんとなく分かった。
「……まず、一城さんのことを調べない?」
「そうやな。まずは、相手を知るところからか」
盲点だった。ただ、条件に対して論理的に反論するだけで良いと思っていた。
…………やっぱり、葵音は頼りになる。
――一城康俊
名門大学、城洛大学第215代学長。第213代学長の長男で、城洛大学進学後、そのまま大学の職員として、働く。大学教授に任命され、城洛大学の研究成果に大きく貢献した。また、学長に就任した後も制度改革などによって、発展に寄与した。
大学のHPには、そう書いてあった。きっと、嘘偽りは無いだろう。けど、学長の息子なのに俺の気持ちは分からないのか…………?
それとも、小さい時から明かされていたか…………。
「一城さんも、学長の子どもだったんだね」
「そうやな…………」
「…………でも、伝統の方が大事なんだね」
きっと、葵音と思っていることは同じだ。
俺と同じ思いをしているはず。けど、伝統を選んだ。
その意味が分からないのだろう。
「なんで、受け入れたんだろうね」
「…………分からん」
その日は、何も決まらなかった。




