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普通の大学教授の祖父だと思ってたのに  作者: 綿ダッコ
第6章〜交渉〜

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第58話 一城康俊

 次の日、ようやく学校に登校できた。

葵音とは、途中から一緒に登校する。

いつも通り…………とまではいかないけど、無いよりよっぽどいい。

…………生徒会の人たちにも、謝らないとな。


「おお、咲翔ずっと休んでどうしたん?」


「……泰斗、早ない?」


「今日はたまたま」


「…………風邪引いてさ」


「そうやったんや」


 授業は、聞けた。けど、勉強をサボってたから内容が入らない。休み時間中、泰斗に欠席分のプリントとノートを見せて貰ったけど、ブランクは大きい。


「咲翔、生徒会やったっけ?」


「うん。謝らんと」


「休んで?」


「うん」


「そこまでせんでもええ気がするけどな〜」


「……それはそれでどうかと思うけど?」


 久しぶりだ。やっぱり、今の関係が良い。泰斗とも、葵音とも。変わりたくない。


「すみません。ずっと休んでて」


「そんなに休んでた?」


「先輩、会長が休んでたの知らないんですか?」


 生徒会に当選してからそこまで経っていない。会長職に興味がないのには、変わりがない。

けど、この雰囲気だけはキライになれない。


「――じゃあ、お疲れ〜」


 溜まってた仕事を終わらせた。疲れるけど、同級生と先輩のお陰で終わった。


「……咲翔」


「葵音……」


 葵音の笑顔を最近見れてない。説得したときも、笑顔というより安堵の顔。

夏休みまでは、笑顔で呼んで近づいてきた。けど、今も笑顔じゃない。不安、の顔。

 葵音は、それ以上何も言わない。黙って空き教室に入る。作戦会議だ。

別に、約束したわけでも今この場で決めたことでもない。

けど、なんとなく分かった。


「……まず、一城さんのことを調べない?」


「そうやな。まずは、相手を知るところからか」


 盲点だった。ただ、条件に対して論理的に反論するだけで良いと思っていた。

…………やっぱり、葵音は頼りになる。


――一城康俊(いちじょう やすとし)


 名門大学、城洛大学第215代学長。第213代学長の長男で、城洛大学進学後、そのまま大学の職員として、働く。大学教授に任命され、城洛大学の研究成果に大きく貢献した。また、学長に就任した後も制度改革などによって、発展に寄与した。


 大学のHPには、そう書いてあった。きっと、嘘偽りは無いだろう。けど、学長の息子なのに俺の気持ちは分からないのか…………?

それとも、小さい時から明かされていたか…………。


「一城さんも、学長の子どもだったんだね」


「そうやな…………」


「…………でも、伝統の方が大事なんだね」


 きっと、葵音と思っていることは同じだ。

俺と同じ思いをしているはず。けど、伝統を選んだ。

その意味が分からないのだろう。


「なんで、受け入れたんだろうね」


「…………分からん」


 その日は、何も決まらなかった。

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