第56話 何かあれば
「葵音、どこで何をしてたの」
「…………」
なんて、誤魔化そう…………。
本当は、言ってしまいたい。けど、咲翔が来るまでは言えない。
「…………まさか、危ないことしてるんじゃないでしょうね!!」
「違う!!けど…………」
「けど、何よ」
咲翔と一緒に居たって言っても、信じてくれないかもしれない。今の時間から、咲翔に迷惑は掛けられない。
「…………言えないことなんでしょ」
そうだけど、違う。お母さんが思っているような言えないことなんじゃない。
「…………明日、言う」
「…………そう」
明日だったら、言える。言わないといけない。
「……お姉ちゃん、おかえり」
「奈緒音…………まだ、寝てなかったの?」
「お姉ちゃんが、帰ってこなかったから…………」
奈緒音、心配してくれてたんだ…………。
「…………ごめんね、奈緒音」
「お姉ちゃん、一緒に寝て」
「…………分かった」
◇ ◇ ◇ ◇
奈緒音、すぐ寝ちゃった。…………そうだよね。
私のことを待ってくれてたんだから。こんな時間まで。
…………寝れない。明日のことを考えたら、しんどい。
言えるって思ってるのに…………。
◇ ◇ ◇ ◇
「お姉ちゃん、咲翔お兄ちゃんが来てるよ」
「うーん…………え、もう!?」
「うん。というかお姉ちゃん、もう11時だよ?」
「うわ、本当だ。…………すぐ、下、行く」
いつの間に寝てたんだろ。…………言わないと、いけない。
「「「…………」」」
空気が重い。咲翔の前だからあんまり出してないけど、お母さんもお父さんも、怖い顔してる…………。
「…………座りなさい」
「…………はい」
誰の顔も見れない。咲翔の顔すら…………。
「何があったのか言いなさい、葵音」
「…………」
喉が、渇く。咲翔と一緒に居たって言いたいのに…………。
「…………咲翔と、一緒に居た」
「…………本当なの、咲翔くん?」
「はい…………実は――」
説明が、聞こえない。多分、私に伝えたときと同じことを言ってるんだと思う。けど、おばさんに話してたときみたいに聞けない。
「…………そう。葵音、咲翔くんのことを励ましに行っていたのね?」
「…………うん。ウソついて、ごめんなさい」
「…………でも、朝からあの時間まで居たのはなんでなのよ。連絡もしないで」
「…………」
「…………それは、俺が悪いです。葵音のことを起こさなかったし、俺の親を説得してもらってたんです」
「咲翔くん、説得って何のこと?」
「…………実は、もう1回説得して、交渉することにしたんです」
「…………お母さん、お父さん。私、咲翔を失いたくない。だから、私も協力することにしたの」
「協力って…………いくら、咲翔くんとはいえ、他人のお家のことなのよ?」
分かってる。分かってるけど、約束した。おばさんにも、第一に咲翔にも。
「分かってる。けど、私にも関わることなの。おばさんの許可も貰ってる。だから…………」
「…………咲翔くんには申し訳ないけど、そもそも、子どもたちで解決出来る問題じゃない」
「…………分かってます。解決出来るか分かりません。けど、それでも葵音を失いたくないんです。葵音の身に何も起こさせません。だから、お願いします!!」
「咲翔くん!?顔を上げて…………!!」
「お願いします!!」
「私からもお願い!!」
「葵音まで…………」
咲翔を失いたくないのは、私も同じ。だから、お願い…………。
「はぁ…………分かったわ。そこまで言うなら、協力しなさい。けど、何かあればすぐに戻ってきなさい」
「…………うん!!」




