第47話 お願いやから
それから、休む日が続いた。1日1食しか食べていない。胃が空っぽの時間の方が長い。
使用人さん達とも、事務的な会話しかしていない。
母さん、父さん、おじいちゃんも部屋の前に来てくれた。
けど、喋れる状態じゃなかった。
「咲翔様、葵音様がお見えです」
…………葵音。
「…………咲翔、大丈夫?めちゃくちゃ、散らかってるけど。ほら、この本も大事にしてたやつじゃん。カーテン、開けるよ」
「…………」
何もする気力が起きない。片付けなんか、しなくていい。
「ねぇ、どうしちゃったの?」
「…………ダメかもしれん」
「え?」
「実はさ――」
土曜日にあったことを話した。話したかったけど、家族には話せなかったこと。
途中、何回も詰まった。全部は話せない。
話すのが怖い。
思い出したくもない。
葵音は静かに聞いてくれていた。表情までは…………覚えてない。
「…………そうだったんだね。でも、もしかしたら――」
「…………いや、無理やと思う」
葵音の言いたいことは言わなくても分かる。「粘り強く交渉したらいけるかもしれない」と言ってくれるのだろう。けど、あんな風に言われたら、葵音のことを切り出すしかない。そんなことは…………できない。
あいつに会いたくもない。
「そんなの分かんないじゃん」
分からない…………それが、怖い。下手なこと言って、失うくらいなら、潔く失いたい。
「…………諦めようかな」
「…………諦める咲翔を見たくない。協力するって言ったじゃん」
「でも…………」
「でもじゃない!!」
…………。
「(…………出てって)」
「え…………?」
本当は、居てほしい。けど、考えたくもない。
葵音でも、一から十までは言えん。だから、それを隠しながら作戦を立てるのは、ムリ。
「お願いやから、出てって欲しい」
「なんで、そんなこと言うの…………」
悲しませたくない。けど、今はそんなこと考えられない。
「…………お願い」
「…………咲翔のバカっ」
…………ごめん、葵音。




